BOV装甲車は、旧ユーゴスラヴィア連邦が1980年代初めに軍と警察用に開発した軽便な4×4型装輪式装甲車である。 1981年に実用試験が開始され1983年に初公開されており、新ユーゴ、スロヴェニア、クロアチアなどの旧ユーゴ連邦諸国の軍と警察でのみ使用されている。 基本型の兵員輸送車型は軍用が「BOV-VP」、警察用が「BOV-M」と呼ばれており、2名の乗員の他、兵員室に8名の完全武装兵員を搭乗させることができる。 車体は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、避弾経始を考慮した船型形状になっているが浮航性能は無い。 既存の車両のシャシーを使用せずオリジナルに開発された走行システムは、心臓としてドイツのドゥーツ社製のF6L413F 直列6気筒空冷ディーゼル・エンジン(出力148hp)を搭載している。 変速機はマニュアル式で、前進5段/後進1段である。 車内レイアウトは車体前部が操縦室、車体中央部が兵員室、車体後部が機関室となっている。 操縦室内には左側に操縦手、右側に車長が位置し、天井にはそれぞれに後ろ開き式のアクセスハッチが設けられている。 操縦室前面と側面の窓は、防弾ガラスの上にステンレス製の丈夫なメッシュを被せた形になっている。 また操縦室左右側面には各3基ずつ、発煙弾発射機が装備されている。 兵員室上部には、7.62mm機関銃M86とサーチライトを外装式に装備した全周旋回式マウントが設置されている。 また兵員室左右側面に各3基ずつ、および車長席前面右側に1基の計7基、ガンポートと視察用ブロックが設けられており、車内から射撃を行うことが可能となっている。 なお兵員は、車体中央部左右側面のアクセスドアから乗降する。 BOV装甲車の派生型には、ユーゴが独自に半自動誘導式に改良した9M14Mマリュートカ対戦車ミサイルの3連装発射機2基を全周旋回式マウントに装備したBOV-1自走対戦車ミサイル、フランスのイスパノ・スイザ社製の20mm対空機関砲HS504のライセンス生産型である20mm対空機関砲M55を、3連装で全周旋回式砲塔に装備したBOV-3対空自走砲、1985年に公表された、30mm対空機関砲を連装で装備する全周旋回式砲塔を搭載したBOV-30対空自走砲などがある。 こうした自走砲型では車高を低くするために兵員輸送車型の車体上部をカットしており、車体中央部左右側面のアクセスドアも設けられていない。 |
<BOV-VP装甲兵員輸送車> 全長: 5.70m 全幅: 2.534m 全高: 2.335m 全備重量: 5.7t 乗員: 2名 兵員: 8名 エンジン: ドゥーツF6L413F 直列6気筒空冷ディーゼル 最大出力: 148hp/2,650rpm 最大速度: 95km/h 航続距離: 500〜800km 武装: 7.62mm機関銃M86×1 (2,000発) 装甲厚: 最大8mm |
<参考文献> ・「パンツァー2019年5月号 セルビア軍の現有装備」 アルゴノート社 ・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」 デルタ出版 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー |