Mk.IV戦車は、Mk.Ｉ戦車の小改良型であるMk.ＩＩ／Mk.III戦車に引き続いてイギリス陸軍が開発した戦車で、設計は1916年10月に開始され1917年3月には生産が開始された。
この戦車はメッシーヌ戦、第3次イープル会戦、第1次カンブレー会戦に投入され、その後1918年には徐々に後継のMk.Ｖ戦車へと切り替えられていった。

外観はそれまでの菱形戦車とほぼ同じであったものの、その中身は実戦から得られた戦訓が盛り込まれた改良型戦車であった。
車体左右側面のスポンソン（張り出し砲座）は、貨車で輸送する際には車内にしまい込むようになっており、雄型のスポンソンは小型化され、その底面は荒れた路面での抵抗を減らすように改良された。
また、雌型のスポンソンも同様の変更が行われた。

さらに雄型の6ポンド（57mm）戦車砲は、砲身を内側に旋回させられるように23口径長に短砲身化され、雄型・雌型共に副武装がそれまでのオチキスM1909軽機関銃（口径7.7mm）から、歩兵が使用していたルイス軽機関銃（口径7.7mm）に換えられた（なお、この機関銃は後にオチキスM1914重機関銃に再び変更された）。
Mk.IV戦車の装甲板には、ドイツ軍が使用するタングステン弾芯のSmK徹甲小銃弾を弾き返す特別な鋼鉄が使用され、装甲厚も車体前面16mm、側面12mmに強化された。

それまで車内に配置されていた燃料タンクは、安全のために車体後部外側に移動され装甲板で囲われた。
そして荒れた路面での駆動力を得るために、鋼鉄製のスパッドが履帯シューの3枚または5枚ごと、あるいは9枚ごとにボルト止めされた。
車体上面に導かれた排気管にはマフラーが装着され、車内には乗員用に新しい冷却装置と換気装置が装備され、脱出口も改善された。

また後期型では、エンジンが出力125hpのものに強化されている。
Mk.IV戦車は雄型と雌型が2：3の割合で生産され、合計で1,015両が完成した。
本車は1917年11月のイギリス軍のカンブレー攻勢に主力として参加し、大勝利の原動力となった。
Mk.IV戦車の派生型としては、超壕能力を向上させるために車体後部に「タッドポウル・テイル」（Tadpole Tail：オタマジャクシの尾）と呼ばれる軟鋼製の延長部を設けた車両が試作されている。

延長部の長さは2.74mで車体後部に帯金とリベットを用いて接合されており、左右の延長部の間には対角線状に支柱が取り付けられていた。
また車体の延長に伴って、履帯の履板数は片側28枚増加していた。
この車両は、延長部の支柱の上に6インチ（152.4mm）迫撃砲を搭載して、前方に向けて射撃する試験も行われたが、延長部の強度に問題があったため結局試作のみに終わっている。