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AML戦闘偵察車





フランス陸軍は、イギリス陸軍のフェレット装甲偵察車など小型の装輪式装甲車の活躍に刺激を受け、1956年にフェレット装甲偵察車と同サイズで、より強力な武装を持つ偵察用の4×4型装輪式装甲車の開発を要求した。
これに応じてパナール、サヴィエム、DEFA-AMXの3社が試作車の開発を開始した。

パナール社の試作車であるM245は1959年に完成したが、比較試験の結果このM245が1961年に「AML」の名称でフランス陸軍に制式採用され、同年から引き渡しが開始された。
ちなみに「AML」とは”Automitrailleuse Légère”の頭文字を採ったもので、「軽装甲車」を意味する。
AML戦闘偵察車の車体と砲塔は圧延防弾鋼板の溶接構造で、車内レイアウトは車体前部が操縦室、車体中央部が全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室、車体後部が機関室という常識的なものである。

エンジンは、初期型ではパナール社製の4HD 水平対向4気筒空冷ガソリン・エンジン(90hp/4,700rpm)が搭載されていたが、後期型ではプジョー社製のXD3T 直列4気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル・エンジン(95hp/4,150rpm)が搭載されている。
また現在、初期型の車両もXD3Tディーゼル・エンジンへの換装が進められている。
変速機は、前進6段/後進1段の手動式のものが採用されている。

サスペンションは、コイル・スプリングと油圧式ショック・アブソーバーの組み合わせである。
なお、同じくパナール社が開発した4×4型装輪式のM3装甲兵員輸送車は、AML戦闘偵察車の動力系と95%が共通の一種のファミリー車両である。
AMLの基本型であるAML90戦闘偵察車は、右側に砲手、左側に車長が搭乗するイスパノ・スイザ社製のH90砲塔に、GIAT社製の33口径90mm低圧滑腔砲CN-90-F1と7.62mm機関銃を同軸に装備している。

90mm低圧滑腔砲CN-90-F1は軽量な車両にも搭載できるように発射時の反動が抑えられており、一般目標に対する榴弾に加えて対戦車用には成形炸薬弾が用意されており、限定的ながら対戦車戦闘も可能となっている。
90mm砲弾の搭載数は20発、7.62mm機関銃弾の搭載数は2,000発となっている。
また武装は同じながらパッシブ式暗視装置とレーザー測遠機、動力式旋回装置を備えたイスパノ・スイザ社製のランクス90砲塔を搭載したAMLランクス90戦闘偵察車も開発されている。

その他にも、7.62mm連装機関銃と後装式60mm迫撃砲を装備するイスパノ・スイザ社製のHE60-7砲塔を搭載したAML60-7戦闘偵察車、12.7mm重機関銃と後装式60mm迫撃砲を装備するHE60-12砲塔を搭載したAML60-12戦闘偵察車、20mm機関砲と後装式60mm迫撃砲を装備するHE60-20セルヴァル砲塔を搭載したAML60-20「セルヴァル」(Serval:サーヴァルキャット)戦闘偵察車、20mm連装対空機関砲を装備するSAMM社製のS530砲塔を搭載したAML S530対空自走砲などが開発されている。

この内、フランス陸軍に採用されたのはAML90戦闘偵察車とAML60-7戦闘偵察車の2種で、前者は210両、後者は425両が配備された。
さらにジャンダルマリ(フランス憲兵隊)も、45両のAML90戦闘偵察車と70両のAML60-7戦闘偵察車を採用している。

またAML戦闘偵察車シリーズは、フランスの旧アフリカ植民地を中心とする第3世界諸国など世界約40カ国に輸出されており、南アフリカでは「イーランド」(Eland:エランド、南アフリカ産の大型のレイヨウ)の名称で1963年からライセンス生産が行われている。
イーランド戦闘偵察車は南アフリカ陸軍にMk.2~Mk.7の各種ヴァリエーションが採用された他、1994年に開発された最新型のイーランドMk.7DTはコンゴに20両が輸出されている。

AML戦闘偵察車シリーズは1961~94年にかけて約4,800両が生産されており、ファミリー車両であるM3装甲兵員輸送車シリーズを含めた総生産数はフランス国内だけで6,035両、ライセンス生産分を加えれば7,135両に上る。
フランス陸軍ではすでに第一線からは退いているが、多くの国では近代化改修を加えられつつまだまだ使われる模様である。


<AML90戦闘偵察車>

全長:    5.11m
車体長:   3.79m
全幅:    1.97m
全高:    2.07m
全備重量: 5.5t
乗員:    3名
エンジン:  パナール4HD 水平対向4気筒空冷ガソリン
最大出力: 90hp/4,700rpm
最大速度: 90km/h
航続距離: 600km
武装:    33口径90mm低圧滑腔砲CN-90-F1×1 (20発)
        7.62mm機関銃F1×1 (2,000発)
装甲厚:   8~12mm


<AML60-7戦闘偵察車>

全長:    3.79m
全幅:    2.00m
全高:    2.10m
全備重量: 5.5t
乗員:    3名
エンジン:  パナール4HD 水平対向4気筒空冷ガソリン
最大出力: 90hp/4,700rpm
最大速度: 90km/h
航続距離: 600km
武装:    60mm迫撃砲HB60×1
        7.62mm機関銃F1×2
装甲厚:   8~12mm


<AML S530対空自走砲>

全長:    3.79m
全幅:    2.00m
全高:    2.43m
全備重量: 5.5t
乗員:    2名
エンジン:  パナール4HD 水平対向4気筒空冷ガソリン
最大出力: 90hp/4,700rpm
最大速度: 90km/h
航続距離: 600km
武装:    20mm対空機関砲M621×2
装甲厚:   8~12mm


<参考文献>

・「パンツァー2012年12月号 フランスのAML装甲偵察車シリーズ」 前河原雄太 著  アルゴノート社
・「パンツァー2014年7月号 フランスのミゼット装甲車 AMLシリーズ」 柘植優介 著  アルゴノート社
・「パンツァー2019年7月号 戦後フランスの装輪火力支援車輌」 前河原雄太 著  アルゴノート社
・「パンツァー2012年9月号 アイルランド騎兵学校の装備車輌」  アルゴノート社
・「ウォーマシン・レポート68 16式機動戦闘車」  アルゴノート社
・「世界のAFV 2021~2022」  アルゴノート社
・「グランドパワー2019年11月号 フランス戦車発達史(戦後編)」 齋木伸生 著  ガリレオ出版
・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904~2000」  デルタ出版
・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」  洋泉社
・「戦車名鑑 1946~2002 現用編」  コーエー
・「世界の戦車・装甲車」 竹内昭 著  学研
・「新・世界の装輪装甲車カタログ」  三修社
・「世界の装輪装甲車カタログ」  三修社
・「世界の軍用4WDカタログ」  三修社
・「世界の軍用4WD図鑑PART2」  スコラ

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