+概要
L-60軽戦車は、スウェーデンのランツヴェルク社がL-10軽戦車に次いで1934年に開発したもので、1930年代初期における最も優れた軽戦車の1つと評価されている。
L-60軽戦車は前作L-10軽戦車の設計を踏襲し、全体に洗練させ新機軸を盛り込み小型化が図られていた。
車体は圧延防弾鋼板を溶接した箱型のもので、砲塔もやはり圧延防弾鋼板の溶接構造となっていた。
車内レイアウトは車体前部が操縦室、車体中央部が戦闘室、車体後部が機関室となっており、戦闘室の上部に武装を搭載した全周旋回式砲塔を搭載していた。
変速・操向機は車体前部にあり、リア・エンジン/フロント・ドライブ方式であった。
操縦手が車体前部左側に位置するため、車体上部構造は左側が前方に張り出しており、張り出し部の上面には旋回式の操縦手用ハッチが設けられていた。
砲塔はほぼ円筒形で、左右側面に前開き式の四角い乗降用ハッチが設けられており、砲塔上面には車長用キューポラが装備されていた。
L-60軽戦車で最も特徴的なのは、サスペンションに先進的なトーションバー(捩り棒)方式を採用していたことである。
これは諸外国と比べてもかなり早い方で、制式戦車としては初めてのものだと思われる。
転輪は片側4個だったが、最後部の誘導輪も接地型にすることで接地長を稼ぎ接地圧の低減を図っていた。
乗員は車長、砲手、操縦手の3名で、操縦手以外の2名は砲塔内に位置していた。
L-60軽戦車は全長4.66m、全幅2.11m、全高1.85m、戦闘重量6.8tで、装甲厚は5〜13mmとなっていた。
武装はデンマーク製の60口径20mmマドセン機関砲と、7.7mmマドセン機関銃を砲塔防盾に同軸装備していた。
エンジンは、ドイツのビューシンクNAG社製のL8V/36TR V型8気筒液冷ガソリン・エンジン(出力155hp)を搭載しており、路上最大速度48〜50km/hという高速を発揮することができた。
トーションバー式サスペンションの採用と相まって、機動性は申し分なかったようである。
L-60軽戦車は火力、防御力、機動力のバランスの取れた高性能の軽戦車であり、ランツヴェルク社は積極的に海外への売り込みを図った。
その結果L-60軽戦車はハンガリー軍に採用され、「38Mトルディ」の呼称でライセンス生産とさらにハンガリー国内での発展型の開発が行なわれた。
またアイルランドにも数両のL-60軽戦車が輸出されており、ビジネスとしては成功したといえるだろう。
しかし本家本元のスウェーデン軍では、L-60軽戦車はそのままでは採用されなかった。
このためランツヴェルク社ではL-60軽戦車を改良し、L-60A、L-60B、L-60C等の改良型を製作した。
L-60C軽戦車では主砲が20mmマドセン機関砲から、国産のボフォース社製の37mm戦車砲に強化されたのが特徴であった。
スウェーデン軍はランツヴェルク社側とは違い強い武装を望んでいたようで、結局このL-60C軽戦車が1938年に「Strv.m/38」(Stridsvagn
modell 38:38式戦車)として制式化されることになる。
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