「Ikv.91」(Infanterikanonvagn 91)は、国土の大半が森と湖というスウェーデンの国情に合わせて開発された水陸両用性を持つ軽戦車である。 主として偵察に用いられるが主武装として90mm戦車砲を装備しており、対戦車戦闘にも使用可能である。 水上浮航性の確保のために装甲は薄く、防御力はAPC(装甲兵員輸送車)並みでしかない。 本車の開発と生産はヘグルンド社(現BAEシステムズ・ヘグルンド社)が担当し、1969年に最初の試作車が完成し1974年には最初の先行生産型が完成している。 量産開始は1975年で、1978年までに210両がスウェーデン陸軍向けに生産された。 Ikv.91水陸両用軽戦車の車体は圧延防弾鋼板の溶接構造で操縦手席は前部左側となっており、車体前部には水上浮航用の波切り板が備えられている。 砲塔もやはり圧延防弾鋼板の溶接構造で砲塔内には右側前方に砲手、その後方に車長、左側に装填手が位置する。 主武装はボフォース社(現BAEシステムズ・ボフォース社)製の54口径90mm低圧ライフル砲KV90S73を装備しており、徹甲弾は用意されておらずHEAT(対戦車榴弾)を主用する。 90mm砲弾の搭載数は、59発となっている。 副武装は、主砲左側に同軸機関銃としてベルギーのFN社製の7.62mm機関銃Ksp.58(FN-MAG)を装備している他、装填手用ハッチにも対空用として7.62mm機関銃Ksp.58を装備している。 7.62mm機関銃弾の搭載数は同軸、対空合わせて4,250発となっている。 照準装置は車長用に倍率10倍の潜望式サイトが、砲手用にレーザー測遠機を内蔵した倍率10倍の潜望式サイトが装備されている他、AGA社製の弾道コンピューターも搭載されている。 なお車長用キューポラは、砲塔と独立して240度の旋回が可能となっている。 砲塔の旋回と主砲の俯仰は油圧式動力機構が採用されており、主砲の安定化装置は装備されていない。 エンジンは、ヴォルヴォ・ペンタ社製のTD120A 直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力330hp)が搭載されている。 変速機はアメリカのアリソン社製のHT740Dトルク変換機付き自動変速機(前進4段/後進1段)、操向機はヘグルンド社製のクラッチ・ブレーキ式のものが搭載されており、これはヘグルンド社がスウェーデン陸軍向けに開発したPbv.302 APCに搭載されているものと共通化されている。 足周りもPbv.302 APCと共通のものが使われており、サスペンションはトーションバー(捩り棒)方式が採用されている。 水上浮航時には車体前部の波切り板を立て、操縦手用ハッチと機関室上面にダクトが取り付けられる。 水上での推進力は履帯を駆動させることによって得ており、サイドスカートが推進力の向上に役立っている。 NBC防護装置は装備しているが、暗視装置は未装備である。 なお本車の主砲を105mm低反動ライフル砲に換装したモデルも試作されており、海外に対して売り込みが図られたが採用する国は現れていない。 |
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<Ikv.91水陸両用軽戦車> 全長: 8.84m 車体長: 6.41m 全幅: 3.00m 全高: 2.32m 全備重量: 16.3t 乗員: 4名 エンジン: ヴォルヴォ・ペンタTD120A 4ストローク直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 330hp/2,200rpm 最大速度: 65km/h(浮航 6.5km/h) 航続距離: 500km 武装: 54口径90mm低圧ライフル砲KV90S73×1 (59発) 7.62mm機関銃Ksp.58×2 (4,250発) 装甲厚: |
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<参考文献> ・「パンツァー2003年6月号 スウェーデンのユニークな歩兵支援用対戦車車輌 Ikv.91駆逐戦車」 和田尚夫 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2018年8月号 スウェーデンの異形軽戦車 Ikv.91」 前河原雄太 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年8月号 第二次大戦後の軽戦車の展望」 大竹勝美 著 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2018〜2019」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2019年12月号 スウェーデン戦車発達史(戦後編)」 斎木伸生 著 ガリレオ出版 ・「世界の戦車(2) 第2次世界大戦後〜現代編」 デルタ出版 ・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版 ・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」 洋泉社 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー ・「世界の戦車・装甲車」 竹内昭 著 学研 |
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