FV721フォックス装甲偵察車 |
|||||
---|---|---|---|---|---|
+開発と生産
イギリス戦争省は1960年に、1956年からコヴェントリーのアルヴィス社で量産が開始された6×6型の、FV601「サラディン」(Saladin:サラセンの王で十字軍をさんざん悩ませたことで知られる)戦闘偵察車の後継となる車両についての要求仕様をまとめたが、その内容は偵察を主任務とするが単に偵察に留まらず、ある程度の歩兵支援能力を備え、対戦車戦闘能力も持たせるという一種の多目的戦闘車両とされた。 これに対して、ロンドン西方のサリー州チョバムに置かれた「FVRDE」(Fighting Vehicles Research and Development Establishment:戦闘車両研究開発局)は、「AVR」(Armored Vehicle Reconnaissance:偵察用装甲車両)というプランを提示した。 これは、半埋没式の砲塔に75mm戦車砲を装備する重量13.5tの装軌式の車両であり、砲塔の旋回範囲は左右各90度ずつで、操縦手を含む3名の乗員全員が砲塔内に位置することになっていた。 エンジンについては、当時開発が進められていたFV433「アボット」(Abbot:大司教)105mm自走榴弾砲への採用が検討されていた2種類のエンジンのいずれか、(ダービーのロールズ・ロイス社製のK60 直列6気筒液冷ディーゼル・エンジン(240hp/3,750hp)か、同社製のB81 直列8気筒液冷ガソリン・エンジン(185hp/3,750rpm))を採用する予定であった。 また当時の流行に従って車体後部左右に、ヒートンチャペルのフェアリー航空機産業と、ウェストミンスターの英国航空機(現BAEシステムズ社)が共同開発した「スウィングファイア」(Swingfire:曲がる炎)対戦車ミサイルの起倒式5連装発射機を、前方へ向けて装備することになっていた。 さらに、本車に105mm榴弾砲を装備して砲兵部隊に配備することも検討されたらしい。 1961年、戦争省はAVRと同様の任務に用いる装輪式車両の開発も計画するが、FVRDEはこれに対してやはりAVRと同様、75mm戦車砲とスウィングファイア対戦車ミサイルを装備する重量13.6tの車両のプランを提示した。 戦争省はこれらの両プランを比較検討したが、装軌式、装輪式、それぞれに特有の長所と短所があることから、単純な比較はできないとしてサラディン戦闘偵察車の後継車両の開発計画そのものを、一旦白紙とすることを決定した。 1964年春、戦争省は改めて軽量装甲車両の開発計画「CVR」(Combat Vehicle Reconnaissance:戦闘偵察車両)を立案するが、大変興味深いことにCVR計画では、装軌式と装輪式の2つの仕様の車両を並行して開発することとされていた。 そして開発・生産・運用に掛かるコストの低減のため、CVRシリーズの車両は全て共通のエンジンを搭載することになっていた。 さらに重量を始めとする車両規模についても、当時のイギリス軍の最新鋭輸送機であるAW.660「アーゴシー」(Argosy:大型船)中型輸送機や、開発中であったHS.780「アンドーヴァー」(Andover:イングランド南部の町名)中型輸送機の積載規格に適合させることとなった。 これら2つのプランは装軌式が「CVR(T)」、装輪式が「CVR(W)」(”T”はTracked:装軌式、”W”はWheeled:装輪式の頭文字)と呼称され、全幅を可能な限り抑制し、重量は基本的に6.5~7.7t程度とすること。 高い機動力と全周からの軽火器の攻撃に対する抗堪性、および24時間の連続戦闘に乗員が耐えられるだけの居住性の確保。 そして空中からのパラシュートによる投下を考慮し、さらに車体の延長などにより、対戦車戦闘から兵員輸送までの任務に対応できる発展型を製作できることとされた。 このうち装輪式のCVR(W)は、後にFV721「フォックス」(Fox:キツネ)装甲偵察車として制式化されることになるが、この時「可能な限りの全幅の抑制」に関しては、「2.1m程度」という数値が挙げられていた。 これは、東南アジア地域のゴム農園内での本車の運用を想定した結果であり、イギリスは当時、相次ぐ植民地の喪失に悩んでいたのだが、それでもそうした地域への武力介入の意志を放棄せず、このような車両の製作を計画していたのである。 CVR(W)は1965年に、4×4型の装輪式装甲車の開発経験が豊富なコヴェントリーのダイムラー社が開発を担当することが決まり、試作車16両の製作が発注された。 なお前述のようにCVR(T)/CVR(W)は当初、アボット自走榴弾砲と同じロールズ・ロイス社製のエンジンを搭載する予定であったが、後にコヴェントリーのジャギュア自動車製の、J60 No.1 Mk.100B 直列6気筒液冷ガソリン・エンジン(190hp/4,750rpm)に変更された。 CVR(W)の試作車は1967年11月~69年4月にかけて、イギリス国防省(1964年に戦争省から改組)に納入され、陸軍による評価試験に供された。 そして試験で満足すべき性能を発揮したため、国防省は本車のイギリス陸軍への採用を決定し、1969年10月に「FV721」(Fighting Vehicle 721:戦闘車両721型)の戦闘車両番号と、「フォックスMk.1」の型式呼称が与えられた。 フォックス装甲偵察車の量産は王立造兵廠のリーズ工場が担当することになり、1973年5月には生産型第1号車が工場からロールアウトした。 フォックス装甲偵察車はイギリス陸軍向けに180両が生産された他、マラウイとナイジェリアに合計145両が輸出されており、総生産数は325両となる。 CVR(W)シリーズでイギリス陸軍に採用されたのは本車のみで、残念ながら成功作とはならなかった。 一方CVR(T)シリーズは、基本型であるFV101「スコーピオン」(Scorpion:サソリ)偵察軽戦車に加えて、FV102「ストライカー」(Striker)自走対戦車ミサイル、FV103「スパータン」(Spartan:スパルタ人)装甲兵員輸送車、FV104「サマリタン」(Samaritan:サマリア人)装甲救急車、FV105「スルタン」(Sultan:イスラム教国の君主号の1つ)装甲指揮車、FV106「サムソン」(Samson:旧約聖書に登場する大力の勇士)装甲回収車、FV107「シミター」(Scimitar:三日月刀)装甲偵察車など多数の派生車両が開発され、イギリス陸軍における採用数は3,000両を超えている。 イギリス陸軍のフォックス装甲偵察車は主に、旧西ドイツ駐留の「BAOR」(British Army of the Rhine:イギリス陸軍ライン軍団)の後方地域編制である第2師団の旅団偵察連隊である、王立義勇騎兵団と女王義勇騎兵団に配備されて運用された。 しかし本車は装輪式車両であるため、同じ武装を装備する装軌式のシミター装甲偵察車に比べて不整地での走破性が劣っていた。 また、コンパクトなサイズの4×4型装甲車でありながら、車体に不釣り合いな大型の2名用砲塔を搭載したため重心位置が高く、コーナリング性が悪いことが問題視された。 結局これらの理由により、イギリス陸軍のフォックス装甲偵察車は1993年4月までに全車が退役した。 一方、マラウイとナイジェリアに輸出された車両は現在も運用が続けられている模様である。 |
|||||
+攻撃力
フォックス装甲偵察車の砲塔は、CVR(T)シリーズのシミター装甲偵察車のものとよく似た2名用砲塔が搭載されており、砲塔前面に主武装の81.3口径30mmラーデン砲L21A1と、副武装の7.62mm機関銃L37A2を同軸に装備していた。 30mmラーデン砲L21A1は、イギリス陸軍の軽量戦闘車両の主武装として1960年代に開発された低反動の30mm速射砲で、1966年に設計が完了し1970年初頭から量産が開始された。 因みに「ラーデン」(RARDEN)の名前は、開発に関わったハルステッドの「RARDE」(Royal Armament Research and Development Establishment:王立兵器研究開発局)の頭字語と、生産を担当した王立小火器工廠の所在地である「エンフィールド」(Enfield)のそれを組み合わせたものだという。 砲の諸元は全長3.15m、砲身長2.438m、全体重量110kg、砲身重量24.5kg、最大射程4,000m、有効射程1,000mとされている。 ラーデン砲は反動利用式の自動砲だが、装填は3発ずつのクリップで行うようになっている。 連射は3発クリップ2つ分の6発バーストまで、最大発射速度は90発/分に過ぎない。 フォックス装甲偵察車の場合、30mm砲弾の搭載数は99発となっていた。 軟目標用弾薬としてL13A1 HEI(焼夷榴弾)が用意されているが、炸薬量はトーペックス2がわずかに25.6gである。 従って敵歩兵に対する持続的な制圧射撃は難しく、それについては専ら同軸機関銃を頼ることになる。 これ以外の弾薬ではL5A2 APSE(徹甲榴弾)、L12A1 TP(訓練弾)が用意されている。 その後L14A2 APDS(装弾筒付徹甲弾)が開発され、L5A2 APSEに代わり配備されている。 このL14A2 APDSは発射重量822g、弾頭重量300g、砲口初速1,175m/秒、1,500m以上の距離から45度の入射角で40mmの装甲貫徹力がある。 旧ソ連軍のBMP-2歩兵戦闘車の装備する80.5口径30mm機関砲2A42は、砲口初速1,000m/秒、装甲貫徹力は射距離1,500mで25mmといわれており、ラーデン砲の高い装甲貫徹力が分かる。 一方、副武装の7.62mm機関銃L37A2は、ベルギーのFN社製の7.62mm機関銃FN-MAGを王立小火器工廠でライセンス生産した7.62mm機関銃L7シリーズの派生型で、同軸機関銃としてだけでなく、マウントから取り外して乗員が射撃を行うことも可能となっている。 また砲塔前面の左右両側には、4連装の66mm発煙弾発射機を各1基ずつ装備しており、不意に敵の戦闘車両と遭遇した場合などに発煙弾を発射して、自車の周囲に煙幕を展張することが可能である。 砲塔の内部レイアウトは、前部中央に30mmラーデン砲の機関部、それを挟んで砲塔バスケット内右に砲手用視察装置および砲手席、同左に車長用視察装置および車長席、そして後部バスル内にクランスマン無線機が置かれていた。 また乗員相互の連絡のため、車内通話装置が内壁に取り付けられていた。 なお車長は車両の指揮と外部視察を行うだけでなく、30mmラーデン砲の装填手も兼任しなければならない。 またCVR(T)/CVR(W)シリーズの車両は全て、調達価格を抑えるために砲塔の動力機構を搭載しておらず、砲手が旋回ハンドルを操作して手動で砲塔を旋回しなければならなかった。 しかし、これはあまりにも不便で肝心の攻撃能力に悪影響が出たため、1980年代初めにチェルムズフォードのマルコーニ社製の動力機構が導入された。 フォックス装甲偵察車の外部視察装置は、まず車長用として、マルコーニ社製の等倍と10倍の切り替え機能付きで、上下に-14~+41度の視察範囲を持ち、85度の限定旋回式の双眼式昼間用照準機AV No.75が1組と、7個のペリスコープが装備されていた。 砲手用にも、やはり等倍と10倍の倍率を持つ昼間用照準機AV No.52が装備されていたが、砲手にはこの他に夜間用として1.6倍で28度の視野角、5.8倍で8度の視野角を持つコヴェントリーのGEC社(General Electric Company:総合電機会社)製の、パッシブ式暗視機構付き照準機II L2A1が装備されていた。 この夜間照準機は広い視野角で視察している場合、シャッターで視野を区切ることで目標を発見し易くする機能を持っていた。 また、このシャッターは30mmラーデン砲の発射機構と連動して、発砲炎で暗視装置やモニター画面が焼き付くのを防ぐ役目を果たした。 また5.8倍の倍率を選択した時には、昼間用の照準機と連動する機能を備えていた。 暗視装置を使用しない時は、装甲カバーによって保護されるようになっていた。 これらの照準機の対物鏡部には、泥汚れなどを落とすウォッシャーとワイパーが装着されていた。 |
|||||
+防御力
フォックス装甲偵察車の車内レイアウトは車体前部が操縦室、車体中央部が全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室、車体後部が機関室となっており、イギリス装甲車の伝統に添ったレイアウトが採用されていた。 本車は、同じくダイムラー社が開発した前作のフェレット装甲偵察車と同様、車体・砲塔共に圧延装甲板の全溶接構造となっていたが、軽量化を図るために装甲材質がフェレットの防弾鋼板から、防弾アルミ板に変更されていた。 フォックス装甲偵察車に用いられた防弾アルミ板は、アメリカのM113装甲兵員輸送車シリーズなどに用いられている7039防弾アルミ板に、特殊な熱処理を施して剛性を強化したE74S防弾アルミ板である。 その組成の詳細は不明な点があるが、アルミニウムを主体とする亜鉛とマグネシウムの合金であり、現在「超々ジュラルミン」と呼ばれるものとほぼ同じと考えて良い。 防弾能力を同一とする場合、一般的にアルミ板は鋼板の2.8倍の厚さを必要とする。 これは、フォックス装甲偵察車のような小型車両では内部容積にあまり良い影響を及ぼさないが、断面積が大きい分、接合部の強度の確保が容易になるという利点がある。 本車の防弾能力は前面が旧ソ連製の14.5mm重機関銃弾の、他の面は7.62mm機関銃弾の直射に耐える。 試験では1.5mの至近距離に着弾した105mm榴弾の炸裂に耐え、また地雷の爆発では、走行装置は激しく損傷したものの、車内には全く被害が及ばなかった。 フォックス装甲偵察車の砲塔形状は、正面および真横から見ると6角形、真上から見ると8角形となっていたが、これは装甲板を積極的に傾斜させることで耐弾性を高めようとした結果である。 本車と同じく、30mmラーデン砲L21A1と7.62mm機関銃L37A2を同軸に装備する、シミター装甲偵察車の砲塔と形状が良く似ていたが、装甲厚は本車の砲塔の方がやや薄いといわれる。 一方フォックス装甲偵察車の車体形状は、基本的に前作のフェレット装甲偵察車の設計を踏襲しており、装軌式のCVR(T)シリーズとはかなり異なっていた。 |
|||||
+機動力
フォックス装甲偵察車のエンジンは前述のように、ジャギュア自動車製のJ60 No.1 Mk.100B 直列6気筒液冷ガソリン・エンジンを搭載していた。 このエンジンの原型となったXK 直列6気筒液冷ガソリン・エンジン(総排気量4.2リットル、圧縮比9:1、最大出力265hp/5,400rpm)は、同社が第2次世界大戦前から開発に着手していた高級乗用車用エンジンの発展型である。 XKシリーズは、イギリス製の自動車用ガソリン・エンジンとしては卓越した高性能エンジンであり、ジャギュア・ブランドの高級乗用車はもちろんのこと、レーシングモデルにも搭載されて成功を収め、同社の主力エンジンとして長期に渡って量産された。 このため、CVR(T)/CVR(W)に搭載するエンジンの候補として注目されることとなり、厳しい条件下での稼動と低オクタン価燃料に適応させるため、圧縮比を下げて出力を減格したものがJ60 No.1 Mk.100Bエンジンである。 本エンジンの諸元は総排気量4,235cc、圧縮比7.75:1、最大出力190hp/4,750rpmで、最大トルクは32.3kg·m/3,500rpmとなっていた。 一方、フォックス装甲偵察車の変速・操向機は前作のフェレット装甲偵察車と同様に、ダイムラー社製の予約選択式手動変速・操向機(前進5段/後進5段)が採用されているが、フォックスではパワーステアリングが導入されたため操縦が容易になり、操縦手の負担が軽減されている。 このパワープラントによってフォックス装甲偵察車は路上最大速度104km/h、路上航続距離434kmの機動性能を発揮した。 サスペンションはコイル・スプリングとショック・アブソーバーによる4輪独立懸架で、頑丈な足周りを構成していた。 また本車は小型軽量であるため、NATO軍の主力輸送機であるアメリカ製のC-130中型輸送機に3両搭載することが可能で、専用のパラシュート付きパレットを使用すれば空中投下もできた。 さらに浮航能力も備えており、浮航スクリーンを展張するなど簡単な事前準備を行えば、河川を水上渡渉することが可能であった。 ただし水上航行用のスクリューなどは備えていないため、水上での推進力はタイヤの回転で得るようになっており、航行速度は5km/hと遅い。 このためイギリス陸軍では、ほとんどのフォックス装甲偵察車の浮航スクリーンを運用開始当初に廃止している。 |
|||||
+派生型
●FV722ヴィクセン装甲偵察車 FV722「ヴィクセン」(Vixen:雌ギツネ)は、FV721フォックスの砲塔非搭載型である。 フォックスの廉価版として計画され、試作車が製作されてイギリス陸軍による試験に供されたものの、結局量産には至らずに終わった。 なおヴィクセンの試作車は現在、ボーヴィントン戦車博物館に展示されている。 ●ポールキャット装甲偵察車 「ポールキャット」(Polecat:ケナガイタチ)はFV721フォックスの砲塔を撤去し、代わりに7.62mm機関銃L7もしくは、アメリカのブラウニング火器製作所製の12.7mm重機関銃M2を装備する1名用銃塔を搭載したタイプである。 ポールキャットは少なくとも1両以上が製作され、1980年代に北アイルランドのパトロールに使用することが提案された。 ●パンガ装甲偵察車 「パンガ」(Panga:東アフリカで使われる刃が長く広い刀)は、マレーシア陸軍での採用を狙って開発されたFV721フォックスの輸出用バージョンである。 30mmラーデン砲を装備するフォックスの砲塔に代えて、アメリカのボーイング社製の87口径25mm機関砲M242ブッシュマスターと、FN-MAGのアメリカ版である7.62mm機関銃M240を同軸装備する、ベルビディアのヘリオ社製のFVT800砲塔を搭載していたが、結局マレーシア陸軍には採用されなかった。 ●フォックス・スカウト装甲偵察車 フォックス・スカウトはFV721フォックスの砲塔を撤去し、代わりに7.62mm機関銃L7もしくは、ボーイング社製の7.62mmチェインガンL94A1を装備する1名用銃塔を搭載し、4,500発の機関銃弾を搭載した護衛バージョンで、試作車が製作されたのみである。 ●フォックス25装甲偵察車 フォックス25はFV721フォックスの砲塔を撤去し、代わりに25mm機関砲M242ブッシュマスターを装備する、アメリカのFMC社製の「シャープシューター」(Sharpshooter:狙撃兵)1名用砲塔を搭載したタイプであり、試作車が製作されたのみである。 ●フォックス・ミラン自走対戦車ミサイル フォックス・ミランはFV721フォックスの砲塔を撤去して代わりに、フランスと旧西ドイツの合弁企業であるユーロミサイル社が開発した、「ミラン」(MILAN:Missile d'Infanterie Léger Antichar=「歩兵用軽対戦車ミサイル」の頭字語)対戦車ミサイルの発射機装備のコンパクト砲塔を搭載した、戦車駆逐車バージョンである。 CVR(T)にスウィングファイア対戦車ミサイルの起倒式5連装発射機を搭載した、FV102ストライカーが実用化されたこともあり、フォックス・ミランは試作のみに終わった。 ●セイバー装甲偵察車 1993年にイギリス陸軍から退役することが決まったFV721フォックスの砲塔を、ほぼ同時期に退役することになったFV101スコーピオンの車体と組み合わせて、FV107シミターに類似する装軌式装甲偵察車「セイバー」(Sabre:サーベル)を改造生産することになった。 合計138両のスコーピオンがセイバーに改造されて部隊配備されたが、冷戦の終結によりイギリス陸軍の予算が削減されたため、セイバー装甲偵察車は2004年をもって早々に退役した。 ●FV432/30歩兵戦闘車 ソ連軍が装備するBMP-1歩兵戦闘車に対抗するために1970年代中盤、ベルリン歩兵旅団(西ベルリンに拠点を置くイギリス陸軍の歩兵旅団駐屯地)所属のFV432「トロウジャン」(Trojan:トロイア人)装甲兵員輸送車に、FV721フォックスの砲塔を搭載して歩兵戦闘車化する改修を施したもの。 13両が改修されたところで計画が中止された。 |
|||||
<FV721フォックス装甲偵察車> 全長: 5.08m 車体長: 4.17m 全幅: 2.13m 全高: 2.20m 全備重量: 6.75t 乗員: 3名 エンジン: ジャギュアJ60 No.1 Mk.100B 4ストローク直列6気筒液冷ガソリン 最大出力: 190hp/4,750rpm 最大速度: 104km/h(浮航 5km/h) 航続距離: 434km 武装: 81.3口径30mmラーデン砲L21A1×1 (99発) 7.62mm機関銃L37A2×1 (2,600発) 装甲厚: |
|||||
<参考文献> ・「パンツァー2005年1月号 イギリス陸軍のフェレット/フォックス装甲偵察車」 遠野士郎 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2015年2月号 世界の”生きている”戦闘車輌を取材する旅(8)」 三野正洋 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2015年8月号 ユニオンジャックの尖兵 シミター装甲偵察車」 柘植優介 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2008年7月号 スコーピオン偵察車輌シリーズ」 佐藤慎ノ亮 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2012年11月号 冷戦期のイギリス装輪AFV」 前河原雄太 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年12月号 イギリス機甲部隊発達史」 城島健二 著 アルゴノート社 ・「世界AFV年鑑 2005~2006」 アルゴノート社 ・「戦闘車輌大百科」 アルゴノート社 ・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904~2000」 デルタ出版 ・「世界の戦車パーフェクトBOOK 決定版」 コスミック出版 ・「世界の最新装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「新・世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の軍用4WDカタログ」 三修社 ・「世界の戦車・装甲車」 竹内昭 著 学研 |
|||||
関連商品 |