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BVP-M80A歩兵戦闘車





BVP-M80A歩兵戦闘車は、1975年に公表されたBVP-M80(当初はM980と呼ばれていた)歩兵戦闘車の改良型で、1984年にその存在が確認され、1980〜91年初めまでに600両が生産されたともいわれている。
M80A歩兵戦闘車は原型のM80歩兵戦闘車と共に、クロアチアやスロヴェニアなどの旧ユーゴスラヴィア連邦諸国にのみ配備されている。

車体は全溶接された圧延防弾鋼板で構成され、ロシアのBMP歩兵戦闘車に類似している。
車体前部右側に操縦手、その後方に車長が位置し、砲塔内には砲手1名のみが搭乗する。
車体後部にある兵員室の乗車定員は7名で、左右側面に各3基ずつ、後面にある観音開き式のドアに2基の計8基のガンポートが設けられている。
また兵員は、上面に設けられた左右2枚のハッチから身を乗り出して射撃を行うこともできる。

主武装は、フランスのイスパノ・スイザ社製20mm機関砲HS804のライセンス生産型である70口径20mm機関砲M55で、同軸に7.62mm機関銃M86が装着され、砲塔後部右側に9M14マリュートカ対戦車ミサイルの連装発射機が装備されている。
他国の歩兵戦闘車と異なり砲塔上面ハッチにはペリスコープを持たず、砲塔後面の変わった位置にペリスコープが備えられている。

エンジンは、原型のM80歩兵戦闘車がフランスのAMX-10P歩兵戦闘車と同じイスパノ・スイザ社製のHS-115-2 V型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力260hp)を搭載していたのに対して、M80A歩兵戦闘車では、オーストリアのシュタイアー社製のFAMOS 10V003 V型10気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力315hp)に変更されている。

またM80歩兵戦闘車、M80A歩兵戦闘車共に、NBC防護システムが標準装備されている。
派生型としてはM80A KBおよびKC装甲指揮車、30mm連装対空機関砲を装備する全周旋回式砲塔を搭載したM80A SPA対空自走砲、ストレラ10対空ミサイルの自走発射機型、30mm機関砲を装備する2名用砲塔を搭載した改良型のM80A1歩兵戦闘車などがある。


<BVP-M80歩兵戦闘車>

全長:    6.40m
全幅:    2.59m
全高:    2.50m
全備重量: 13.6t
乗員:    3名
兵員:    7名
エンジン:  イスパノ・スイザHS-115-2 4ストロークV型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 260hp/3,000rpm
最大速度: 60km/h(浮航 7.5km/h)
航続距離: 500km
武装:    70口径20mm機関砲M55×1 (400発)
        7.62mm機関銃M86×1 (2,250発)
        9M14マリュートカ対戦車ミサイル連装発射機×1 (4発)
装甲厚:   最大30mm


<BVP-M80A歩兵戦闘車>

全長:    6.42m
全幅:    2.995m
全高:    2.67m
全備重量: 14.0t
乗員:    3名
兵員:    7名
エンジン:  FAMOS 10V003 4ストロークV型10気筒液冷ディーゼル
最大出力: 315hp/2,500rpm
最大速度: 64km/h(浮航 7.8km/h)
航続距離: 500km
武装:    70口径20mm機関砲M55×1 (1,400発)
        7.62mm機関銃M86×1 (2,000発)
        9M14マリュートカ対戦車ミサイル連装発射機×1 (4発)
装甲厚:


<参考文献>

・「世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車輌:1918〜2000」  デルタ出版
・「パンツァー2022年9月号 セルビア陸軍 BVP M-80 IFV」  アルゴノート社
・「パンツァー2019年5月号 セルビア軍の現有装備」  アルゴノート社
・「パンツァー2023年9月号 セルビア軍IFV M-80A」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021〜2022」  アルゴノート社
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社


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