L6/40軽戦車
|
|
+概要
L6/40軽戦車は、1930年代半ばにフィアット・アンサルド社で計画された5t軽戦車を原型として開発された軽戦車である。
原型となった5t軽戦車は、CV33快速戦車の発展輸出型として1936年から試作が開始されている。
5t軽戦車の試作車は3両が製作されたが、いずれも武装や装備が異なっていた。
試作第1号車は砲塔を装備しておらず、CV33快速戦車の連装8mm機関銃の代わりに26口径37mm戦車砲を戦闘室前部左側に装備していた。
試作第2号車は、第1号車と同様に戦闘室前部左側に26口径37mm戦車砲を装備すると共に、砲塔に8mmフィアットM35機関銃を連装で装備していた。
試作第3号車は車体には武装を装備せず、砲塔に26口径37mm戦車砲を装備していた。
この5t軽戦車の試作第3号車を基に本格的な軽戦車の開発が開始され、1939年には試作第1号車が完成した。
翌40年には各種の実用試験が開始され、「6/40軽戦車」(Carro Armato Leggero 6/40)として制式化されて583両が発注された。
L6/40軽戦車の構造は車体、砲塔共にリベット接合で、装甲厚は車体が前面30mm、側/後面14.5mm、上/下面6mm、砲塔が前面30mm、側/後面14.5mm、上面6mmとなっていた。
原型の5t軽戦車では、砲塔防盾に主砲として26口径37mm戦車砲が装備されていたが、この砲は旧式で装甲貫徹力が低かったため、イタリア陸軍機甲科はより威力のある砲に換装することを希望した。
新しい主砲が選定されるまでの暫定措置として、L6/40軽戦車の試作車には後の生産型とは異なる少し小型の砲塔が搭載され、武装は砲塔防盾に8mmブレダM38機関銃が連装で装備されていた。
L6/40軽戦車の生産型では砲塔はより大型のものになり、武装も高初速で発射速度の高い65口径20mmブレダM35機関砲に換装されている。
また主砲の左側には、副武装として8mmブレダM38機関銃が1挺同軸装備された。
20mmブレダM35機関砲は対空機関砲を車載用に改造したもので、榴弾および徹甲弾の使用が可能で砲口初速850m/秒、有効射程2,500m、最大射程5,500m、発射速度60発/分と当時の水準を越える性能であった。
砲弾は8発ごとのクリップで装填されるようになっており、携行弾数は296発であった。
L6/40軽戦車は非常に小さな車両であり、乗員は戦闘室内右側の操縦手と、砲塔内の車長兼砲手のわずかに2名であった。
生産型では無線機も装備されていたので、車長は自車の指揮以外に砲手、装填手、無線手の3役をこなさなければならなかった。
砲塔は手動旋回式でバスケットは採用されておらず、車長は2本のチューブで吊るされたシートに座るようになっていた。
戦闘室内右側に操縦手が位置する関係で、砲塔は左側に大きくオフセットして搭載されており、車体後部の機関室にはフィアット社製の18D 直列4気筒液冷ガソリン・エンジン(出力68hp)が搭載されていた。
車体前部には同社製の18TL変速機(前進4段/後進1段)が収められて、起動輪も前部に配されていた。
後部の誘導輪は、履帯の接地長を稼ぐために接地式となっていた。
サスペンションはCV33快速戦車のリーフ・スプリング(板ばね)式サスペンションに代えて、イタリア陸軍の装軌式車両として初めてトーションバー(捩り棒)式サスペンションが採用された。
このトーションバー式サスペンションは非常に特徴的なもので、2組の転輪で構成されたボギーをトーションバーに接続された円弧状の長いアームに連結したものであった。
L6/40軽戦車は1940年に生産発注が行われたものの、AB40装甲車にL6/40軽戦車の砲塔を搭載して火力を強化したAB41装甲車の生産が優先されたため、実際にL6/40軽戦車の生産が開始されたのは1941年になってからで、同年末にようやく部隊配備が開始された。
しかしこの時期になると、主砲の20mm機関砲はドイツ軍のII号戦車と同様に火力不足が指摘され、防御力も貧弱であったために1942年末で生産が中止され、L6/40軽戦車として完成したのは283両に留まった。
残りの発注分300両はL6/40軽戦車の車体を流用し、戦闘室前部左側に32口径47mm戦車砲を搭載した突撃砲セモヴェンテL40 da 47/32に振り向けられた。
またL6/40軽戦車の派生型として、L6Lf(LfはLanciafiamme:火焔放射機の略)火焔放射戦車が試作されたが制式採用は行われなかった。
この車両は、L3Lf火焔放射戦車の後期型の火焔放射システムをL6/40軽戦車の車内に搭載したものであった。
L6/40軽戦車は最大速度は路上で42km/hを発揮することができ、路外での機動性も悪くはなかったので主として偵察を任務とする騎兵師団に配備され、1943年9月のイタリア降伏まで北アフリカ、東部戦線、バルカン半島、イタリア、コルシカ島などで使用された。
イタリア降伏後はドイツ軍が接収しアドリア戦車大隊や警察に配備され、クロアチアへも輸出されている。
また、極少数をユーゴスラヴィアのパルチザンが使用した。
|
<L6/40軽戦車>
全長: 3.78m
全幅: 1.92m
全高: 2.03m
全備重量: 6.8t
乗員: 2名
エンジン: フィアットSPA 18D 4ストローク直列4気筒液冷ガソリン
最大出力: 68hp/2,500rpm
最大速度: 42km/h
航続距離: 200km
武装: 65口径20mmブレダM35機関砲×1 (296発)
8mmブレダM38機関銃×1 (1,560発)
装甲厚: 6〜30mm
|
<L6Lf火焔放射戦車>
全長: 3.78m
全幅: 1.92m
全高: 2.03m
全備重量: 6.8t
乗員: 2名
エンジン: フィアットSPA 18D 4ストローク直列4気筒液冷ガソリン
最大出力: 68hp/2,500rpm
最大速度: 42km/h
航続距離: 200km
武装: 火焔放射機×1 (60リットル)
8mmブレダM38機関銃×1 (1,560発)
装甲厚: 6〜30mm
|
兵器諸元(L6/40軽戦車)
兵器諸元(L6/40 37mm軽戦車)
|
<参考文献>
・「パンツァー2022年11月号 イタリア軍写真集(12) L6/40軽戦車と派生型(1)」 吉川和篤 著 アルゴノート社
・「パンツァー2023年1月号 イタリア軍写真集(13) L6/40軽戦車と派生型(2)」 吉川和篤 著 アルゴノート社
・「パンツァー2002年1月号 第2次大戦のイタリア軍戦車(3) L6系軽戦車」 白石光 著 アルゴノート社
・「パンツァー2002年3月号 第2次大戦のイタリア軍戦車(4) 火炎放射戦車」 白石光 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2020年5月号 イタリア戦車 その誕生と苦難の歩み」 吉川和篤 著 アルゴノート社
・「パンツァー2000年9月号 北アフリカにおけるイタリア軍AFV」 白石光 著 アルゴノート社
・「パンツァー2014年10月号 イタリアのL6/40軽戦車」 城島健二 著 アルゴノート社
・「グランドパワー2000年4月号 イタリア陸軍(1) イタリア軍の軍用車輌」 嶋田魁 著 デルタ出版
・「グランドパワー2000年6月号 イタリア陸軍(3)
イタリア軍の火砲」 稲田美秋 著 デルタ出版
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」 ガリレオ出版
・「第2次大戦 イタリア軍用車輌」 嶋田魁 著 ガリレオ出版
・「世界の戦車
1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「ビジュアルガイド WWII戦車(2)
東部戦線」 川畑英毅 著 コーエー
・「戦車名鑑
1939〜45」 コーエー
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版
|
関連商品 |
タミヤ 1/35 スケール限定シリーズ イタリア軍 L6/40軽戦車 89783 |
ボイジャーモデル 1/35 イタリア軍 L6/40軽戦車 エッチングセット (タミヤ/イタレリ用) PE35214 |
SSMODEL 1/48 イタリア軍 L6/40軽戦車 プラモデル SS48680 |
SSMODEL 1/72 イタリア軍 L6/40軽戦車 プラモデル SS72680 |
SSMODEL 1/76 イタリア軍 L6/40軽戦車 プラモデル SS76680 |
SSMODEL 1/144 イタリア軍 L6/40軽戦車 プラモデル SS144680 |