フランス陸軍は、ジェット化による第2次世界大戦後の航空機の著しい発達に対抗するため、1950年代の末に初の国産対空戦車の開発に着手した。 これは「DCA」(Défense Contre Avions:対空防御)と名付けられ、戦車の車体に搭載する砲塔システムという形で兵器研究開発局の手で作業が進められた。 本システムのベース車体には、AMX社(Atelier de Construction d'Issy-les-Moulineaux:イシー・レ・ムリノー工廠)が開発したAMX-13軽戦車が用いられることになり、最初の試作車は1960年に完成したが、これはまだレーダーやFCS(射撃統制システム)が未装備の状態であり、ようやく1964年になってシステムを全て搭載した試作車が完成し、1965~66年にかけてフランス陸軍の手で試験が行われた。 試験の結果は満足いくものであったようで、60両の生産型が発注されてARE社(Atelier de Construction Roanne:ロアンヌ工廠)において生産を開始し、1968~69年にかけて全車がフランス陸軍に引き渡されている。 フランス陸軍では、これらの車両を用いて2個の対空大隊を編制している。 AMX-13DCA対空自走砲の車体にはAMX-13軽戦車のものがそのまま用いられており、この砲塔リングに合わせる形で開発された砲塔システムが載せられているのは、戦車を母体とする各国の対空戦車と同様である。 砲塔システムは、イスパノ・スイザ社製の30mm対空機関砲HSS831Aを連装装備するSAMM社製のS401A砲塔を中心として、捜索レーダー、光学照準機、弾道コンピューターなどから構成されるもので、光学照準機を用いていることからも分かるように、基本的には晴天の昼間での運用に限定されており、全天候下における運用能力は備えていない。 30mm対空機関砲HSS831Aは-5~+85度の俯仰角を有しており、発射速度は1門当たり300発/分で、5発もしくは15発のバースト射撃を、1門もしくは2門同時のいずれかを選択することができる。 また弾薬はHEI(焼夷榴弾)、半徹甲HEI、TP(演習弾)が用いられ、各種弾薬合わせて1門当たり300発がベルト給弾される。 30mm対空機関砲の有効射程は3,500mで専用のAPXM照準機を標準装備しており、地上射撃にもそのまま使用することが可能である。 パルス・ドップラー方式を採用したDR-VC-1A捜索レーダーは、砲塔後部にディッシュ・アンテナを搭載して全周捜索を行うが、未使用時には後方に倒しておくことができる。 砲塔内には30mm連装対空機関砲を中央に置いて左側に車長、右側に砲手が位置しており、レーダーで捉えた情報は車長席のスコープに表示され、車長がその方向に砲塔を指向すると自動的にレーダーが追尾モードに切り替えられる。 この際、砲手は光学照準機を用いて目標を捕捉し、弾道コンピューターを介して見越し射撃角が自動的に計算されて、照準機に表示することで命中精度を高めている。 本車とほぼ同時期に開発された旧ソ連のZSU-23-4「シルカ」対空自走砲では、レーダーで目標の捜索、追跡、照準、測距を行うようになっていたのに対し、AMX-13DCA対空自走砲ではレーダーはあくまでも目標捜索用で、照準は光学照準機で行われるという点で、戦後第2世代対空戦車としてはかなり遅れたシステムであったといえる。 |
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<AMX-13DCA対空自走砲> 全長: 5.40m 全幅: 2.50m 全高: 3.80m 全備重量: 17.2t 乗員: 3名 エンジン: SOFAM 8Gxb 4ストロークV型8気筒液冷ガソリン 最大出力: 250hp/3,200rpm 最大速度: 60km/h 航続距離: 300km 武装: 30mm対空機関砲HSS831A×2 (600発) 装甲厚: 10~20mm |
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<参考文献> ・「パンツァー2016年6月号 フランス軍AFVシリーズとして広く使われたAMX-13軽戦車とそのファミリー」 城島健 二 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2014年4月号 1960~80年代に活躍したフランス製自走砲」 鈴木多郎 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2008年1月号 大戦後の傑作軽戦車 AMX-13」 佐藤慎ノ亮 著 アルゴノート社 ・「グランドパワー2019年11月号 フランス戦車発達史(戦後編)」 斎木伸生 著 ガリレオ出版 ・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946~2000」 デルタ出版 ・「異形戦車ものしり大百科 ビジュアル戦車発達史」 斎木伸生 著 光人社 |
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エース 1/72 フランス軍 AMX-13 DCA 30mm連装対空自走砲 プラモデル 72447 |