Bv.206Sは、スウェーデンのヘグルンド&セーネル社(現BAEシステムズ・ヘグルンド社)が開発した全地形車両Bv.206の装甲兵員輸送車ヴァージョンである。 原型となった非装甲型のBv.206は1974年に開発が開始されており、派生型を含めると世界40カ国に合計で11,000両以上が販売されている。 Bv.206S装甲兵員輸送車は北欧の特徴である湖沼地帯や森林、ツンドラの荒地、雪上で使用できる全地形走破車両として設計されており、試作車は1989年に完成したが、スウェーデン陸軍に少数が採用されたに過ぎなかった。 だが1999年にフランス陸軍が12両、ドイツ陸軍が約100両、2000年にイタリア陸軍が58両の導入を決定している。 またイギリス海兵隊も1999年に、拡大改良型のBv.S10装甲兵員輸送車の先行生産型2両、生産型106両の導入を決定している。 Bv.206S装甲兵員輸送車はエンジンなどの動力装置および操縦室を備えた前部車体と、各種装備を搭載できる後部車体を連結して2台1組で1両の車両を構成している。 後部車体は、連結部の駆動軸から後部車体のディファレンシャル・ボックスに伝達された動力によって履帯を駆動させ、前部車体の通った経路を正しく追随していくことができる。 Bv.206S装甲兵員輸送車の車体は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、7.62mm徹甲弾や榴弾の破片に対する防御力を有しており、非装甲型のBv.206では被弾率の高い前部車体前面にあったラジエイターを車体後部に移動させ、冷却ファンを天井部に設けている。 また操縦室などの防弾ガラスにも車体と同等の防御力が備えられているが、NBC防護システムは装備されていない。 固有の武装は無いが、前部車体上部に取り付けられるリング・マウントに7.62mmまたは12.7mm機関銃や、40mm自動擲弾発射機を装着することもできる。 パワーパックはオーストリアのシュタイアー・ダイムラー・プフ社製のM16 直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力186hp)と、ドイツのダイムラー社製のメルツェーデス・ベンツW4A-040自動変速機(前進5段/後進1段)の組み合わせである。 本車は浮航能力を備えており、履帯を駆動させることにより4.7km/hの速度で水上を航行できる。 また本車は、外気温−46度から+49度までの範囲で作戦可能である。 |
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<Bv.206S装甲兵員輸送車> 全長: 6.88m 全幅: 2.00m 全高: 1.90m 全備重量: 7.0t 乗員: 4名 兵員: 8名 エンジン: シュタイアーM16 4ストローク直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 186hp/4,000rpm 最大速度: 50km/h(浮航 4.7km/h) 航続距離: 370km 武装: 装甲厚: |
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<Bv.S10装甲兵員輸送車> 全長: 7.70m 全幅: 2.10m 全高: 2.20m 全備重量: 11.5t 乗員: 4名 兵員: 10名 エンジン: カミンズ6CTA 4ストローク直列6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 250hp/2,500rpm 最大速度: 65km/h(浮航 4.7km/h) 航続距離: 500km 武装: 装甲厚: |
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<参考文献> ・「パンツァー2012年1月号 スウェーデンの全地域多目的車輌 Bv.206」 三鷹聡 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2015年3月号 スウェーデン軍の現状と将来」 荒木雅也 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2002年8月号 スウェーデンのBV206S汎用装軌車」 アルゴノート社 ・「パンツァー2000年12月号 サトリに登場した注目車輌」 アルゴノート社 ・「パンツァー1999年12月号 海外ニュース」 アルゴノート社 ・「パンツァー2000年4月号 海外ニュース」 アルゴノート社 ・「パンツァー2000年12月号 海外ニュース」 アルゴノート社 ・「パンツァー2001年9月号 海外ニュース」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車輌:1918〜2000」 デルタ出版 ・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」 ガリレオ出版 ・「世界の主力軍用車」 ジェイソン・ターナー 著 三修社 ・「世界の装軌装甲車カタログ」 三修社 ・「最新陸上兵器図鑑 21世紀兵器体系」 学研 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー |
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