BRDM-1装甲偵察車は、ゴーリキー自動車工場(GAZ)においてBTR-40装甲兵員輸送車をベースに開発された偵察用装甲車で、当初は「BTR-40P」とも呼ばれていた。 本車は主任設計技師V.K.ルブツォフのイニシアチブにより1954年に開発が開始され、1957年にソ連軍に制式採用された。 ちなみに「BRDM」とは、”Bronirovannaya Razveduivatel' no Dozornaya Mashina”(装甲偵察巡回車)の頭文字を採ったものである。 本車は、BTR-40装甲兵員輸送車をベースにしたといいながら全くその内容は一新されており、似ても似付かぬスマートな外見はもとよりユニークな機能が盛り込まれている。 まず偵察巡回車両として不可欠と考えられる障害突破能力の向上のために、悪路克服用の昇降式補助輪と浮航性能の2つの機能が加えられている。 この補助輪は他の装輪式車両に例の無いもので、前輪と後輪の中間のホイールベース部分に小型ゴムタイア付き転輪が左右にそれぞれ2個ずつ収められている。 軟弱地を踏破する際にはこれが引き下げられて、前・後輪と共に駆動されるようになっている。 駆動は、補助輪用に設けられた1本の車軸からチェインによって伝達される。 浮航は他のソ連軍装甲車両でも採用されているウォーター・ジェット方式で、浮航の際には車体前部の波切り板が立てられる。 エンジンは、BTR-40装甲兵員輸送車シリーズと同系統のGAZ-40P 直列6気筒液冷ガソリン・エンジン(出力93hp)で、重さ5.6tの車体で路上最大速度90km/hを発揮させる。 車体の装甲厚は5〜12mmで避弾経始が考慮されたデザインとなっており、7.62mm機関銃弾ならびに迫撃砲弾の破片程度には抗堪できる。 乗員は2〜3名で、偵察要員をさらに2名程度は搭乗させることが可能である。 固有武装としては7.62mm機関銃SGMB(またはPKT)を1挺搭載し、兵員室上面のハッチを開けて折り畳み式ピントル・マウントに載せて操作する。 その他に兵員室左右側面に各2カ所ずつ、自動小銃発射用のガンポートが設けられている。 BRDM-1装甲偵察車は1966年までに約1万両が生産され、1970年代いっぱいまではソ連軍の第一線部隊で姿が見られた。 また本車は、3M6対戦車ミサイル(NATOコードネーム:AT-1スナッパー)の3連装発射機を搭載する2P27自走対戦車ミサイルや、3M11対戦車ミサイル(NATOコードネーム:AT-2スワッター)の4連装発射機を搭載する2P32自走対戦車ミサイル、9M14マリュートカ対戦車ミサイル(NATOコードネーム:AT-3サガー)の6連装発射機を搭載する9P110自走対戦車ミサイルのベース車台にも用いられている。 ミサイル発射機は昇降式で未使用時は兵員室内に収納され、上面は装甲カバーで塞がれる。 |
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<BRDM-1装甲偵察車> 全長: 5.66m 全幅: 2.17m 全高: 1.87m 全備重量: 5.6t 乗員: 5名 エンジン: GAZ-40P 直列6気筒液冷ガソリン 最大出力: 93hp/3,400rpm 最大速度: 90km/h(浮航 9km/h) 航続距離: 500km 武装: 7.62mm機関銃SGMBまたはPKT×1 (1,250発) 装甲厚: 5〜12mm |
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<参考文献> ・「グランドパワー2020年4月号 赤の広場のソ連戦闘車輌写真集(4)」 山本敬一 著 ガリレオ出版 ・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」 デルタ出版 ・「パンツァー2000年3月号 ソ連・ロシア装甲車史(8) BRDMの登場」 古是三春 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2016年6月号 旧ソ連の隠れた名車 BRDMシリーズ」 柘植優介 著 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「世界の戦車・装甲車」 竹内昭 著 学研 ・「世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 |
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