Kfz.13装甲偵察車
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+開発
第1次世界大戦後のドイツでは自衛のための装甲車両が幾つか製作されたが、1933年のナチス政権発足後最初に採用された装輪式装甲車がこのKfz.13装甲偵察車である。
本車は1929年から開発が進められたが、1932年からアドラー社製のスタンダード6シリーズ12N-RW型(4×2)乗用車のシャシーをそのまま流用する形で、ダイムラー・ベンツ社により量産が開始された。
Kfz.13装甲偵察車の生産は1934年まで続けられ、合計147両が完成している。
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+車体
Kfz.13装甲偵察車の装甲ボディは8mm厚の表面硬化型圧延装甲板の溶接構造で(機関銃防盾も同じ)、上部はオープントップ式であった。
ボンネットの前方はラジエイター用吸気口のため、細長い装甲板を横にしてスリット状に組み合わせる工夫をしていたが、上面と側面には装甲板が用いられていなかった。
また、フェンダーも乗用車型のままであった。
ちなみに、床板には5mm厚の装甲板が使用されていた。
操縦手席前方には、装甲車には欠かせないスリット付きの装甲ヴィジョン・ヴァイザーが設けられていた。
また、ヴィジョン・ヴァイザーは車体後面の中央にも取り付けられていた。
一部の写真では車体側面にも3個のヴァイザーがある車両が確認でき、その場合は合計8個ものヴィジョン・ヴァイザーがあったことになる。
しかし、これは企画用に写真を修正したものもしくは車体に描かれたものと思われ、実際には製作されていないようである。
車体の左右側面にはそれぞれドアが設けられており、乗降はそこから行われた。
ドアの直前には、起倒式の方向指示器が取り付けられていた。
フロントライトは乗用車型と同じ、ボッシュ社製の丸型のもの(RJVC90/6-1100)が2個取り付けられていたが、後にノテックライトをフェンダー上に追加装備した車両もあった。
車体後面には予備タイヤが取り付けられており、さらにその後ろの下には雑具箱が装備されていた。
また、雑具箱の右側にはスコップが標準装備されていた。
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+駆動および走行装置
Kfz.13装甲偵察車のエンジンはアドラー社製の6S型液冷ガソリン・エンジンが搭載されたが、ほんの少数だけBMW社(ホルヒ社説もある)製エンジンを搭載した車両もあった。
アドラー社製エンジンは直列6気筒で出力60hp/3,200rpm、排気量は2,916ccであった。
変速機のギアは前進4段/後進1段で、クラッチは乾式1枚型となっていた。
駆動されるのは後輪のみで、車体の操向は操縦手席の前方に備えられた円形ハンドルを操作して、前輪のみで行うようになっていた。
サスペンションは円弧状のリーフ・スプリング(板ばね)が用いられており、4つのタイヤにそれぞれ取り付けられていた。
タイヤは空気チューブ式で、サイズは6.50×18または7.00×20が装備された。
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+車内装備
Kfz.13装甲偵察車の主武装は車内中央の銃座に設置された7.92mm機関銃で、当初はラインメタル・ボルジヒ社製のMG13が使用されていたが、後にマウザー製作所製のMG34に変更されており、現存する写真はMG34に換装した車両のものばかりである。
機関銃座は円錐形の台座が床に固定されており、これにサドルと機関銃を装着する回転ロッドが上部に取り付けられていた。
機関銃座にはMG用の弾薬箱と、空薬莢とベルトリンクを受けるためのバッグが装備されており、その他にMG用のメインテナンスキットを収納した革製バッグが取り付けられていた。
車内装備としてこの他に、ERMA社(Erfurter Maschinenfabrik:エアフルト機械製作所)製の9mm機関短銃EMP35を搭載していたが、これも後に同社製のMP38に変更されたようである。
固有の乗員は操縦手と機関銃手兼車長の2名のみだったが、必要に応じて後部に2〜3名の兵員を収容することもできた。
ドイツは右側通行なので、操縦手席は左側にあった。
操縦手席の前方には円形ハンドルが備えられており、ダッシュボードの計器盤はほぼ中央に位置していた。
その右側には補助燃料タンクがあり、さらに右側には小さな食器棚があった。
食器棚左側(補助燃料タンクの手前)の床には、補助食料として2個の缶詰が置かれていた。
そして、後方には救急箱が装備されていた。
車内右側面にはMG用の予備銃身が装備されており、MPもここに装備されていた。
その他、ガスマスクや信号板も装備されていた。
ガスマスクに関しては、操縦手席後ろの雑具箱にも収納されていた。
操縦手席の右側の床には、MP用の弾薬箱と4本の発煙弾があった。
車内の中央やや後方に機関銃座があり、そのさらに後ろに4つのMG用弾薬箱があった(MG用の7.92mm弾薬は合計2,000発が携行されていた)。
また、弾薬箱の左側には12発入り信号弾ボックスが装備されていた。
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+性能データ
Kfz.13装甲偵察車のサイズは全長4.20m、全幅1.70m、全高1.46mとなっていた。
戦闘重量は2.2tで、これは積載時の乗用車型とほとんど変わっていない。
路上最大速度は60km/hで携行燃料は70リットル、航続距離は路上で320km、不整地で230kmとなっていた。
銃座に設置された7.92mm機関銃は360度旋回可能で、俯仰角は−35〜+65度となっていた。
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<Kfz.13装甲偵察車>
全長: 4.20m
全幅: 1.70m
全高: 1.46m
全備重量: 2.2t
乗員: 2名
エンジン: アドラー6S 4ストローク直列6気筒液冷ガソリン
最大出力: 60hp/3,200rpm
最大速度: 60km/h
航続距離: 320km
武装: 7.92mm機関銃MG13またはMG34×1 (2,000発)
装甲厚: 5〜8mm
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<参考文献>
・「パンツァー2013年6月号 民間車ベースの装甲車 Kfz.13シリーズ」 久米幸雄 著 アルゴノート社
・「パンツァー2012年12月号 ドイツAFVアルバム(372)」 久米幸雄 著 アルゴノート社
・「ピクトリアル ドイツ装輪装甲車」 アルゴノート社
・「グランドパワー2011年10月号 ドイツ4輪装甲車」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー1999年8月号 ドイツ4輪装甲車」 佐藤光一 著 デルタ出版
・「世界の軍用車輌(4)
装輪式装甲車輌:1904〜2000」 デルタ出版
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