LAV-150装甲車は、キャディラック・ゲージ社が自社資金で開発した4×4型の装輪式装甲車で、原型は1963年に同社が自社資金で開発したV-100装甲車まで遡ることができる。 V-100装甲車は4×4型の装輪式装甲車で、軽攻撃ミッション、兵員輸送、偵察、また警察部隊の警備、暴動鎮圧等に使用できる汎用装甲車として好評を博した。 LAV-150装甲車はその発展型であり、開発計画は1971年10月に公表された。 当初は「V-150」という名称であったが、1981年にはアメリカ陸軍と海兵隊の「LAV」(Light Armoured Vehicle:軽装甲車両)計画に応募するために改良型のV-150Sが開発され、後にエンジンをターボチャージャー付きのものに換装したものは「V-150ST」と名称が変更されている。 さらに、1994年に社名がキャディラック・ゲージ・テクストロン社になったのに合わせて、V-150装甲車シリーズは全て「LAV-150」に名称が変更されている。 LAV-150装甲車は1984年にクウェート陸軍、1988年にはアメリカ陸軍、1992年にはトルコ陸軍から発注を得ており、全部で20カ国に輸出されておりこれまでに3,195両が生産されている。 LAV-150装甲車の特徴は独特の算盤球のような形をした軽くて頑丈な車体構造だが、何より高い信頼性、使い易いことを開発のコンセプトとして構造や部品の単純化を図ったことである。 4輪駆動の装甲車は悪路の踏破力が6輪式に比べて落ちるものの、価格はかなり安くなる。 アメリカ陸軍の主要戦闘車両としては物足らなかったであろうが、中小国の軍隊が必要とする警戒・制圧任務にはちょうど手頃なサイズであった。 見掛けは小振りに見えるが戦闘重量は10.9t、全長6.27mのサイズで、丸みのある車体には3名の乗員の他に9名の兵員を収容する大きなスペースがある。 車体は圧延防弾鋼板の全溶接構造で7.62mm弾、空中炸裂した榴弾の破片、火炎瓶攻撃に耐えることができる。 特に防弾鋼板は、耐弾力のある「キャドロイ」(Cadloy)と呼ばれる積層式の高硬化装甲板が使用されている。 車内レイアウトは車体前部が大きめの視察用ブロックを埋め込んだ乗員室で、左が操縦手席、右が車長席になっている。 その後ろが兵員室で、乗降用の大型サイド・ドアが車体の左右に各1枚ずつ取り付けられている。 機関室は、車体後部の左側である。 パワーパックは当初、カミンズ社製のV504 V型8気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力202hp)と、手動変速機の組み合わせだったが、後にカミンズ社製の6CTA8.3 直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力260hp)と、アリソン社製のMD3560自動変速機(前進5段/後進1段)の組み合わせに変更されている。 サスペンションは、価格の安いリーフ・スプリングとショック・アブソーバーの組み合わせである。 エンジン出力が向上したことと、リーフ・スプリングのカンバーを増やしたことにより、LAV-150装甲車のペイロードは原型となったV-100装甲車のペイロード1,360kgから、2,268kgへと1t近く増加している。 さらに前輪にはキャスターが追加されて、不整地走行時におけるハンドルの操作を容易にしていることもV-100装甲車からの改良点として挙げられる。 また細かい所だが、ジャンプ・シートを折り畳み式として乗降の便が図られたのも改良点の1つである。 機動性能は路上最大速度112km/h、路上航続距離800km(燃料302リットル)と、路上高速性能が際立って優れている。 水上航行は、タイアを回して推進力を得るので5km/hと低速である。 タイアのサイズは14×20、鋼線で補強されたランフラット・タイアを採用している。 もしパンクしたとしても、しばらくの間は80km/hの速度で走行することが可能だという。 LAV-150装甲車の基本型は、スイスのエリコン社製の85口径20mm機関砲204GKと、同軸の7.62mm機関銃M240を備える2名用砲塔を搭載したタイプであるが、7.62mm機関銃M240 2挺を同軸に備える1名用砲塔を搭載したタイプや、ベルギーのコッカリル社製の36口径90mm低圧ライフル砲Mk.3を備える2名用砲塔を搭載したタイプ、限定旋回式のTOW対戦車ミサイル発射機を搭載したタイプなどもある。 これらの武装型の他に兵員輸送車、指揮車、回収車、野戦救急車、貨物輸送車、警察用のセキュリティ車両(放水銃装備)なども用意されている。 またアメリカ陸軍は警備用にLAV-150装甲車の発展型を、「ASV-150」(M1117)として250両以上新規採用している。 |
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<LAV-150装甲車> 全長: 6.274m 全幅: 2.39m 全高: 2.692m 車体重量: 10.909t 乗員: 3名 兵員: 2名 エンジン: カミンズ6CTA8.3 4ストローク直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 260hp/2,500rpm 最大速度: 112km/h(浮航 5km/h) 航続距離: 805km 武装: 85口径20mm機関砲204GK×1 (400発) 7.62mm機関銃M240×2 (3,200発) 装甲厚: |
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<参考文献> ・「パンツァー2013年3月号 半世紀以上使われ続けるベストセラー コマンドー装甲車シリーズ」 柘植優介 著 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2018年6月号 戦後の米軍装輪式戦闘車輌」 後藤仁 著 ガリレオ出版 ・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」 デルタ出版 ・「決定版 世界の最強兵器FILE」 おちあい熊一 著 学研 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー ・「新・世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の軍用4WDカタログ」 三修社 ・「世界の軍用4WD図鑑PART2」 スコラ |
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