HOME研究室(第2次世界大戦後〜現代編)装輪式装甲車装輪式装甲車(スイス)>イーグル装甲車

イーグル装甲車





イーグル装甲車はPKO任務などに最適な偵察用装甲車として、スイス陸軍の要請でモヴァーク社が開発した4×4型の装輪式装甲車である。
イーグル装甲車の宣伝コピーは、「費用対効果と余裕」だという。
この特徴は、頑丈・安価なアメリカのAMジェネラル社製の汎用高機動車両HMMWVのシャシーの上に、モヴァーク社オリジナルの装甲ボディと砲塔を組み合わせたことにより実現している。

HMMWVと決定的に違うのは、装甲ボディと全周旋回式の1名用砲塔を保有していることである。
装甲ボディはアルミの内部材と外側の防弾鋼板の複合型で、それに防弾ガラスが組み合わされている。
どこから直撃弾を浴びても貫徹されないよう対策を施したため防弾ガラス製のウィンドウは小さく、車体全体が平面構成のデザインとなってしまった。

イーグル装甲車の耐弾能力は、車体とエンジン・コンパートメントに関しては射距離30mから発射された7.62mmボール弾と5.56mmボール弾の直撃を阻止し、射距離100mから発射された7.62mmAP弾の直撃から保護する。
フロント、リアのタイア周りは、射距離30mから発射された7.62mmボール弾と5.56mmボール弾の直撃に堪えるものとなっている。
この耐弾能力を備えながら車体重量3.8t、戦闘重量4.8tに収めている。

乗員は車長、操縦手、無線手、偵察員の4名で車体側面にそれぞれの乗降用ドアが用意されており、車長席の上部には後ろ開き式のハッチも設置されている。
また車体後面には上部に大きく開くハッチがあり、ある程度までの物資輸送が可能な他、車内後部に2名分の座席を臨時に設けることもできる。

足周りはM998A2 HMMWVと同じで、アメリカのジェネラル・モータース社製のV型8気筒液冷ディーゼル・エンジン(排気量6.5リットル、出力160hp)と4L80E自動変速機(前進4段/後進1段)の組み合わせで、路上最大速度125km/h、後進最大速度35km/h、路上航続距離450kmの機動性能を発揮する。
タイアは37×12.50のランフラット・タイアで、ダブルコントロール・アームによる4輪独立懸架となっている。
イーグル装甲車の砲塔は防弾鋼板の全溶接構造で、重量は320kgある。

耐弾能力は7.62mmボール弾であれば至近距離でも貫徹されることは無く、また7.62mmAP弾でも射距離150m以上であれば跳ね返す程度与えられている。
ただ砲塔といっても、通常主砲を収容する砲塔前面には武器は装備されず、代わりに全天候の監視能力を有する熱線暗視映像装置が収容されている。
熱線暗視映像装置は乗員の手動によって、上下に−10〜+15度の範囲で可動する。

そこでこのモヴァーク社製の砲塔は、「MBK2監視キューポラ」と呼ばれている。
また熱線暗視映像装置は必要に応じて取り外すことができ、乗員が下車してこれをより柔軟な偵察活動に使うこともできる。
自衛用の火器としては7.5mm機関銃MG51/71がキューポラの右側面に外部搭載されており、車内から射撃操作やベルト弾帯の交換を行えるようになっている。

7.5mm機関銃の俯仰角は−12〜+20度となっており、7.5mm弾は400発が搭載される。
この他に、キューポラの後部に6基の76mm擲弾発射機が装備されている。
この擲弾発射機からは煙幕弾、対人擲弾を発射できる。
ただ、このキューポラは価格を抑えるために動力旋回装置を備えておらず、キューポラの旋回は乗員が手動で行うようになっている。

イーグル装甲車は当初3両の試作車が製作され、各種試験の結果スイス陸軍に制式採用された。
1億500万スイス・フランで156両のイーグル装甲車がモヴァーク社に発注され、月産4両のペースで生産が行われた。
1995年からスイス陸軍への引き渡しが始められ、主に偵察車両としてレオパルト2戦車を装備している戦車旅団に配備されている。

また1995年中頃にはデンマーク陸軍も本車の導入を決定し、26両を配備しアルバニアやボスニアのPKOに参加させている。
さらにECV(Expanded Capacity Vehicle:性能強化型)HMMWVのシャシーを使い、防弾ガラスが強化されたイーグルII装甲車も開発されており、1997年にスイス陸軍が9,900万スイス・フランで175両を発注し2001年まで生産が続けられた。

イーグルII装甲車では装甲の強化に伴って戦闘重量が5.5tに増加しているが、これに対応してエンジンもパワーアップされている。
排気量は6.5リットルで変わらないがエンジンにターボチャージャーが取り付けられており、出力が190hpに向上している。
これにより路上最大速度119km/h、後進最大速度33km/hという高い機動性能を維持している。


<イーグルI装甲車>

全長:    4.90m
全幅:    2.28m
全高:    1.75m
全備重量: 4.8t
乗員:    4名
エンジン:  GM 4ストロークV型8気筒液冷ディーゼル
最大出力: 160hp/3,400rpm
最大速度: 125km/h
航続距離: 450km
武装:    7.5mm機関銃MG51/71×1 (400発)
装甲厚:


<イーグルII/III装甲車>

全長:    4.90m
全幅:    2.28m
全高:    1.75m
全備重量: 5.5t
乗員:    4名
エンジン:  GM 4ストロークV型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 190hp/3,400rpm
最大速度: 119km/h
航続距離: 450km
武装:    7.5mm機関銃MG51/71×1 (400発)
装甲厚:


<参考文献>

・「パンツァー2011年9月号 スイスが生んだコンパクトな偵察用装甲車 イーグル装甲偵察車」 柘植優介 著
 アルゴノート社
・「パンツァー2024年5月号 撃撮!次期軽装甲機動車候補」 武若雅哉 著  アルゴノート社
・「パンツァー2001年7月号 スイスのイーグル装甲偵察車」 齋木伸生 著  アルゴノート社
・「パンツァー2021年9月号 LAV後継を占う」 山崎龍 著  アルゴノート社
・「パンツァー2003年1月号 海外ニュース」  アルゴノート社
・「パンツァー2003年10月号 海外ニュース」  アルゴノート社
・「パンツァー2004年3月号 海外ニュース」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021〜2022」  アルゴノート社
・「グランドパワー2004年9月号 EUROSATORY 2004」  ガリレオ出版
・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」  ガリレオ出版
・「世界の最新陸上兵器 300」  成美堂出版
・「新・世界の装輪装甲車カタログ」  三修社
・「世界の装輪装甲車カタログ」  三修社
・「世界の軍用4WDカタログ」  三修社
・「世界の軍用4WD図鑑PART2」  スコラ

関連商品

HOME研究室(第2次世界大戦後〜現代編)装輪式装甲車装輪式装甲車(スイス)>イーグル装甲車