●開発 BMD-4空挺戦闘車はBMD-3空挺戦闘車の火力を強化するために、BMP-3歩兵戦闘車と同じ武装を装備するトゥーラの制御システム開発設計局(KBP)製の「バフチャー(Bakhcha:スイカ)U」砲塔を搭載したタイプであり、「BMD-3M」とも呼ばれる。 本車の開発は、一連のBMD空挺戦闘車シリーズの開発を担当したヴォルゴグラード・トラクター工場(VTZ)設計局が手掛けており、1990年代後期に設計が完了したものと見られている。 BMD-4空挺戦闘車は旧式化したBMD-1/BMD-2空挺戦闘車を置き換える目的で開発されたもので、2004年の終わりから部隊配備が開始されているが、ロシア政府の財政難等で2010年に一旦調達が中止された。 しかし2012年末に調達が再開されることになり、2020年までに最低1,000両が生産される予定になっている。 なお2005年にVTZが経営破綻したため、クルガン機械工場(KMZ)設計局の手で2008年に改良型のBMD-4M空挺戦闘車が開発されており、現在はこちらのタイプに生産が移行している。 |
|||||
●攻撃力 BMD-4空挺戦闘車は空挺部隊用の車両としては異例の重武装で、砲塔前面に100mm低圧ライフル砲2A70と30mm機関砲2A72を同軸に装備し、他にも7.62mm機関銃PKTと5.45mm軽機関銃RPKS-74を各1挺ずつ、さらに着脱式の9P135M対戦車ミサイル発射機も装備している。 100mm低圧ライフル砲2A70は自動装填装置を備えており、10〜12発/分の発射速度でHE-FRAG(破片効果榴弾)を発射することが可能である。 またこの砲は、9M117M1「アルカーン」(Arkan:投げ縄)対戦車ミサイルを発射することも可能である。 9M117M1対戦車ミサイルはERA(爆発反応装甲)対策として二重弾頭を備えており、最大有効射程6,000m、射距離に関わらず750mm厚のRHA(均質圧延装甲板)を穿孔可能である。 BMD-4空挺戦闘車は100mm砲弾を34発、9M117M1対戦車ミサイルを4発搭載する。 また9P135M対戦車ミサイル発射機を砲塔上面に取り付けることができるが、この発射機からは9M111M「ファゴットM」対戦車ミサイルと、より大型の9M113M「コンクールス(Konkurs:競技)M」対戦車ミサイルを発射することが可能である。 9M111M対戦車ミサイルは最大有効射程2,500m、装甲穿孔力550mm、9M113M対戦車ミサイルは最大有効射程4,000m、装甲穿孔力750mmとなっている。 本車は、9M113M対戦車ミサイルを4発搭載している。 一方、30mm機関砲2A72はBMD-3空挺戦闘車に装備されている30mm機関砲2A42の改良型で、APDS(装弾筒付徹甲弾)を使用した場合砲口初速1,120m/秒、射距離2,000mで傾斜角60度の22mm厚RHAを貫徹可能である。 BMD-4空挺戦闘車は30mm機関砲弾を500発(内255発がAPDS、245発がHE)搭載する。 |
|||||
●防御力 前述のようにBMD-4空挺戦闘車は非常に強力な武装を備えているが、その反面装甲防御力に関しては、小火器弾の直撃や榴弾の破片に耐えられる程度の貧弱な防御力しか備えていない。 これは本車が空挺部隊用の車両であるため、輸送機からパラシュート降下できるように軽量に設計しなければならなかったためである。 BMD-4空挺戦闘車の車体は基本的にBMD-3空挺戦闘車と同じもので、防弾アルミ板の全溶接構造となっている。 車内レイアウトは車体最前部が操縦室、その後方が全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室、戦闘室の後方が兵員室、車体最後部がエンジンや変速機を収めた機関室となっている。 固有の乗員は操縦室内の操縦手と戦闘室内の車長、砲手の3名で、兵員室内には5名の完全武装歩兵を収容することが可能である。 また本車は、NBC防護システムや自動消火システムを装備している。 改良型のBMD-4M空挺戦闘車では装甲材質の改善が図られており、重量を増加させずに防御力を向上させている。 |
|||||
●機動力 BMD-4空挺戦闘車の足周りは片側5個の転輪と片側4個の上部支持輪、後方の起動輪と前方の誘導輪で構成されている。 サスペンションは一連のBMD空挺戦闘車シリーズと同じく油気圧方式を採用しており、サスペンションを上下させて車高を変更することが可能である。 本車はBMD-3空挺戦闘車と同じく乗員を乗せたままパラシュート降下することが可能で、空中投下の際には着地時の衝撃によるサスペンションの破損を防ぐために、油気圧式サスペンションのアームを畳むことによって車底と転輪接地部を水平にして投下される。 BMD-4空挺戦闘車のエンジンは、BMD-3空挺戦闘車と同じくチェリャビンスク・トラクター工場(ChTZ)製の2V-06-2 V型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(出力450hp)が搭載されている。 このエンジンによって本車は路上最大速度70km/h、路上航続距離500kmの機動性能を発揮する。 KMZ設計局によって開発された改良型のBMD-4M空挺戦闘車では、エンジンがBMP-3歩兵戦闘車と同じUTD-29M V型10気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力500hp)に換装され、出力/重量比が向上している。 また本車は浮航性能を備えており、車体後部に設けられたウォーター・ジェットにより水上を10km/hの速度で航行することが可能である。 |
|||||
<BMD-4空挺戦闘車> 全長: 6.36m 車体長: 6.10m 全幅: 3.11m 全高: 2.45m 全備重量: 13.6t 乗員: 3名 兵員: 5名 エンジン: 2V-06-2 V型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 450hp 最大速度: 70km/h(浮航 10km/h) 航続距離: 500km 武装: 100mm低圧ライフル砲2A70×1 (38発) 30mm機関砲2A72×1 (500発) 7.62mm機関銃PKT×1 (2,000発) 5.45mm軽機関銃RPKS-74×1 (2,160発) 9P135M対戦車誘導ミサイル発射機×1 (4発) 9K116-3対戦車誘導ミサイル・システム 装甲厚: |
|||||
<BMD-4M空挺戦闘車> 全長: 6.36m 車体長: 6.10m 全幅: 3.11m 全高: 2.45m 全備重量: 13.6t 乗員: 3名 兵員: 5名 エンジン: UTD-29M V型10気筒液冷ディーゼル 最大出力: 500hp 最大速度: 70km/h(浮航 10km/h) 航続距離: 500km 武装: 100mm低圧ライフル砲2A70×1 (38発) 30mm機関砲2A72×1 (500発) 7.62mm機関銃PKT×1 (2,000発) 5.45mm軽機関銃RPKS-74×1 (2,160発) 9P135M対戦車誘導ミサイル発射機×1 (4発) 9K116-3対戦車誘導ミサイル・システム 装甲厚: |
|||||
<参考文献> ・「パンツァー2017年8月号 ロシア空挺部隊のニューカマー BMD-4M & BTR-MDM」 アルゴノート社 ・「パンツァー2011年6月号 ロシア陸軍 冷戦後の変化と現状」 鹿内誠 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2014年9月号 ロシア軍空挺隊の歴史と現状」 小泉悠 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2010年10月号 ソ連空挺戦闘車輌の系譜」 竹内修 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2004年12月号 海外ニュース」 アルゴノート社 ・「ウォーマシン・レポート48 ニュールック ロシア軍AFV」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「世界の戦車パーフェクトBOOK」 コスミック出版 |
|||||