AMX-10RC戦闘偵察車は、1940年代末に開発されたパナール社製のEBR戦闘偵察車(8×8型装輪式)の後継車として開発された偵察・火力支援用の6×6型装輪式装甲車である。 1970年9月からAMX社(Atelier de construction d'Issy-les-Moulineaux:イシー・レ・ムリノー工廠)で開発が始められ、1971年6月に最初の試作車が完成している。 1978年には最初の生産型が完成しフランス陸軍向けに325両が生産された他、モロッコに108両、カタールに12両が輸出されている。 AMX-10RC戦闘偵察車の車体は防弾アルミ板の溶接構造で前部左側に操縦手席があり、車体中央部は全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室、車体後部は機関室となっている。 開発・運用コストの低減を図って、本車は同時期に開発された装軌式のAMX-10P歩兵戦闘車と多くのコンポーネントが共通化されており、広い意味でのファミリー車両といえる。 AMX-10RC戦闘偵察車の最大の特徴は当時の装輪式車両としては最も強力な105mm砲を搭載していたことで、偵察車両とはいいながらも本格的な戦闘を交えるのも想定していたことが伺える。 このGIAT社(Groupement Industriel des Armements Terrestres:陸上兵器企業連合、2006年にネクスター社に改組)製の48口径105mmライフル砲CN-105-F2は低腔圧低初速で、一般の105mmライフル砲用の弾薬は使用できない。 M32 HEAT(対戦車榴弾)を使用した場合砲口初速1,090m/秒で、射距離に関わらず350mm厚のRHA(均質圧延装甲板)を穿孔できる。 砲塔はGIAT社製の3名用砲塔105GTTで砲塔内の右側前方に砲手、その後方に車長が位置し、左側には装填手が位置する。 AMX-10RC戦闘偵察車で技術的に面白いのは車輪が操向せず、装軌式車両と同様に片側の車輪を減速、反対側を増速して旋回するスキッド操向方式を採用している点である。 エンジンは当初、出力260hpのイスパノ・スイザ社製HS-115 V型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジンを搭載していたが、1983年から出力280hpで燃費も良いボードゥアン社製の6F11SRX V型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジンへの換装が進められ、1995年までに全車が換装された。 サスペンションは油気圧式で、地上高を最小21cmから最大47cmまで変化させられる(標準は35cm)。 本車は浮航性も持っており、水上では車体後部のウォーター・ジェットによって航行する(7.2km/h)。 ただし、モロッコ向けの車両にはウォーター・ジェットが装備されていない。 1992年にはNATO標準の105mm砲弾を発射できる44口径105mm低反動ライフル砲CN-105-G2を装備する、105TML砲塔に換装する近代化改修プラン(AMX-10RC 105TML)がGIAT社から提案されており、装甲防御力も強化される。 |
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<AMX-10RC戦闘偵察車> 全長: 9.15m 車体長: 6.357m 全幅: 2.95m 全高: 2.66m(砲塔上面2.29m) 全備重量: 15.88t 乗員: 4名 エンジン: イスパノ・スイザHS-115 4ストロークV型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル またはボードゥアン6F11SRX 4ストロークV型6気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 260hp/3,000rpm または280hp/3,000rpm 最大速度: 85km/h(浮航 7.2km/h) 航続距離: 1,000km 武装: 48口径105mm低圧ライフル砲CN-105-F2×1 (38発) 7.62mm機関銃F1×1 (4,000発) 装甲厚: |
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<参考文献> ・「パンツァー2006年6月号 フランスの戦闘偵察車AMX10RC インアクション」 中川未央 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2003年2月号 AFV比較論 AMX-10RC & チェンタウロ」 齋木伸生 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2019年7月号 戦後フランスの装輪火力支援車輌」 前河原雄太 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2010年11月号 AMX-10RCの開発と発展」 荒木雅也 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2002年1月号 装輪式偵察/戦車駆逐車」 アルゴノート社 ・「パンツァー2016年4月号 装輪戦車の系譜」 アルゴノート社 ・「ウォーマシン・レポート68 16式機動戦闘車」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2019年11月号 フランス戦車発達史(戦後編)」 齋木伸生 著 ガリレオ出版 ・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」 ガリレオ出版 ・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」 デルタ出版 ・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」 洋泉社 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー ・「世界の最新陸上兵器 300」 成美堂出版 ・「世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 |
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