ATMOS 2000 155mm自走榴弾砲 
       
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      +開発
       
       
      「ATMOS 2000」(Autonomous Truck Mounted howitzer System 2000:2000年代型自動トラック搭載式榴弾砲システム)は、ヨクネアムのソルタム・システムズ社が1990年代末から自己資金で開発に着手した、装輪式の155mm自走榴弾砲である。 
      ソルタム社は1980年代に空輸可能な軽量装軌式車台に、同社製の155mm榴弾砲を限定旋回式に搭載したラスカル自走榴弾砲を自己資金で開発しており、これはイスラエル陸軍に100両程度が採用された。 
       
      このラスカルの成功に意を強くしたソルタム社は、同様のコンセプトで軽量な6×6型の装輪式トラックの車台をベースに、155mm榴弾砲を限定旋回式に搭載する後継自走砲「ATMOS
      2000」を開発したのである。 
      ATMOS 2000はラスカルと同様に緊急展開部隊向けとして、空輸性に優れる自走砲を求める顧客のニーズに応えるだけでなく、安価な装輪式トラックをベース車台とすることで、高価な装軌式の自走榴弾砲を導入するのが困難な途上国のニーズも狙っている。 
       
      もちろん輸出のみならず、ラスカルと同様にイスラエル陸軍での採用も狙っており、同軍向けに早くからデモンストレイションを行っていた。 
      ソルタム社は1999年の終わり頃からATMOS 2000の存在を漏らしていたが、2001年の終わり頃になって本車の詳細について公表した。 
       
      そして同時期から、イスラエル国内の広範囲で1,000回を超える射撃試験を実施しており、2003年中頃には未公表の外部顧客と交渉し、500万ドル相当のATMOS
      2000を輸出することに成功している。 
      続いて2004年終わり頃から、主砲をソルタム社製の39口径155mm榴弾砲M71としたタイプのATMOS 2000を用いて、イスラエル陸軍の手で広範囲に渡って評価試験が実施された。 
       
      2023年の時点で、ATMOS 2000はタイ(42両)、デンマーク(19両)、カメルーン(18両)、フィリピン(12両)、ウガンダ(6両)、ザンビア(6両)、アゼルバイジャン(6両)、ボツワナ(5両)、ルワンダ(3両)の9カ国に輸出されている他、ポーランドが「AHSクリル」の呼称で本車のライセンス生産を行うことが決定しており、ルーマニアもソルタム社の技術支援を受けて、ATMOS
      2000をベースにATROM自走榴弾砲の開発を進めており、現在試作車3両を用いて試験を行っている。 
       
      またソルタム社はATMOS 2000の改良型として、ベース車台をアメリカのオシュコシュ社製の8×8型装輪式トラックHEMTTに変更し、射撃プラットフォームとしての安定性と主砲弾薬の搭載量を向上させた「ATMOSアイアンセイバー」を開発しており、アメリカ陸軍に対して採用を提案している。 
      同車は52口径155mm榴弾砲を搭載し、陣地侵入から射撃開始まで30秒で行い、ロケット補助推進弾を用いた場合最大射程が65kmに達するという。 
       
      
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      +構造
       
       
      ATMOS 2000は顧客のニーズに柔軟に応じられるよう、専用のベース車台を必要としない設計となっており、様々な6×6型の装輪式トラックをベース車台として利用できるようになっている。 
      ただし、本車の運用には最低4名(車長、操縦手、操砲要員2名)の人員が必要なため、4名の乗員を収容できる広い操縦室を備える車両が望ましい。 
       
      ちなみにATMOS 2000の標準仕様では、チェコのタトラ社製のロングキャブ版6×6トラックがベース車台として用いられており、操縦室内に最大6名の乗員を収容できる。 
      ATMOS 2000は主砲もソルタム社製の155mm榴弾砲だけでなく、顧客の要望により39〜52口径長の様々な砲に対応できるシステムになっている。 
       
      またNATO規格の155mm榴弾砲だけでなく、旧ソ連製の38口径122mm榴弾砲D-30や、52口径130mm加農砲M-46などを搭載したタイプの試作車も製作されている。 
      ATMOS 2000はソルタム社製の52口径155mm榴弾砲を搭載した場合、旧式のM107榴弾を用いて最大射程24.5km、L15高性能榴弾を用いて最大射程30kmの性能を発揮する。 
       
      さらにベースブリード榴弾を使用した場合には、最大射程は41kmに達する。 
      砲尾のメカニズムは水平のスライド式で、自己密封式の金属製閉塞リングと一緒に右側に自動的に開かれる。 
      緩衝装置は、油気圧式の複座機の付いた油圧のシリンダーである。 
      砲尾の後座長は850〜1,100mmであり、2つの空気式の平衡装置を持つ。 
      砲の俯仰および旋回は、全て油圧で電子制御される。 
       
      砲の照準、装填補助装置、駐鋤は油圧パワーパックで駆動される。 
      ATMOS 2000は、車体側面に設けられている弾薬ラックに最大27発の155mm砲弾とその装薬を収納し、4〜6名の操砲要員により主砲の射撃が制御される。 
      本車は他の多くの装輪式自走榴弾砲と同様、装軌式の自走榴弾砲に比べて軽量で車体が細長く、射撃プラットフォームとしての安定性が劣っているため、主砲の旋回角に制限が設けられている。 
       
      ソルタム社製の155mm榴弾砲を搭載し、タトラ社製6×6トラックをベースとする標準仕様のATMOS 2000の場合、主砲の旋回角は左右各25度ずつ、俯仰角は0〜+70度となっている。 
      またATMOS 2000は車体重量が21tと軽量なため、主砲射撃時の反動を受け止めるのに、車体後部に設けられている駐鋤のアシストを必要とする。 
       
      旧式な自走榴弾砲に多く用いられているドーザー型の駐鋤の場合、舗装路面上では駐鋤を使用することができないが、本車の駐鋤は広い接地面積を持つ昇降式のタイプのため、舗装路面上でも射撃が可能である。 
      またATMOS 2000は、主砲発射速度の向上と操砲要員の負担軽減のために、射撃時の反動を利用した半自動装填装置と装填補助装置を搭載しており、主砲の発射速度は4〜9発/分とかなり速い。 
       
      
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      <ATMOS 2000 155mm自走榴弾砲(タトラ社製6×6トラック仕様)> 
       
      全長:    9.50m(52口径砲搭載時) 
      全幅:    2.55m 
      全高:    3.24m 
      全備重量: 21.0t 
      乗員:    4〜6名 
      エンジン:  タトラ 19リットル 4ストロークV型12気筒空冷ディーゼル 
      最大出力: 315hp 
      最大速度: 80km/h 
      航続距離: 1,000km 
      武装:    39〜52口径155mm榴弾砲×1 (27発) 
      装甲厚:    
       
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      <参考文献> 
       
      ・「パンツァー2022年3月号 特集 装輪自走砲の今」 荒木雅也/毒島刀也 共著  アルゴノート社 
      ・「パンツァー2024年8月号 フィリピン陸軍の新型自走砲 ATMOS 155mm/52」  アルゴノート社 
      ・「パンツァー2023年3月号 フィリピン軍のニューカマー サブラ & ATMOS」  アルゴノート社 
      ・「パンツァー2018年8月号 ヴェールを脱いだ装輪155mmりゅう弾砲」  アルゴノート社 
      ・「パンツァー2002年7月号 海外ニュース」  アルゴノート社 
      ・「パンツァー2025年4月号 軍事ニュース」 荒木雅也 著  アルゴノート社 
      ・「戦闘車輌大百科」  アルゴノート社 
      ・「世界の戦車パーフェクトBOOK 最新版」  コスミック出版 
      ・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」  ガリレオ出版 
       
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