パナール社は世界的ベストセラーとなったAML戦闘偵察車の動力系を流用して、プライヴェート・ヴェンチャーとしてM3装甲車を開発した。 このM3装甲車は1969年に最初の試作車が完成し、その後改良が施された初期生産型が1971年に完成している。 M3装甲車はフランス陸軍には採用されなかったが、世界21カ国に1,000両以上が輸出された。 このM3装甲車の改良型として、やはりパナール社のプライヴェート・ヴェンチャーとして開発されたのが、「バファロウ」(Buffalo:水牛)装甲車である。 1986年初め、パナール社はM3装甲車の後継車両としてバファロウ装甲車を開発することを公表した。 バファロウ装甲車は、イノシシのような独特のスタイルはM3装甲車から変わらないものの、ホイールベースが若干延長され、エンジンがパナール社製の4HD 水平対向4気筒空冷ガソリン・エンジン(出力90hp)から、プジョー社製のPRV V型6気筒液冷ガソリン・エンジン(出力145hp)に換装されている。 エンジンはこの他にも、プジョー社製のXD3T 直列4気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力95hp)を選択することもできる。 また前・後輪の上には新たに張り出しが設けられているが、これは物資の収納用で車体の一部ではなく、地雷などの爆発では外れて車体を守るようになっている。 車体は圧延防弾鋼板の溶接構造で、車内レイアウトは車体前部が操縦室、そのすぐ後ろが機関室となっており、車体後部が兵員室となっている。 M3装甲車と同じく、乗員2名の他に後部兵員室には10名の兵員が搭乗することができるが、ホイールベースが延長されたために居住性は向上している。 車体の左右側面にはそれぞれ前方に開く大型ドアが設けられており、車体後面にも観音開き式の2枚のドアが設けられている。 兵員室の左右側面上部には小ハッチが各3個ずつ設けられており、車内からも射撃できるようになっている。 車体上面には、機関銃など各種の武装を取り付けることができる。 バファロウ装甲車はM3装甲車の採用国を中心に売り込みが行われたが、ベナンが装甲指揮車として1両、ルワンダが18両、そしてコロンビアが警察用として若干採用したのみで、あまり成功したとはいい難い結果となった。 M3装甲車とバファロウ装甲車は1998年までに合計1,222両が生産されたが、現在生産は終了している。 |
<バファロウVTT装甲兵員輸送車> 全長: 4.585m 全幅: 2.40m 全高: 2.00m 全備重量: 6.6t 乗員: 2名 兵員: 10名 エンジン: プジョーPRV V型6気筒液冷ガソリン 最大出力: 145hp/5,500rpm 最大速度: 90km/h 航続距離: 600km 武装: 7.62mm機関銃×1 装甲厚: 8〜12mm |
<参考文献> ・「パンツァー2014年7月号 フランスのミゼット装甲車 AMLシリーズ」 柘植優介 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2002年7月号 パナールM3装甲兵車」 水上眞澄 著 アルゴノート社 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー ・「新・世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の軍用4WDカタログ」 三修社 |