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+概要
EX戦車は、インド陸軍の新型MBTアージュンの開発を手掛けた「DRDO」(Defence Research and Development Organization:防衛研究・開発機構)が2002年に公開した試作MBTで、基本的にはアージュン戦車の砲塔に、インドがライセンス生産を行っている旧ソ連製のT-72M1戦車の車体を組み合わせたものである。
ちなみに「EX」は本車の開発コードネームであり、正式な呼称は「カルナ」(Karna:古代インドの叙事詩マハーバーラタの登場人物)であるといわれている。
DRDOがEX戦車を開発した目的は、インド陸軍が保有している旧式化したT-72M1戦車の近代化改修プランとしての採用を狙ったものだといわれており、少なくとも2種類の試作車が製作されたようである。
また、アージュン戦車の開発が当初の予定より大幅に遅れたことから、アージュン戦車の開発が失敗した場合の保険としての意味合いもあったのではないかと推測されている。
EX戦車の砲塔はアージュン戦車とほとんど同じもので、主砲はイギリスの王立造兵廠製の55口径120mmライフル砲を搭載している。
この砲はイギリス陸軍のチャレンジャー1戦車にも搭載されており、1991年2月の湾岸戦争地上戦において、200両余りのイラク陸軍戦車を撃破した実績がある。
使用する弾種はAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)、HE(榴弾)、HEAT(対戦車榴弾)、HESH(粘着榴弾)の他、イスラエル製の「LAHAT」(Laser
Homing Anti-Tank(レーザー誘導対戦車)の略語と、ヘブライ語で「雷」を意味する単語を掛けた呼称)対戦車ミサイルも発射可能である。
FCS(射撃統制装置)はレーザー測遠機、弾道コンピューター、熱線映像装置、安定化型展望式サイト等から成る、国産のものが搭載されている。
副武装は、主砲と同軸に旧ソ連製の7.62mm機関銃PKTを1挺、砲塔上面に対空用の12.7mm重機関銃NSVTを1挺装備している。
砲塔の前面には、「DMRL」(Defence Metallurgical Research Laboratory:防衛冶金研究所)で開発された、「カンチャン・アーマー」と呼ばれる国産の複合装甲が採用されている。 ちなみに「カンチャン」(Kanchan)はDMRLの所在地の地名で、ヒンディー語で「金」を意味する。
EX戦車の車体はT-72M1戦車のものが用いられているが、エンジンはT-90S戦車と同じV-92-S2 V型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力1,000hp)に強化されている。
しかし、アージュン戦車に比べるとエンジン出力がかなり低いため、路上最大速度はアージュン戦車の72km/hから60km/hに低下している。
また車体がアージュン戦車よりやや小柄なため、主砲弾薬の搭載数はアージュン戦車の39発から32発に減少している。
その反面、戦闘重量はアージュン戦車の58.5tに比べて、EX戦車は47tと10t以上軽量なため、路上航続距離はアージュン戦車の450kmから480kmに延伸している。
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