BA-27中装甲車
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BA-27中装甲車
BA-27M中装甲車
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+概要
ソヴィエト連邦成立後、最初の国産装甲車として企画されたのがこの「BA-27」(Broneavtomobil 27:27型装甲車)である。
本車の開発はモスクワのAMO(Avtomobilnoe Moskovskoe Obshestvo:モスクワ自動車企業体)と、レニングラード(現サンクトペテルブルク)のイジョラ工場が共同で行い、E.N.ヴァジネフスキーとB.D.ストロカーノフの両技師が設計を担当した。
BA-27中装甲車は、イタリアのフィアット社からライセンス生産権を購入してAMOで量産中であったAMO-F-15 4輪トラックをベースに、イジョラ工場で製作した装甲ボディを載せ、当時大量生産が図られつつあったT-18軽戦車と同じ砲塔(フランスのオチキス社製の21口径37mm戦車砲SH-18(ライセンス生産品)と、国産の7.62mm空冷機関銃DTを1門ずつ装備)を搭載したものである。
本車は、真の意味でソ連がオリジナルで送り出した初の国産装甲車というべきものであり、まさに戦車並みの火力を持つ中装甲車であったが、これは整備に手が掛かることを嫌う辺境地区(極東など)のソ連軍部隊に装備することや、内務省の治安維持任務に運用する上で戦車よりも手軽な兵器とすることを狙ったものであった。
しかし装甲厚はトラック・シャシーに過度の負担を掛けないため、戦車の約半分である8mm程度に抑えられた。
BA-27中装甲車は1928年にソ連軍に制式採用され、1928〜31年の間に約100両が生産された。
しかし、ソ連軍が本格的な機械化部隊の創設と運用演習を開始した1930年代初めには、BA-27中装甲車のベースとなったトラックが旧型で路上最大速度が30km/hに過ぎず、4輪の走行装置も路外踏破性能が著しく劣るなど機動力が不充分であることが指摘された。
そこで本車の機動性能の抜本的改善を目指して、ベース車台を新たに導入したアメリカ製のフォード-AA、またはフォード・ティムケン6輪トラックとしたBA-27M中装甲車の開発が進められた。
BA-27M中装甲車で導入されたフォード自動車製のトラック・シャシーおよび動力機構は、旧型のフィアット社製トラックに比べてずっと洗練されていたため、エンジンは同じもの(GAZ-MM
直列4気筒液冷ガソリン・エンジン/出力40hp)を使用しているのに路上最大速度は48km/hとなり、6輪×4輪駆動により路外踏破性能も改善された。
また燃料搭載量を倍にしたことにより、路上航続距離もBA-27中装甲車の150km程度に対して300〜400kmと大きく向上している。
武装や基本的な装甲厚などは変化が無いが、乗員は1名増えて4名となっている。
BA-27M中装甲車の開発と生産(BA-27中装甲車からの改修も含む)は、1931年より第2車両補修工場(RembazaN 2)で行われた。
BA-27M中装甲車の最終的な生産数は不明であるが、一部の車両がモンゴル人民共和国軍に供与され、1939年5〜9月にかけて外モンゴル-満州国境でソ連軍と日本軍が武力衝突したハルハ川戦役(ノモンハン事件)で使用された他、1939〜40年のソ-フィン戦争(冬戦争)では、ソ連軍が投入したBA-27M中装甲車がフィンランド軍に鹵獲されている。
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<BA-27中装甲車>
全長: 4.40m
全幅: 1.71m
全高: 2.52m
全備重量: 4.4t
乗員: 4名
エンジン: GAZ-MM 4ストローク直列4気筒液冷ガソリン
最大出力: 40hp
最大速度: 30km/h
航続距離: 150km
武装: 21口径37mm戦車砲SH-18×1 (40発)
7.62mm機関銃DT×1 (2,016発)
装甲厚: 4〜8mm
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<BA-27M中装甲車>
全長: 4.83m
全幅: 1.93m
全高: 2.54m
全備重量: 4.5t
乗員: 4名
エンジン: GAZ-MM 4ストローク直列4気筒液冷ガソリン
最大出力: 40hp
最大速度: 48km/h
航続距離: 300〜400km
武装: 21口径37mm戦車砲SH-18×1 (40発)
7.62mm機関銃DT×1 (2,016発)
装甲厚: 4〜8mm
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<参考文献>
・「パンツァー1999年10月号 ソ連・ロシア装甲車史(3) 装甲車の黄金時代(1)」 古是三春 著 アルゴノート社
・「パンツァー2007年7/8月号 1920〜30年代におけるソ連の6輪装甲車」 前河原雄太 著 アルゴノート社
・「パンツァー2001年10月号 ソ連の6輪装甲自動車」 真出好一 著 アルゴノート社
・「グランドパワー2020年1月号 赤の広場のソ連戦闘車輌写真集(1)」 山本敬一 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2005年1月号 第2次大戦のソ連軍装甲自動車(1)」 古是三春 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2021年6月号 ソ連軍装甲自動車 1905〜1938」 大村晴 著 ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」 デルタ出版
・「図解・ソ連戦車軍団」 齋木伸生 著 並木書房
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