CM11「勇虎」(ヨンフー)戦車は、1984年から台湾陸軍がアメリカのGDLS(ジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズ)社と共同で開発に着手したMBTで、当初は「M48H」と呼ばれていた。 CM11戦車は1988年に試作車が完成、同年末には射撃試験を終了し、1990年に初めて一般公開された。 1995年までに合計450両が生産されて、台湾陸軍の主力MBTとして運用が続けられている。 CM11戦車は基本的にはGDLS社で新規に生産されたM60A3戦車の車体に、M48A1戦車の砲塔に105mm戦車砲を搭載してM48A5戦車の仕様に改修したものを搭載し、FCS(射撃統制システム)を近代化したMBTであり、実力的にはアメリカのM60A3戦車、ドイツのレオパルト1A5戦車、フランスのAMX-30B2戦車等の改良型戦後第2世代MBTに匹敵するものである。 CM11戦車の砲塔は基本的にM48A1戦車と同様のものであるが、従来装備されていたキューポラ型車長用銃塔M1に代えて、イスラエルのウルダン工業製の背の低いウルダン・キューポラが装備されており、砲塔左右側面に装備されている発煙弾発射機もイギリス製のものに換装されている。 副武装は主砲同軸および装填手用ハッチに7.62mm機関銃M240を装備している他、車長用キューポラにも12.7mm重機関銃M2を装備している。 CM11戦車のFCSは全て国産のコンポーネントで構成されており、熱線映像装置、Nd-YAGレーザー測遠機、ディジタル弾道計算機、環境センサー、砲安定化装置が装備されており、M60A3戦車に匹敵する高い主砲命中精度を備えている。 台湾陸軍によるとCM11戦車は走行間射撃能力、全天候戦闘能力を有し、主砲の初弾命中率は2,000m以内の目標であれば82%であるという。 CM11戦車の内300両程度は主砲をM48A1戦車の48口径90mm戦車砲M41から、M60A3戦車と同じ51口径105mm戦車砲M68に換装しており、高度なFCSと合わせて攻撃力ではM60A3戦車に匹敵する。 ただし砲塔の装甲防御力はM60A3戦車に比べてやや見劣りがするため、これを補うため砲塔にフランスのネクスター社製のERA(爆発反応装甲)を装着したタイプも開発されている。 CM11戦車のパワーパックはM60A3戦車と同様で、GDLS社製のAVDS-1790-2C V型12気筒空冷ディーゼル・エンジン(出力750hp)と、アメリカのアリソン社製のCD-850-6Aクロスドライブ式自動変速機(前進2段/後進1段)を組み合わせている。 CM11戦車は各部の改修により戦闘重量が原型のM48A1戦車の47tから54tに大きく増加しているが、この新型パワーパックのおかげでM60A3戦車と同等の機動性能を発揮することが可能である。 |
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<CM11戦車> 全長: 9.306m 車体長: 6.946m 全幅: 3.631m 全高: 3.33m 全備重量: 54.0t 乗員: 4名 エンジン: GDLS AVDS-1790-2C 4ストロークV型12気筒空冷ディーゼル 最大出力: 750hp/2,400rpm 最大速度: 48.28km/h 航続距離: 483km 武装: 51口径105mmライフル砲M68×1 (63発) 12.7mm重機関銃M2×1 (900発) 7.62mm機関銃M240×2 (5,950発) 装甲厚: 12.7〜143mm |
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<参考文献> ・「パンツァー1999年9月号 中華民国陸軍独立第51旅戦車第1連の訓練」 アルゴノート社 ・「パンツァー2014年8月号 台湾第333機械化歩兵旅団の防禦訓練」 アルゴノート社 ・「パンツァー2004年10月号 M48パットン戦車シリーズ」 白石光 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2017年3月号 台湾オリジナルAFV CM11 & CM32」 アルゴノート社 ・「パンツァー2015年7月号 中華民国(台湾)陸軍のAFV」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版 ・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」 ガリレオ出版 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー ・「新・世界の主力戦車カタログ」 三修社 |
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