「ASRAD」(Atlas Short Range Air Defence System:アトラス短射程防空システム)は、ブレーメンのSTNアトラス・エレクトロニク社(現ラインメタル・ディフェンス・エレクトロニクス社)と、カッセルのクラウス・マッファイ・ヴェクマン社によって開発された軽機械化短射程防空システムである。 ちなみに「ASRAD」というのは輸出用の名称で、ドイツ軍では「LeFlaSys(Leichtes Flugabwehrsystem) Ozelot」(軽防空システム・オツェロット)と呼ばれる。 ASRADはMaK社(現ラインメタル・ラントジステーム社)が開発したヴィーゼル2空挺戦闘車の車体をベースに、指揮・統制・通信・情報センターのような軍にとっての生命線の防衛、対空防衛、移動中あるいは交戦地域内で、低空飛行中の地上攻撃機や攻撃ヘリコプターの脅威に晒されている部隊などへの防御を可能にする機能を備えている。 小型軽量なヴィーゼル2空挺戦闘車の車体をベースにしているため、本システムはCH-53ヘリコプターによる航空輸送が可能である。 ASRADの小隊は通常、1両の戦闘指揮車と5〜8両の自走発射機で構成される。 自走発射機はアメリカ製のスティンガー、イギリス製のスターバースト、フランス製のミストラル、スウェーデン製のRBS70 Mk.2、ロシア製のイグラなど様々な対空ミサイルを4連装で装備する。 目標の捕捉は、戦闘指揮車が装備するスウェーデンのエリクソン・マイクロウェイブ・システムズ社(現サーブ・マイクロウェイブ・システムズ社)製の「HARD」(Helicopter and Aircraft Radio Detection:ヘリコプター・航空機ラジオ探知)3次元捜索/追跡レーダー(探知距離20km)からの無線データ・リンクを通じて行うか、または自走発射機が装備するイギリスのタレス・オプトロニクス社製のパッシブ赤外線探知追跡システム付き光学防空装置によって行う。 また目標追跡のために自走発射機は安定化前方監視赤外線センサー、テレビ、レーザー測遠機と同時にデュアルモード追跡装置を備えている。 ドイツ陸軍は2000年にASRADの戦闘指揮車10両と自走発射機50両を発注し、2001年6月に最初のASRAD小隊を受領し2004年末までには配備を完了した。 またフィンランド陸軍も2002年8月に、ダイムラー・クライスラー社(現ダイムラー社)製のウニモグ5000 4×4トラックの車体をベースにしたASRADシステムを発注している。 ドイツ陸軍のASRADシステムではスティンガー対空ミサイルが、フィンランド陸軍のASRADシステムではRBS70 Mk.2対空ミサイルが使用される。 車体が小型軽量で空輸性に優れるASRADは、緊急展開部隊や空挺部隊で用いるのに理想的な対空ミサイル・システムといわれている。 |
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<ASRAD自走発射機> 全長: 4.057m 全幅: 1.82m 全高: 2.00m 全備重量: 4.1t 乗員: 3名 エンジン: アウディTDI 直列4気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 110hp/4,150rpm 最大速度: 75km/h 航続距離: 550km 武装: 対空ミサイル4連装発射機×1 (4発) 装甲厚: |
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<参考文献> ・「パンツァー2006年12月号 ヨーロッパ随一の戦車メーカー クラウス・マッファイ・ヴェクマン」 林磐男 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年7月号 世界で唯一の空挺部隊用戦闘支援車 ヴィーゼル」 吉村誠 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2000年2月号 ユニークなドイツの空挺車輌 ヴィーゼル」 二木巌 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2002年12月号 サトリ2002に展示された英独車輌」 アルゴノート社 ・「パンツァー1999年3月号 海外ニュース」 アルゴノート社 ・「パンツァー1999年7月号 海外ニュース」 アルゴノート社 ・「パンツァー2001年2月号 海外ニュース」 アルゴノート社 ・「パンツァー2002年6月号 海外ニュース」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著 三修社 ・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」 ガリレオ出版 |
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