1966年以来使用されてきたBTR-60PB装甲兵員輸送車の欠点を是正するため1972年に制式採用され、1976年から生産が開始されたのがBTR-70(GAZ-4905)装甲兵員輸送車である。 本車の開発と生産を担当したのはBTR-60装甲兵員輸送車シリーズと同じゴーリキー自動車工場(GAZ)で、8輪式の船型車体に14.5mm重機関銃KPVTと7.62mm機関銃PKTを同軸装備する全周旋回式砲塔を搭載する等、基本的にはBTR-60PB装甲兵員輸送車と同様であったが、 1.車体上部のハッチからしか乗降できなかった欠点を改めるため、第2・第3車軸の間の車体側面下部に3角形 の前開き式の乗降用ハッチを設けた。 2.搭乗兵員の乗車戦闘を容易にするため、視察用ブロックの増設等視察装置の改善を行った。 3.対空および高所目標への射撃を可能とするため、14.5mm重機関銃KPVTおよび同軸機関銃の仰角を+60度 まで増やした。 等の3点に渡って改善措置が採られた。 車体は全くの新規設計でBTR-60PB装甲兵員輸送車より20cmほど全高が低くなり、正面形状もよりスマートなデザインとされた。 しかし、ガソリン・エンジン2基でそれぞれ第1・第3車軸と第2・第4車軸を駆動させるBTR-60P装甲兵員輸送車以来の方式は踏襲されており、エンジン不調と整備面の面倒さは解決されなかった上、アフガニスタン戦線ではガソリン燃料が簡単に引火・爆発するという欠点が露呈され、将兵からBTR-60PB装甲兵員輸送車ともども「コレースヌィ・グロブ」(車輪付き墓標)という有り難くない仇名を頂戴してしまった。 また、第2・第3車軸間の乗降用ハッチも装備を身に付けた兵員の出入りにはあまりに狭すぎ、抜本的な改善とはならなかった。 以上の結果、BTR-70装甲兵員輸送車の生産は1980年代初め頃に打ち切られ、より根本的な改善が図られたBTR-80装甲兵員輸送車シリーズにバトンタッチすることとなった。 BTR-70装甲兵員輸送車は輸出はされなかったが、今日もロシア陸軍で運用が続いている。 |
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<BTR-70装甲兵員輸送車> 全長: 7.535m 全幅: 2.80m 全高: 2.235m 全備重量: 11.5t 乗員: 3名 兵員: 7名 エンジン: ZMZ-4905 4ストロークV型8気筒液冷ガソリン×2 最大出力: 240hp/3,200rpm 最大速度: 80km/h(浮航 10km/h) 航続距離: 600km 武装: 14.5mm重機関銃KPVT×1 (500発) 7.62mm機関銃PKT×1 (2,000発) 装甲厚: 7〜10mm |
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<参考文献> ・「パンツァー2000年8月号 ソ連・ロシア装甲車史(最終回) BMD・BTR-70/80/90シリーズ」 古是三春 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2011年3月号 BTR-60/70/80装甲兵車」 アルゴノート社 ・「パンツァー2022年2月号 ARMY 2021 (2)」 アルゴノート社 ・「ロシア軍車輌写真集」 古是三春/真出好一 共著 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2020年5月号 赤の広場のソ連戦闘車輌写真集(5)」 山本敬一 著 ガリレオ出版 ・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」 ガリレオ出版 ・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」 デルタ出版 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー |
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