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軽装甲機動車





軽装甲機動車(略称:LAV(Light Armoured Vehicle))は、陸上自衛隊初の4×4型装輪式装甲車である。
本車の開発はこれまで82式指揮通信車、87式偵察警戒車、96式装輪装甲車など陸上自衛隊の装輪式装甲車の開発を一手に担ってきた小松製作所が担当している。
本車の開発計画は1994年から始まり、「小型装甲車」の名称で1997年12月〜98年12月にかけて第1次試作車4両が製作され、1999〜2000年にかけて各種性能試験が実施された。

1999年中には第2次試作車3両も追加製作され、合計7両の試作車を用いて2000年下旬に陸上自衛隊による運用試験が実施された。
試験の結果、小型装甲車は陸上自衛隊の装備として充分な性能を備えているとして2000年11月に部隊使用承認を受け、「軽装甲機動車」の新名称が与えられた。

本車は名称に「○○式」と付いておらず制式化は行われていないが、これは制式化を行うと仕様が固定されてしまうためであえて制式化せず、民生用の部品を多く導入することで大量調達と年次改良を可能にしている。
軽装甲機動車はまず陸上自衛隊が2001年度に102両、2002年度に149両の調達を決定し、2002年度から部隊配備が開始されている。
また航空自衛隊も、基地警備用に2003年度から軽装甲機動車の調達を開始している。

2013年度までに陸上自衛隊が1,673両、航空自衛隊が118両の合計1,791両の軽装甲機動車を調達している。
陸上自衛隊では軽装甲機動車を普通科の各分隊に2両ずつ配備し、相互支援を行う運用法を想定している。
これは敵がゲリラコマンドによる浸透戦術を使ってくるような場合、従来のように分隊全員(7〜8名)が1両の車両に乗車して行動するよりも、3〜4名ずつ分散して乗車した方が敵の動きに柔軟に対応することができるという考え方に基づく。

軽装甲機動車の車体は通常の装甲車と同じく圧延鋼板の溶接構造であるが、装甲材質については通常の装甲車に多く用いられる防弾鋼板ではなく、よりコストの安い民生用の高張力鋼板(といってもかなり高グレードで強度の高いもの)が用いられている。
車体寸法は、陸上自衛隊が保有するCH-47大型輸送ヘリに2両搭載できるようコンパクトに設計されている。
また本車は、パラシュートによる空中投下も可能である。

軽装甲機動車は外観やサイズがフランス陸軍のVBL装甲車とよく似ており、しばしば比較対象として挙げられるが、両者は開発の経緯やコンセプトが異なっており模倣したという指摘は間違いである。
両者のサイズを比較すると軽装甲機動車が全長4.40m、全幅2.04m、全高1.85m、戦闘重量4.5t、VBL装甲車が全長3.70m、全幅2.02m、全高1.70m、戦闘重量3.55tとなっており、軽装甲機動車の方が重量もサイズもやや大きい。

軽装甲機動車の装甲防御力は車体前面が12.7mm重機関銃弾の直撃に耐えられる程度、車体側面は7.62mmライフル弾の直撃に耐えられる程度とされている。
車体重量が4.5tということから考えると軽装甲機動車の装甲厚は前面が8〜12mm程度、側面が6〜10mm程度と推測される。
ちなみにVBL装甲車の装甲厚は5〜11.5mmで、装甲防御力は軽装甲機動車と同程度といわれる。

軽装甲機動車には車体の左右側面に各2枚ずつと車体後面に乗降用のドアが設けられており、それぞれのドアには防弾ガラス製の窓が備えられている。
車体側面ドアの窓については、上方に開いて外部の視察や射撃を行えるようになっている。
また乗員室上面には左右開き式の大きな円形ハッチが設けられており、ここから外部を視察したり、前方に備えられている折り畳み式の防盾付き機関銃マウントに武装を装着して射撃を行うことができる。

乗員室前面のウィンドウは台形のやや小型のものが2つ設けられているが、これは視界がやや狭くなる代わりに乗員室の構造強度を高めており、VBL装甲車の前面ウィンドウも同様のデザインになっている。
軽装甲機動車のエンジンはいすゞ自動車製の直列4気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル(排気量4,800cc、出力160hp)で、トルク・コンヴァーター付きの自動変速機(前進4段/後進1段)が副変速機(ハイ/ロー2段)付きで組み合わされている。

このパワーパックにより本車は路上最大速度100km/h、路上航続距離500kmの機動性能を発揮する。
足周りは4WD(4輪駆動)で前輪がダブルウィッシュボーン、後輪がセミトレーリングアームの4輪独立懸架となっているが、高機動車のような4WS(4輪操舵)ではないため、よりサイズの大きい高機動車の最小回転半径が5.6mなのに対し、軽装甲機動車の最小回転半径は約6.5mとやや大きくなっている。
タイアは、ブリヂストン製のランフラット・タイアを履いている。

本車は現用AFVで必須となっているNBC防護システムを装備している他、陸上自衛隊のAFVとして初めてエアコンを標準装備した車両でもある。
また2005年度以降に導入された軽装甲機動車では、細部に改良が施されている。
乗員室側面と後面の窓は防弾性が向上しており、車体後面にはスペアタイアと燃料携行缶用ラックの取り付け具や牽引フックが新設されている。

軽装甲機動車は用途に応じて細部の装備が異なっており、陸上自衛隊の車両には以下の5種類のヴァリエーションが存在する。

☆中隊長車
通信機能を強化するため、車内に大型無線機を搭載している。
アンテナ・マストも大型のものが用いられ、右側アンテナの取り付け位置が運転席ドアの上方に移動している。
車両によっては、車体の左右側面後部に4連装の発煙弾発射機を装備している。

☆小隊長車
車体の左右側面後部に、それぞれ4連装の発煙弾発射機を装備している。
車両によっては、右側アンテナの取り付け位置が運転席ドアの上方に移動している。

☆機関銃搭載型
乗員室上面の円形ハッチの前方に、防盾付き機関銃架を介して5.56mm軽機関銃MINIMIを装備している。

☆対戦車ミサイル搭載型
乗員室上面の円形ハッチから01式軽対戦車誘導弾(略称:軽MAT)の射撃を行うため、射界の妨げにならないよう乗員室上面に装備品を取り付けていない。

☆偵察型
機関銃搭載型と同じく5.56mm軽機関銃MINIMIを装備し、乗員室上面後部に大型ラックを設けている。
また中隊長車と同じく車内に大型無線機を搭載し、右側アンテナ取り付け位置も運転席ドア上方に移動している。


<軽装甲機動車>

全長:    4.40m
全幅:    2.04m
全高:    1.85m
全備重量: 4.5t
乗員:    4名
エンジン:  いすゞ 4ストローク直列4気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 160hp
最大速度: 100km/h
航続距離: 500km
武装:    5.56mm軽機関銃MINIMI×1
装甲厚:


<参考文献>

・「パンツァー2003年5月号 新ドクトリンが生んだ陸上自衛隊の軽装甲機動車」 三鷹聡 著  アルゴノート社
・「パンツァー2010年7月号 陸上自衛隊 軽装甲機動車」 柘植優介 著  アルゴノート社
・「陸上自衛隊の車輌と装備 2012〜2013」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021〜2022」  アルゴノート社
・「陸上自衛隊「装備」のすべて 知られざる戦闘力の秘密に迫る」 毒島刀也 著  SBクリエイティブ
・「グランドパワー2004年7月号 陸上自衛隊 軽装甲機動車」 伊吹竜太郎 著  ガリレオ出版
・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」  ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」  デルタ出版
・「完全版!自衛隊・新世代兵器 PERFECT BOOK」  宝島社
・「最新陸上兵器図鑑 21世紀兵器体系」  学研
・「最新 自衛隊パーフェクトガイド」  学研
・「世界の最新装輪装甲車カタログ」  三修社
・「世界の軍用4WDカタログ」  三修社
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「戦車パーフェクトBOOK」  コスミック出版

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