| BA-20軽装甲車
 
 
 | 
    
      | 
  
 
 | 
    
      | +概要 
      BA-20軽装甲車は、レニングラード(現サンクトペテルブルク)のイジョラ冶金工場で、1932年から生産されてきたFAI軽装甲車に代わるソ連軍の標準偵察用装甲車として、ヴィクサ冶金工場が1936年に開発した4×2型の装輪式装甲車である。
 
 これは、それまで装甲車生産の主力を担ってきたイジョラ冶金工場が、戦車の生産に多量の装甲板を供給する必要が生まれたため、イジョラ冶金工場の生産力を中〜重装甲車にシフトさせ、軽装甲車の生産を他工場に分担させることになったためである。
 
 BA-20は、FAIとほぼ同様の仕様を持つ軽装甲車であったが、FAI軽装甲車がアメリカ製のフォード・A 4×2トラックを国産化したGAZ-Aトラックのシャシーをベースとしていたのに対し、BA-20軽装甲車はGAZ-Aトラックの改良型である、GAZ-M1トラックのシャシーをベースとして用いていた。
 
 頑丈なシャシーと、出力が向上したGAZ-M1 直列4気筒液冷ガソリン・エンジン(50hp)に依拠して、BA-20軽装甲車の車体と砲塔の基本的な装甲厚は、200m以上の中距離で通常口径の重機関銃弾(徹甲弾)に耐えられるよう10mmに増厚されていた(従前のFAI軽装甲車は6mm)。
 また、重量増加を極力抑えるため無駄な突起や装甲板の面積を省くと共に、避弾経始を考慮してデザイン上の工夫(装甲板の傾斜や流線型化)が図られていた。
 
 そのためBA-20軽装甲車は、クラシックな中にも流麗なスタイルを持つユニークな装甲車となった。
 しかし、駆動方式は4×2で通常の貨物トラックと変わりが無く、路外走行性能には限界があった。
 また本車は、ソ連軍が使用する装甲車としては初めて無線機を標準装備しており、戦闘室の上部を取り巻くように鉢巻状のアンテナを取り付けていた。
 
 1938年には搭載無線機が改良された上、専門の無線手を乗車させて乗員が3名となったBA-20M軽装甲車が登場した。
 これは新規に生産されたものよりも、就役中のBA-20軽装甲車を改修したものの方が多い。
 BA-20M軽装甲車では、アンテナは通常のホイップ・アンテナに変更されている。
 
 またBA-20軽装甲車では、FAI軽装甲車と同じく周囲の装甲が垂直な砲塔を搭載していたが、BA-20M軽装甲車では避弾経始を考慮して、傾斜装甲を採り入れた砲塔に変更されている。
 BA-20軽装甲車の派生型としては、鉄道路線の警備用に使用するため、車輪に代えて鉄道用の鉄輪を装着したBA-20ZhD軽鉄道偵察車が少数生産されている。
 
 BA-20軽装甲車シリーズは1939年までに合計で2,056両が生産されており、その内、BA-20軽装甲車からの改修を含むBA-20M軽装甲車の各派生型の数は2,013両である。
 これらは1939年のハルハ川戦役(ノモンハン事件)に投入された他、1941年6月に始まった独ソ戦(大祖国戦争)にも多数が投入され、1942年頃まで前線に姿が見られた。
 
 なおソ-フィン戦争(冬戦争および継続戦争)の際、およそ20両のFAI/BA-20軽装甲車シリーズがフィンランド軍によって鹵獲され、大戦を通して同軍の貴重な装甲戦力の一部として使用された。
 フィンランド軍最後のBA-20M軽装甲車が退役したのは、1957年であった。
 
 
 | 
    
      | <BA-20軽装甲車>
 
 全長:    4.10m
 全幅:    1.80m
 全高:    2.30m
 全備重量: 2.3t
 乗員:    2名
 エンジン:  GAZ-M1 4ストローク直列4気筒液冷ガソリン
 最大出力: 50hp/2,800rpm
 最大速度: 90km/h
 航続距離: 350km
 武装:    7.62mm機関銃DT×1 (1,386発)
 装甲厚:   3〜10mm
 
 
 | 
    
      | <BA-20M軽装甲車>
 
 全長:    4.31m
 全幅:    1.75m
 全高:    2.13m
 全備重量: 2.52t
 乗員:    3名
 エンジン:  GAZ-M1 4ストローク直列4気筒液冷ガソリン
 最大出力: 50hp/2,800rpm
 最大速度: 90km/h
 航続距離: 450km
 武装:    7.62mm機関銃DT×1 (1,386発)
 装甲厚:   3〜10mm
 
 
 | 
    
      | <参考文献>
 
 ・「パンツァー1999年12月号 ソ連・ロシア装甲車史(5) 装甲車の黄金時代(3)」 古是三春 著  アルゴノート社
 ・「パンツァー2021年2月号 フィンランド戦争写真集(2) 冬戦争(1)」 後藤仁/井坂重蔵 共著  アルゴノート社
 ・「パンツァー2025年12月号 ソ連・ロシア装甲車史(14)」 宮永忠将 著  アルゴノート社
 ・「グランドパワー2020年1月号 赤の広場のソ連戦闘車輌写真集(1)」 山本敬一 著  ガリレオ出版
 ・「グランドパワー2020年2月号 赤の広場のソ連戦闘車輌写真集(2)」 山本敬一 著  ガリレオ出版
 ・「グランドパワー2005年2月号 第2次大戦のソ連軍装甲自動車(2)」 古是三春 著  ガリレオ出版
 ・「グランドパワー2021年6月号 ソ連軍装甲自動車 1905〜1938」 大村晴 著  ガリレオ出版
 ・「グランドパワー2019年10月号 フィンランド戦車発達史」 齋木伸生 著  ガリレオ出版
 ・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」  デルタ出版
 ・「ビジュアルガイド WW II戦車(1) 電撃戦」 川畑英毅 著  コーエー
 ・「写真集 フィンランド軍戦車発達史 前編」 齋木伸生 著  芬蘭堂
 ・「図解・ソ連戦車軍団」 齋木伸生 著  並木書房
 
 
 | 
    
      | 関連商品 |