AMX-10P歩兵戦闘車は、AMX-VCI歩兵戦闘車の後継として開発されたフランス陸軍の主力IFVである。 本車の開発は1965年のVCAI(Véhicule de Combat Amphibie d' Infanterie:水陸両用歩兵戦闘車)計画に沿って行われ、1969年に試作車の製作が始められた。 1972年から生産型の量産が開始され、翌73年から部隊配備が始められている。 本車はフランス本国以外に、中東諸国やインドネシアなど各国に輸出されている。 AMX-10P歩兵戦闘車の基本レイアウトはIFVとしてごく一般的なもので、車体前部右側にエンジンおよび変速・操向装置、前部左側に操縦手席、車体中央部やや左寄りに2名用の全周旋回式砲塔を搭載し、車体中央部右端および車体後部は兵員室となっている。 車体は防弾アルミ板の全溶接構造で、車体前部のトリム・ヴェインを立てるだけで特別の準備無しに水上浮航を行うことができる。 水上での推進は、車体後部左右に備えられたウォーター・ジェットによって行われる。 車体中央部に搭載されている砲塔はトゥカン(Toucan)IIと呼ばれる2名用で、砲塔内右側に車長、左側に砲手が搭乗する。 20mm機関砲やその給弾機構、7.62mm同軸機関銃等は砲塔上部に外装式に装備されており、乗員の搭乗位置を低くすることで安全性を向上させている。 主武装はGIAT社製の100口径20mm機関砲M693で、F2とも呼ばれるものである。 この20mm機関砲M693は、フランス陸軍の戦後第2世代MBTであるAMX-30戦車の後期生産車にも主砲の同軸機関銃として搭載されており、MBTとIFVで弾薬を共用することができる。 発射速度は740発/分で二重給弾システムを持っており、即用弾として榴弾260発、徹甲弾65発が砲塔内に収容されている。 砲塔の旋回と砲の俯仰は、電動モーターによる動力式である。 車体中央部右端および車体後部は歩兵8名を収容する兵員室となっており、狭い車体に収容するためか兵員室内は独特の複雑に入り組んだ座席配置となっている。 車体後面は大型のランプ・ドアとなっており、外開き式の乗降用ドアが2枚設けられている。 乗降用ドアにはそれぞれ1基ずつガンポートが設けられているが、本車が装備するガンポートはこの2基のみである。 兵員室上面には内開き式の大型ハッチが2枚設けられており、ここから身を乗り出して射撃を行うこともできる。 AMX-10P歩兵戦闘車の派生型としては、HOT対戦車ミサイル搭載の戦車駆逐車や装甲指揮車、迫撃砲牽引車、装甲回収車などが開発されている。 |
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<AMX-10P歩兵戦闘車> 全長: 5.788m 全幅: 2.78m 全高: 2.57m 全備重量: 14.5t 乗員: 3名 兵員: 8名 エンジン: イスパノ・スイザHS115 4ストロークV型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル 最大出力: 300hp/3,000rpm 最大速度: 65km/h(浮航 7km/h) 航続距離: 600km 武装: 100口径20mm機関砲F2×1 (760発) 7.62mm機関銃F1×1 (2,000発) 装甲厚: |
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<参考文献> ・「パンツァー2012年7月号 フランス機械化部隊の主力車輌 AMX-10P」 太田亮 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2004年3月号 AFV比較論 マルダー vs AMX10P」 三鷹聡 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2006年9月号 フランス第7装甲旅団のジャブロ2005演習(2)」 アルゴノート社 ・「パンツァー2010年3月号 レバノンで活動する増加装甲付AMX-10P」 アルゴノート社 ・「パンツァー2002年6月号 フランス陸軍 AMX10P戦闘兵車」 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年5月号 フランス陸軍の現用戦闘車輌」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021~2022」 アルゴノート社 ・「世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車輌:1918~2000」 デルタ出版 ・「世界の戦闘車輌 2006~2007」 ガリレオ出版 ・「世界の主力戦闘車」 ジェイソン・ターナー 著 三修社 ・「世界の装軌装甲車カタログ」 三修社 ・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版 ・「戦車名鑑 1946~2002 現用編」 コーエー |
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