「カタパルト」(Catapult:投石機)130mm自走加農砲は、インド陸軍の主力MBTであった「ヴィジャンタ」(Vijayanta:勝利)戦車の車体をベースとし、130mm野戦加農砲M-46を搭載したインド国産の自走砲である。 本車の主砲である52口径130mm野戦加農砲M-46は、第2次世界大戦後に旧ソ連がそれまで使用していた46.3口径122mm野戦加農砲A-19の後継として開発したもので、西側がM-46の存在を初めて確認したのが1954年であったことから「M1954」のNATOコードで呼ばれていた。 M-46は砲身長6,760mmと非常に長砲身で、重量33.4kgの榴弾を使用して砲口初速930m/秒、発射速度5〜8発/分、最大射程は通常弾で27,500m、ロケット補助推進弾で38,000mと当時としては非常に優秀な野砲であった。 インドが旧ソ連から約750門購入したM-46はその長射程を活かしてインド・パキスタン戦争で活躍し、その結果この砲を搭載した自走砲が開発されることになった。 当時インド陸軍には約2,200両のヴィジャンタ戦車が在籍していたがすでに旧式化しており、後継として旧ソ連からT-72M1戦車を導入することになったため、余剰となったヴィジャンタ戦車の車体を自走砲のベースとして使用することになった。 ヴィジャンタ戦車は、イギリスのヴィッカーズ社が輸出向けにプライヴェート・ヴェンチャーで開発したヴィッカーズMk.1戦車のインド陸軍仕様であり、当初はイギリスから輸入されたが後にインドでライセンス生産が行われた。 自走砲への改造要領についてはまずヴィジャンタ戦車の砲塔を取り去り、車体を延長して転輪を片側6個から7個に増やし、車体上部にオープントップ式の固定戦闘室を設けてM-46を後ろ向きに搭載した。 M-46の砲弾は榴弾以外にタングステン弾芯の徹甲榴弾(重量33.6kg)も用意されており、これを用いた場合砲口初速930m/秒、射距離500mで250mm、4,000mで150mmのRHA(均質圧延装甲板)を貫徹することが可能で、対戦車砲としても充分な威力を持っていた。 カタパルト自走加農砲は、榴弾と徹甲榴弾を合計30発携行するようになっていた。 カタパルト自走加農砲の生産はかなり以前に終了しており現在では旧式化してしまっているが、本車の後継となるはずだった「ビーム」(Bhim:古代インドの叙事詩マハーバーラタの登場人物Bhimaに因んだ名前)155mm自走榴弾砲の採用がキャンセルされたため、現在も100両がインド陸軍で使用されており70両が予備装備として保管されている。 |
<参考文献> ・「パンツァー2003年6月号 ヴィッカースMBTシリーズ」 鈴木浩志 著 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2011〜2012」 アルゴノート社 |