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+開発の背景
1950年代にイタリア陸軍の機甲戦力の中核を担っていたのは、アメリカから供与されたM47パットン中戦車であったが、1960年代に入るとそれを更新する車両のリサーチが開始された。 そして1964年に、アメリカ製のM60スーパー・パットン戦車300両を導入することを決定し、さらに1970年には、西ドイツからレオパルト戦車800両を導入することになった。 イタリア陸軍が導入したM60/レオパルト戦車は、その約2/3以上がイタリア国内でライセンス生産されたが、このことが同国のAFV製造技術を急速に発展させる基となった。 イタリア政府は1980年代に入って、旧式化したM60/レオパルト戦車の後継として西ドイツからレオパルト2戦車を導入することを計画したが、各種AFVの開発・生産に自信を深めた国内軍需産業界はこれに反発し、MBTを含むイタリア陸軍の新型AFVの国内開発を求めて政府に圧力を掛けた。 このため、イタリア政府は1984年初めにレオパルト2導入計画を白紙撤回し、その春には陸軍向けAFVの国内自主開発・生産の方針を決定した。 これを受けたイタリア陸軍は、早くも同年中に自軍が保有すべきAFVの種別と、それらが持つべき性能を明らかにすると共に、使用する機構や部品をなるべく共通化するという構想を示した。 それらはMBT(主力戦車)、戦車駆逐車、IFV(歩兵戦闘車)、多目的軽装甲車の4車種から成り、後にそれぞれMBTはC1アリエテ、IFVはVCC-80ダルド、多目的軽装甲車はプーマとして具現化することになる。 戦車駆逐車については、主武装を当時の西側各国のMBTと同じ105mmライフル砲とし、FCS(射撃統制装置)も同時期に開発されるMBTと可能な限り共通化すること、そして走行系統を装輪式とすることで、路上での高速機動と航続距離の増大を可能にすると共に、路外における高い不整地踏破性をも確保するものとされた。 これが後にB1チェンタウロとなるのであるが、このような諸条件が設定された背景には、南北に細長く長大な海岸線を有する半島国家という、イタリアの地理的状況が深く関係していた。 このような国土全体を効率的に防衛するために、MBTを装備する部隊を北部に、機動力に勝る部隊を南部にそれぞれ配置して、有事の際にはまず南部のそれを「即応部隊」として展開するという、イタリア陸軍独自の構想があった。 1991〜96年にかけてイタリア陸軍向けに400両生産されたB1チェンタウロは、西側第2世代MBTの標準武装となった、イギリスの王立造兵廠製の51口径105mmライフル砲L7と遜色ない威力を持つ、52口径105mm低反動ライフル砲を装備する大型の3名用砲塔と、MBT並みのサイズを持つ8×8型装輪式の車体を組み合わせた、世界初の本格的な装輪戦車というべき車両であった。 MBTに比べて調達・運用コストが安く、路上での機動力が高い装輪戦車は現在、世界中の軍隊に流行しつつあり、日本の16式機動戦闘車、アメリカのストライカーMGS、中国の11式105mm装輪突撃砲など多種多様なものが開発されている。 こうした装輪戦車ブームの火付け役となった存在の1つとして、B1チェンタウロは世界の兵器史に残る重要な車両といえる。 |
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+開発の経過
イタリア陸軍自体B1チェンタウロを開発した時点で、同車と共同行動が可能な装輪式IFVの必要性は強く感じていた。 同軍に配備されていたフィアット6614装甲車やプーマ装甲車などの装輪式装甲車は、警備用装甲車としての性格が強い車両であり、せいぜいAPC(装甲兵員輸送車)としてしか使用できず、不整地走破性や攻撃力などは著しく低かった。 その一方、アメリカ製のM113 APCの改良型であるVCC-1カミリーノや、その後継として開発が進められていたVCC-80ダルドなどの装軌式IFVは不整地走破性は優れていたものの、路上ではB1チェンタウロの移動速度に追随できなかった。 そこでB1チェンタウロをベースに、高い攻撃力と一定の装甲防御力を兼ね備えた8×8型装輪式のIFVが新たに開発されることになったのである。 なお一般的に、装輪式装甲車を開発する場合には最初に基本型であるAPC/IFV型を開発し、その後に戦車砲や対戦車ミサイルを装備する戦車駆逐車などの各種派生型が開発されるのが普通であるが、B1チェンタウロはその逆の順番で開発が進められた珍しい例となった。 ただし、IFV型の開発はイタリア陸軍から要求されたわけでは無く、当初はローマに本社を置く共同企業体「CIO」(Societe Consortile Iveco Fiat-Oto Melara)の自主開発という形で進められた。 CIOはトリノのフィアット社傘下のイヴェコ社と、ローマのオート・メラーラ社が1984年に、今後のイタリア陸軍の新型AFV開発を一手に引き受ける目的で設立した共同企業体であり、オート・メラーラ社が60%、イヴェコ社の防衛車両部門が40%の資本を出資している。 同社はB1チェンタウロ以外にも、C1アリエテ戦車、VCC-80ダルドIFV、プーマ装甲車など今日のイタリア陸軍の主要AFVの開発・生産を手掛けている。 なお前述のように、イタリア陸軍は当時装輪式のIFVを欲してはいたものの、性能的に不充分なことは理解しつつもプーマ装甲車の6×6型を、B1チェンタウロと共同行動する装輪式APCとして運用することを構想していた。 このためCIOは、本命としてB1チェンタウロIFV型のイタリア陸軍での採用を目論んでいたものの、採用されなかった場合のことも考えて海外輸出もかなり意識していた。 IFV型の開発にあたっては、極力B1チェンタウロのコンポーネントを流用し、開発期間の短縮、部品・製造ラインの共通化でコスト削減を目指した。 そのため、ベースとなったB1チェンタウロの開発期間が約5年であったのに対し、IFV型は3年程度で試作車の完成まで漕ぎ着けている。 IFV型の試作車は1996年に完成し、「チェンタウロVBC(Veicolo Blindati da Combattimento:装甲戦闘車)」と命名された。 ただし自主開発であるため、すぐさま大量受注に漕ぎ着けるという保証は無く、実際、イタリア政府の財政難の影響で陸軍に充分な予算が付かなかったため、チェンタウロVBCのその後の開発スケジュールは大幅なスローダウンを余儀なくされている。 イタリア陸軍の要求を盛り込んだチェンタウロVBCの第2次試作車が完成したのは、それから6年後の2002年、制式採用はさらに4年後の2006年になってからである。 この頃イタリア陸軍は車両更新の真っ最中で、C1アリエテ戦車やVCC-80ダルドIFVの導入が優先的に行われていたため、チェンタウロVBCの導入は後回しにせざるを得なかったという事情もあったようで、その結果、最初の試作車の完成から10年も時間が空いてしまった。 とはいえ、前述のようにB1チェンタウロに追随可能な装輪式IFVの必要性はイタリア陸軍としても理解しており、アリエテ戦車やダルドIFVの調達に目処が付いた2006年9月に、チェンタウロVBCは「フレッチア」(Freccia:矢)の愛称で制式採用された。 本車に先駆けて、装軌式IFVの愛称を「ダルド」(Dardo:投げ槍)と命名していたため、それに掛けたネーミングとして、装輪式IFVにはフレッチアと名付けたものと思われる。 またフレッチアの制式化の際に、車両分類もVBCからVBM(Veicolo Blindato Medio:中型装甲車)に改められている。 固有の乗員は最初の試作車の時から変化しておらず、車体前部左側の操縦室内に操縦手、2名用の全周旋回式砲塔に車長と砲手が位置するが、車体後部の兵員室内に収容する兵員数は、最初の試作車では6名だったのに対し、生産型では8名に増加している。 |
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+配備と運用
前述のようにフレッチアIFVは、2006年9月にイタリア陸軍に制式採用された後、2007年12月には第1次発注契約が結ばれ、249両の調達が計画された。 内訳は基本型であるIFV型が172両、砲塔にイスラエル製のスパイク対戦車ミサイルの発射機を増設した対戦車型が36両、装甲指揮車型が20両、そして120mm自走迫撃砲型が21両となっている。 そして翌08年からイタリア陸軍への配備が開始されたが、第1生産ロットとして53両、第2生産ロットとして109両、そして第3生産ロットの87両と、3回に分けて軍に納入されている。 またその後、追加で装甲救急車型が4両導入されている。 こうしてイタリア陸軍に引き渡されたフレッチアIFVは、B1チェンタウロが配備された南イタリアの部隊に配備され、同車と共に運用されている。 最初にフレッチアIFVが配備されたのは、第10方面司令部(ナポリ)傘下のピネローロ機械化旅団である。 同旅団は1個騎兵連隊(第7ベルサリエリ連隊)と、2個歩兵連隊(第9および第82)、そして砲兵、工兵、兵站の各連隊が1個ずつという編制だが、駐屯する都市はアドリア海に面したプッリャ州の州都バーリであり(ちょうどイタリア半島の踵の部分)、海に接するイタリア半島南東部を防衛すると共に、北から南、西まで緊急展開可能な部隊としての役割から、チェンタウロ/フレッチアが優先的に配備されたようである。 2019年12月にはさらに81両のフレッチア・シリーズが追加発注されており、その内訳はIFV型が5両、対戦車型が36両、装甲指揮車型が26両、120mm自走迫撃砲型が14両となっている。 なお現時点では、フレッチアIFVを導入しているのはイタリア陸軍のみである。 メーカー側としては、すでにB1チェンタウロを導入しているスペインやオマーンに売り込みを図ったようだが、オマーンはより安価なトルコ製のパースIII装輪式IFVの採用を決定し、フレッチアIFVは落選した。 一方スペインも、B1チェンタウロの支援用として派生型の装甲回収車型を4両導入したのみで、それ以上の輸出には繋がっていない。 フレッチアは装輪式IFVとしては優秀だが、装輪戦車であるB1チェンタウロをベースとした高性能な車体に、装軌式のダルドIFVと同じ砲塔を搭載しているため、どうしても車両単価は他の装輪式IFVと比べると高くなってしまう。 このため、コストパフォーマンス的にフィンランド製のAMV、スイス製のピラーニャ、前述のパースIIIなどの売れ筋の車両と比べると劣勢に立たされている。 これら海外製の装輪式IFVは、不整地走破性に優れるが高価な装軌式IFVを導入することが困難な国向けに、コストパフォーマンスを最優先に開発されており、同様に高価な装輪戦車の派生型として開発されたフレッチアIFVが、輸出市場で分が悪いのは仕方ないであろう。 |
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+攻撃力
フレッチアIFVの原型となったB1チェンタウロは、敵戦闘車両との機甲戦闘を主目的とする車両であるため、装甲貫徹力に優れる52口径105mm低反動ライフル砲を装備する、大型の3名用砲塔を搭載しているが、フレッチアIFVは、チェンタウロに随伴して兵員の輸送と火力支援を行う車両であるため、敵歩兵や軽装甲車両に対してより有効な射撃を行える、25mm機関砲を装備する2名用砲塔を搭載している。 フレッチアIFVの砲塔は、ダルドIFVに採用されているものと同じオート・メラーラ社製のTC-25ヒットフィスト砲塔で、武装も同じくスイスのエリコン社製の80口径25mm機関砲KBA-B02と、ガルドーネ・ヴァル・トロンピアのピエトロ・ベレッタ火器製作所製の、7.62mm機関銃MG42/59(ドイツのラインメタル社製の7.62mm機関銃MG3のライセンス生産型)を同軸に装備している。 砲塔内には左側に車長、右側に砲手がそれぞれ搭乗し、FCSや赤外線暗視装置、砲安定装置などはダルドIFVと同じものが搭載されている。 そして、砲塔の左右側面には4連装の76mm発煙弾発射機が1基ずつ装備されている他、砲手用キューポラには対地/対空兼用の7.62mm機関銃MG42/59が防盾付きで設置されている。 主武装の25mm機関砲KBA-B02の発射速度は600発/分で、−10〜+60度の俯仰角を持ち、ある程度の対空戦闘能力も備えている。 弾薬はAPDS(装弾筒付徹甲弾)もしくは、APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)75発と、HEI(焼夷榴弾)125発を砲塔バスケットに置かれた弾倉に収容して、この内2種類の弾薬が2本のベルトにより給弾される。 さらに戦闘室内には予備弾薬として、200発の25mm機関砲弾を収める弾薬ベルトが用意されている。 なおオプションとして主武装の25mm機関砲は、より強力なアメリカのNGIS(Northrop Grumman Innovation Systems)社製の、80.3口径30mm機関砲Mk.44ブッシュマスターIIに換装可能であり、これは輸出型で提案されている。 また最近では、アフガニスタンなどでのPKO活動に派遣された戦訓から、砲塔後部にアメリカ陸軍のM2ブラッドリーIFVが装備するのと同様の、ポール式のIED(即席爆発装置)妨害アンテナを装着するようになっている。 |
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+防御力
前述したように、フレッチアIFVはB1チェンタウロの車体をベースとした派生型であるため、基本的な構造はチェンタウロと共通である。 車体と砲塔は共に圧延防弾鋼板の全溶接構造で、車内レイアウトは車体前部右側が機関室、前部左側が操縦室、車体中央部が2名用の全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室、車体後部が8名の完全武装歩兵を収容可能な兵員室となっている。 なお兵員室内の座席配置は、メーカーのカタログなどでは左右両側にそれぞれ5名分の座席が配置され、合計10名の兵員を収容できるように描かれているが、イタリア陸軍の車両では座席数を減らして8名が定員となっているようである。 兵員室内の座席は安価なベンチシートではなく、ヘッドレストが独立した耐地雷性に優れた個別のバケットシートとなっており、シートベルトも4点式のしっかりしたものが付属している。 また座席は個々に跳ね上げることができ、装備や兵員数に柔軟に対応できる構造となっている。 フレッチアIFVの各部の装甲厚については公表されていないが、装甲防御力はB1チェンタウロと同等で、前面で20mm機関砲弾の直撃、全周で12.7mm重機関銃弾の直撃に耐えられるという。 また増加装甲を装着すれば、30mm機関砲弾の直撃に耐えることも可能だという。 フレッチアIFVは車体後部に兵員室を設ける必要性から、原型のB1チェンタウロに比べて車体が延長されており(7.85m→7.99m)、ホイールベースもチェンタウロが前から1.6m、1.45m、1.45mという間隔だったのが、フレッチアでは全て1.6mとされている。 また後部兵員室の内部容積を確保するために、兵員室部分の側面装甲板を垂直に改め、高さも約20cm嵩上げしている。 フレッチアとチェンタウロでは車体後面の構造も異なっており、チェンタウロでは中央に右開き式の大型ドアが設けられていたが、フレッチアでは代わりに油圧開閉式の大型ランプドアが設けられ、搭乗兵員の迅速な乗降が可能になっている。 この大型ランプドアには、中央に右開き式の小型ドアも設けられており、通常の乗降にはこちらを用いるようになっている。 また、兵員室の上面には後ろ開き式の大型ハッチが設けられており、ここから乗降することも可能な他、搭乗兵員が顔を出して周囲の状況を把握する際にも用いられる。 車体後面の大型ランプドアの上方には、後方視認用カメラが標準で装備され、ランプドアの左脇には大型のメッシュボックスに収容される形で、牽引力10tのウィンチが装備されている。 そのため兵員室上面左端には、それに用いるためのワイアー・ロープと滑車も搭載されている。 ただし一部の車両はこの部分にウィンチを装備せず、代わりにAPU(補助動力装置)かエアコンの室外機を装備しているものもある。 またフレッチアはチェンタウロと同様、車体最前部の左端にも牽引力10tのウィンチを標準装備している。 |
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+機動力
前述のように、フレッチアIFVは車体後部に兵員室を設ける必要性から、原型のB1チェンタウロに比べて車体が大型化されており、それに伴って戦闘重量がチェンタウロの25tから1t増えて26tに増大している。 これに対応してフレッチアはエンジンが強化されており、チェンタウロに搭載されていたイヴェコ社製の8260 V型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力520hp)に代えて、同社製の8262 V型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力550hp)が搭載されている。 これに組み合わされる変速機はチェンタウロと同様、ドイツのZF社(Zahnradfabrik Friedrichshafen:フリードリヒスハーフェン歯車製作所)製の、5HP1500トルク変換機付き自動変速機(前進5段/後進2段)が採用されている。 エンジンと変速機は冷却装置などと共にパワーパックとして一体化され、車体前部右側に設けられた機関室内に収納される。 このパワーパックは故障や整備の際、約20分で交換可能だという。 フレッチアIFVのサスペンション方式は、装輪式車両としては珍しいマクファーソン・ストラット油気圧式サスペンションによる各輪独立懸架である。 駆動方式に関しては8輪駆動(8×8)と、後ろ2軸の4輪駆動(8×4)との選択式で、操向方式も前方の2軸4輪が操向する4輪操向と、よりコンパクトに旋回可能な6輪操向(前方の4輪と最後部の2輪)を、必要に応じて切り替えられるようになっている。 足周りは14.00×R20のランフラット・タイヤで、現代の装輪式AFVでは必須のCTIS(タイヤ空気圧中央調整装置)も装備している。 これにより、不整地ではタイヤの空気圧を下げて接地面積を広げることで走破性能を向上でき、整地路面では逆に空気圧を上げて摩擦抵抗を少なくすることで、効率良く走ることが可能となっている。 |
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+派生型
前述のようにフレッチアIFV自体が、B1チェンタウロの派生型として開発された車両であるため、これから挙げる各タイプはチェンタウロの派生型といえなくも無いが、汎用性という点ではホイールベースを延長し、後部兵員室の天井を嵩上げしたフレッチアの方がチェンタウロよりも高かったことから、これらは全てフレッチアの車体を流用している。 そのため、フレッチアIFVの派生型として解説する。 ●60mm HVMS搭載型 オート・メラーラ社がイスラエルのIMI(Israel Military Industries:イスラエル軍事工業)と共同開発した、軽量で発射速度の高い70口径60mm速射砲HVMS(High Velocity Medium Support:高速度中支援)を装備する火力支援車両。 60mm HVMSは、オート・メラーラ社が開発した2名用のT60/70軽量型砲塔への搭載を前提に設計されており、T60/70砲塔は左右側面に4連装の76mm発煙弾発射機を装備している。 この車両は、イタリア陸軍のLAV(軽装甲車両)計画向けとして提案されたが、結局採用には至らなかった。 主砲の60mm速射砲HVMSは、HE(榴弾)とAPFSDSを選択して30発/分の速度で連射することができ、砲塔バスケットの前部にドラム弾倉が配されている。 APFSDSを用いた場合の砲口初速は1,680m/秒で、射距離2,000mで傾斜角30度の120mm厚RHA(均質圧延装甲板)を貫徹することが可能である。 ●対戦車型 フレッチアIFVの砲塔の左右側面に、ATM(対戦車ミサイル)のコンテナ式発射機を1基ずつ装着したタイプ。 同じTC-25ヒットフィスト砲塔を搭載するダルドIFVでは、アメリカのヒューズ航空機製のBGM-71 TOW ATMを搭載するようになっていたが、フレッチアIFVではより新しい、イスラエルのラファエル社製のスパイクLR ATMを搭載できるように改良が図られている。 スパイクATMは、誘導方式に赤外線画像方式を採用した撃ちっ放し可能な第3世代ATMで、そのため目標をロックオンした後、ATMを発射したらすぐに移動が可能となっている。 また、スパイクATMには携帯式短射程型のSR、中射程型のMR、長射程型のLRの3種類があるが、フレッチアIFVに設定されているのは最大射程4,000m、射距離に拘らず700mm厚のRHAを穿孔可能なスパイクLRであり、高い攻撃力を誇っている。 ●装甲指揮車型 フレッチアIFVの砲塔を撤去して兵員室の高さを嵩上げしたタイプで、車体後部に無線機やマップボード、ノートパソコンなど指揮機材を搭載する。 また兵員室の上部には、多数のロッドアンテナを立てている。 ●ポルコスピーノ155mm自走榴弾砲 イタリア陸軍が装備する牽引式の39口径155mm榴弾砲FH70の後継として、新型の155mm榴弾砲と自動装填装置を装備する軽量型砲塔を、フレッチアIFVの車体に搭載した装輪式自走榴弾砲。 イギリスとアメリカが2005年に共同開発した、39口径155mm榴弾砲M777の車載型を主砲に採用しているが、この砲は非常に軽量なため、装輪式のフレッチアIFVにも比較的無理なく搭載できた。 本車は「ポルコスピーノ」(Porcospino:ヤマアラシ)の呼称で、イタリア陸軍に採用することが予定されている。 ●120mm自走迫撃砲型 フレッチアIFVの砲塔を撤去し、後部兵員室内にフランスのトムソン・ブラント社製の17.3口径120mm迫撃砲2R2Mを搭載した自走迫撃砲。 2R2Mは後装式の120mm迫撃砲で、砲身内部にライフリングが刻まれており、RAP(ロケット補助推進弾)を用いれば最大射程14kmを誇る優秀な迫撃砲である。 また、GPSを用いた精密射撃も可能である。 ●ドラコ対空自走砲 イタリア陸軍が装備するSIDAM 25対空自走砲(M113 APCの車体に、25mm対空機関砲KBA-Bを4連装で装備するオート・メラーラ社製の全周旋回式砲塔を搭載した対空車両)が旧式化したため、同社が開発した62口径76.2mm対空速射砲システム「ドラコ」(Draco:ラテン語で竜を意味する)を、フレッチアIFVの車体に搭載した後継車両。 主砲の最大射程は16km、対地/対空/対艦攻撃に対応するが、対空戦闘では15km以内の目標をレーダー装置により自動追尾し、最大120発/分の速度で射撃可能である。 オート・メラーラ社は1986年に「オートマティック」の呼称で、レオパルト1戦車の車体と組み合わせた原型車両を公開したがどこからも発注が無く、その後2010年に改良型を「ドラコ」として公開し、イタリア陸軍に採用された。 しかしイタリア政府の財政難等の理由で、陸軍の調達予算がなかなか承認されないため未生産。 ●装甲回収車型 フレッチアIFVの砲塔を撤去して、車体上部に大型キューポラと牽引力9tの伸縮式クレーンを搭載したタイプ。 車体前面には排土用のドーザー・ブレイドを装備し、また作業がし易いように、車体中央のキューポラは車体上面から1mほど高められている。 車体後部の兵員室内には回収用のウィンチも搭載している他、兵員室上部にはそれに用いるためのワイアー・ロープや滑車が装備されている。 またキューポラの前面には、横一列に8連装の76mm発煙弾発射機が装備されている。 ●装甲救急車型 車体の基本的な構造は装甲指揮車型と同様で、フレッチアIFVの砲塔を撤去して後部兵員室を嵩上げしたタイプだが、兵員室内に担架や各種衛生機材を搭載しているのが特徴である。 ●装甲工兵車型 指揮車型や救急車型と同じく、砲塔を撤去したフレッチアIFVの車体がベースだが、後部兵員室内に各種工兵機材を収容できるようになっている。 また車体上面には、地雷処理ロケットの発射機が搭載可能である。 ●その他 フレッチアIFVは開発当初から海外輸出を念頭に置いていたため、派生型の中にはイタリア陸軍に採用されていないタイプも複数存在するが、これ以外にもメーカー側は様々な要求に対応する用意があるようで、現にNBC防護車型などがラインナップされている。 |
<フレッチア歩兵戦闘車> 全長: 8.56m 全幅: 2.99m 全高: 3.18m 全備重量: 28.0t 乗員: 3名 兵員: 8名 エンジン: イヴェコ 8262 4ストロークV型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 550hp 最大速度: 110km/h 航続距離: 800km 武装: 80口径25mm機関砲KBA-B02×1 (400発) 7.62mm機関銃MG42/59×2 (4,000発) 装甲厚: |
<参考文献> ・「パンツァー2014年1月号 フレッチア戦闘兵車 チェンタウロから放たれた矢じり」 柘植優介 著 アルゴノート 社 ・「パンツァー2022年10月号 陸自の装輪車輌について」 岩本三太郎 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2008年5月号 チェンタウロ戦闘偵察車」 佐藤慎ノ亮 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2015年5月号 世界の現用装輪装甲車輌」 平田辰 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2012年1月号 イタリアのフレッチアICVシリーズ」 アルゴノート社 ・「パンツァー2001年4月号 新装備トピックス」 アルゴノート社 ・「パンツァー2006年4月号 今月のトピックス」 アルゴノート社 ・「パンツァー2025年3月号 軍事ニュース」 荒木雅也 著 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2025-2026」 荒木雅也/井坂重蔵 共著 アルゴノート社 ・「戦闘車輌大百科」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2006年10月号 ユーロサトリ2006 (2)」 伊吹竜太郎 著 ガリレオ出版 ・「決定版 世界の最強兵器FILE」 おちあい熊一 著 学研 ・「世界の戦車パーフェクトBOOK 決定版」 コスミック出版 ・「世界の最新装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 |
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