ルノーD1/D2中戦車
|
D1中戦車

D2中戦車

|
+概要
D1中戦車は、フランス陸軍の1926年度の防衛計画に沿ってブローニュ・ビヤンクールのルノー社が設計した歩兵支援用中戦車である。
1926年度の計画要目では歩兵支援用中戦車について重量は12t程度、47mm戦車砲と2挺の機関銃を装備することとなっていた。
これを受けてルノー社では以前に設計したNC軽戦車をベースに、新型中戦車を「NC28」の呼称で開発することとした。
NC28中戦車の試作車は1929年3月に完成し、その後社内での試験を繰り返している。
基本的なレイアウトはNC軽戦車のものを踏襲しており、サスペンション・システムは増加した重量に耐えられるように補強を実施していたが、NC軽戦車のデザインをそのまま持ってきただけであった。
砲塔は、APX社(Atelier de Construction de Puteaux:ピュトー工廠)製の21口径37mm戦車砲SA18を装備するFT軽戦車のものが搭載された。
当初の要求では乗員は2名とされたが、無線機を搭載したために1名乗員が増えて3名となった。
車体は圧延防弾鋼板をリベット接合した当時の標準的なもので、前部にはMAC社(Manufacture d'armes de Châtellerault:シャテルロー造兵廠)製の7.5mm機関銃M1931を固定装備しており、機関室の上部には3角形のフレームアンテナが設けられていた。
しかし故障が多いため、無線機ごと外してしまった車両が大半を占めていた。
サスペンションは4個の転輪をボギーに装着し、これを3組配して3本のコイル・スプリング(螺旋ばね)と油圧/圧搾空気ショック・アブソーバーで支えられていた。
また、サスペンションを保護するために装甲カバーが装着されていた。
1931年にブールジュで、フランス陸軍によるNC28中戦車の公式試験が実施された。
この試験には10両のNC28中戦車が参加しており、いずれも満足できる成績を収めたため「D戦車」(Char D)としてフランス陸軍に制式採用され、すぐに60両の量産命令が出された。
後にD2中戦車が登場した際に、D中戦車は「D1」に呼称が改められている。
D1中戦車は、生産が終了する1935年までに160両が納入された。
これらは1937年に、リビアのイタリア軍と対峙するフランス植民地軍補強のためチュニジアに送られている。
D1中戦車の後期生産型では、砲塔が新型のST2に換装されている。
これは世界初の鋳造砲塔で、APX社製の27.6口径47mm戦車砲SA34と7.5mm機関銃M1931が防盾に同軸装備された。
1930年4月にフランス陸軍歩兵監部はルノー社に対して、すでに完成していたD1中戦車をベースに最大40mm厚の装甲を有する新型中戦車の開発を命じた。
この時新たに提示された要目は重量は15.5t程度とし、路上最大速度は20~22km/h程度、武装はD1中戦車と同様、47mm戦車砲と2挺の機関銃を装備することとなっていた。
開発は順調に進み、1931年12月には砲塔を搭載していない車体だけの状態の試作車が完成した。
車体はD1中戦車に酷似していたが一回り大きくなり、前面の装甲厚は40mmとなった。
車体側面には増加装甲となる雑具箱が新設され、フェンダーも新たに設けられた。
しかし重量は19.7tに増加し、機動性の著しい低下を招いた。
砲塔はB1重戦車と同じ、APX社製のAPX-1鋳造砲塔が搭載された。
1932年4月には試作車2両を用いて公式試験が実施されたが、試験の結果は芳しくなかった。
しかし、当時のフランス製戦車の中で実戦配備できる最も近代化された戦車であったため、1933年末に「D2戦車」(Char D2)として制式採用され、歩兵監部から量産命令が出されている。
1934年1月には、D2中戦車の最初の発注として50両の生産契約が結ばれた。
D2中戦車は試作車ではディーゼル・エンジンを搭載していたが、生産型では出力150hpの直列6気筒液冷ガソリン・エンジンに換装されている。
同年6月には数がはっきりしないが2度目の量産発注が行われているが、1940年5月のドイツ軍のフランス侵攻により結局放棄されてしまい、D2中戦車の生産は50両に留まった。
生産数が極めて少なかったため、D2中戦車を装備したのは1個中戦車大隊と2個独立中隊のみであった。
D2中戦車を装備した唯一の戦車大隊である第19戦車大隊は、第4機甲師団に配属されてドイツ軍との戦闘に投入されている。
|
<D1中戦車>
全長: 5.773m
全幅: 2.158m
全高: 2.39m
全備重量: 14.0t
乗員: 3名
エンジン: ルノー 4ストローク直列4気筒液冷ガソリン
最大出力: 74hp
最大速度: 18.1km/h
航続距離: 90km
武装: 27.6口径47mm戦車砲SA34×1 (120発)
7.5mm機関銃M1931×2 (2,000発)
装甲厚: 14~35mm
|
<D2中戦車>
全長: 5.456m
全幅: 2.21m
全高: 2.667m
全備重量: 19.7t
乗員: 3名
エンジン: ルノー 4ストローク直列6気筒液冷ガソリン
最大出力: 150hp
最大速度: 22.5km/h
航続距離: 100km
武装: 27.6口径47mm戦車砲SA34×1 (120発)
7.5mm機関銃M1931×2 (2,000発)
装甲厚: 20~40mm
|
<参考文献>
・「パンツァー1999年10月号 フランスのシャールD-1戦車」 古是三春 著 アルゴノート社
・「パンツァー2012年1月号 フランスのルノーD戦車シリーズ」 平田辰 著 アルゴノート社
・「パンツァー2001年4月号 大戦初期のフランス戦車」 斎木伸生 著 アルゴノート社
・「世界の戦車
1915~1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「グランドパワー2017年12月号 ドイツ軍捕獲戦闘車輌」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「世界の戦車(1)
第1次~第2次世界大戦編」 ガリレオ出版
・「戦車名鑑 1939~45」 コーエー
|