コブラ装甲車は、南アフリカのロイメック社(現アルヴィス・サウスアフリカ社)がマンバMk.II装甲車に引き続いて開発した4×4型の装輪式装甲兵員輸送車で、1996年にフランスのパリで開催された兵器見本市ユーロ・サトリ'96で発表された。 車体は圧延防弾鋼板の全溶接構造で前作のマンバMk.II装甲車よりも一回り大型化しており、車内レイアウトは車体最前部が機関室、その後方が操縦室、車体後部が兵員室となっている。 車体の左右側面には全長に渡って張り出し部が設けられており、18リットルの補助燃料タンク、270リットルの飲料水タンク、工具類等を収納するスペースとなっている。 この張り出し部は中空装甲の役割も果たしており、本車の装甲防御力の向上に貢献している。 コブラ装甲車の装甲防御力は、全周に渡って7.62mm弾の直撃および榴弾の破片に耐える程度であるが、専用の追加装甲もオプション装備として開発されており、これを取り付けた場合は7.62mm徹甲弾の直撃に耐えることが可能である。 また地雷対策として車体の底面装甲も強化されており、車輪・車体下で最大14kgまでのTNT高性能火薬の爆発に耐えるとされている。 乗員・兵員数はマンバMk.II装甲車と同じ2名+9名だが、燃料、飲料水を含めたペイロードは約2tとマンバMk.II装甲車のほぼ2倍に増え、広大な乾燥地帯における行動力を強化している。 燃料搭載量は270リットルの主燃料タンクと18リットルの補助燃料タンク合わせて288リットルで、路上航続距離は1,000kmに達する。 駆動系はドイツのダイムラー・ベンツ社製の汎用高機動車両ウニモグ2150のものを流用しており、マンバMk.II装甲車よりも機動力が向上し、パワーステアリングも装備してより運転し易くなっている。 コブラ装甲車はすでにアフリカ南部、中東、それにオーストラリアなどで評価試験が実施されており、この内のオーストラリア陸軍向け仕様車は「タイパン」と名付けられている。 タイパン装甲車は、オーストラリア陸軍が自軍の要求に合ったIMV(Infantry Mobility Vehicle:歩兵機動車両)を調達するために企画したブッシュレンジャー計画に応募するために開発されたコブラ装甲車の改良型であるが、オーストラリアのADI社が開発したブッシュマスター装甲車と共に1998年まで行われた評価試験の結果、オーストラリア陸軍のIMVの座はブッシュマスター装甲車が獲得し、タイパン装甲車は採用されなかった。 コブラ装甲車は基本のAPC(装甲兵員輸送車)型以外にもヴァリエーションが豊富で、自走迫撃砲型、装甲指揮車型、装甲救急車型、装甲工兵車型、修理工作車型、コンテナ・キャリア型、ウェポン・キャリア型などが用意されている。 また、車体を延長した6×6型のコブラ装甲車の開発も行われている。 |
<コブラ装甲車> 全長: 5.95m 全幅: 2.465m 全高: 2.675m 全備重量: 12.5t 乗員: 2名 兵員: 9名 エンジン: ダイムラー・ベンツOM366LA 4ストローク直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 210hp/2,600rpm 最大速度: 100km/h 航続距離: 1,000km 武装: 装甲厚: |
<参考文献> ・「パンツァー2000年6月号 オーストラリア陸軍の新しい足 ブッシュマスター」 小林直樹 著 アルゴノート社 ・「世界の最新兵器カタログ 陸軍編」 三修社 ・「新・世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の軍用4WDカタログ」 三修社 ・「世界の軍用4WD図鑑PART2」 スコラ |