AMX-VCIは、AMX社(Atelier de construction d'Issy-les-Moulineaux:イシー・レ・ムリノー工廠)がAMX-13軽戦車のコンポーネントを流用して開発した兵員輸送用車両で、IFV(歩兵戦闘車)のはしりともいえるものである。 AMX-VCI歩兵戦闘車のシャシーは基本的にはAMX-13軽戦車と共通化されているが、数多くあるヴァリエーションの中には車体が延長されていたりエンジンや変速機が換装されている等、かなり異なっている車両もある。 AMX-VCI歩兵戦闘車の最初の試作車は1955年に完成し、1960年から量産が開始されている。 1983年からは輸出も始められておりオランダ、メキシコ、アルゼンチン、インドネシア、エクアドル、ベネズエラなど多数の国に採用され、輸出用車両としても大きな成功を収めている。 最終的な生産数は、約3,400両に達している。 AMX-VCI歩兵戦闘車の基本的なレイアウトは車体前部右側に機関室、前部左側に操縦室を配し、車体後部が12名の完全武装歩兵を収容できる兵員室となっている。 ベースとなったAMX-13軽戦車がこうしたレイアウトを採用していたためだが、奇しくも各国で後に開発されることになるIFVと同じ配置となっている。 エンジンは当初、AMX-13軽戦車と同じSOFAM社製の8Gxb V型8気筒液冷ガソリン(出力250hp)を搭載していたが、後にアメリカのデトロイト・ディーゼル社製の6V-53T V型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル(出力275hp)、もしくはボードゥアン社製の6F11SRY V型6気筒液冷ディーゼル(出力280hp)に換装された。 フランス陸軍に導入された基本タイプのAMX-VCI歩兵戦闘車では、操縦手席のすぐ後ろから一段高くなった兵員室となっており、兵員室前方右側に車長席、前方左側に銃手席があり、当初はMAS社(Manufacture d'Armes de Saint-Étienne:サン・テチエンヌ造兵廠)製の7.5mm機関銃F1がピントル・マウントに装備されていた。 しかし後にアメリカのブラウニング社製の12.7mm重機関銃M2をリング・マウントに装備するか、MAS社製の7.5mmまたは7.62mm機関銃F1を装備するGIAT社(Groupement Industriel des Armements Terrestres:陸上兵器企業連合)製のCAFL38 1名用銃塔を搭載するようになった。 兵員室の後方には、背中合わせに10名の兵員が座るシートが設けられている。 兵員室の左右側面上部には避弾経始を考慮して傾斜が与えられており、それぞれ2カ所のガンポートを持つ下開き式ハッチが前後に2枚設けられている。 ガンポートは兵員室後面の外開き式の2枚のドアにも各1カ所ずつ設けられており、合計10カ所のガンポートによって一応の乗車戦闘が可能となっている。 開発時期は早いが、独立した銃塔と共にガンポートを持つ点はIFV的な性格が強いといえる。 事実、フランス陸軍でのVCI(Véhicule de Combat d'Infanterie)という呼称は直訳すると「歩兵戦闘車」となる。 また本車は、開発時期が早かったにも関わらずNBC防御システムも標準装備していた。 1973年から後継のAMX-10P歩兵戦闘車の部隊配備が開始されたため、1980年代初めにはフランス陸軍から退役している。 AMX-VCI歩兵戦闘車の派生型としては装甲指揮車、装甲救急車、81mm自走迫撃砲、120mm自走迫撃砲、地上レーダー車等がある。 AMX-VCI歩兵戦闘車は低価格の軽戦車とコンポーネントを共通化し、さらに数多くのファミリー車両を開発するという優れたコンセプトを評価すべき車両といえよう。 |
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<AMX-VCI歩兵戦闘車> 全長: 5.70m 全幅: 2.67m 全高: 2.41m 全備重量: 15.0t 乗員: 3名 兵員: 10名 エンジン: SOFAM 8Gxb V型8気筒液冷ガソリン 最大出力: 250hp/3,200rpm 最大速度: 60km/h 航続距離: 350km 武装: 7.5mm機関銃F1または7.62mm機関銃F1または12.7mm重機関銃M2×1 装甲厚: 10~30mm |
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<参考文献> ・「パンツァー2016年6月号 フランス軍AFVシリーズとして広く使われたAMX-13軽戦車とそのファミリー」 城島健 二 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年10月号 フランスのベストセラーAPC AMX-13VCI」 前河原雄太 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2008年1月号 大戦後の傑作軽戦車 AMX-13」 佐藤慎ノ亮 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2003年6月号 フランス陸軍 AMX13VCI装甲兵車」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2011~2012」 アルゴノート社 ・「世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車輌:1918~2000」 デルタ出版 ・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版 ・「世界の戦車・装甲車」 竹内昭 著 学研 ・「世界の装軌装甲車カタログ」 三修社 |
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