ルノーAMC34/AMC35軽戦車
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AMC34軽戦車
AMC35軽戦車
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+概要
フランス陸軍騎兵監部は1930年代に入って騎兵部隊の機械化に着手し、1931年に「AMD」(Automitrailleuse de Découverte:索敵用装甲車両)、「AMR」(Automitrailleuse
de Reconnaissance:偵察用装甲車両)、「AMC」(Automitrailleuse de Combat:戦闘用装甲車両)の3系統の装甲車両の装備計画をまとめた。
AMDは装輪式の偵察用装甲車両、AMRは装軌式の偵察用装甲車両、AMCは装軌式の戦闘用装甲車両とされていた。
ブローニュ・ビヤンクールのルノー社は騎兵監部から提示されたAMCの要求仕様に基づいて、「YR型」と呼ばれる試作車を設計・試作したが、このYR型は基本的に同社が開発した偵察用のAMR33軽戦車の発展型であり、車体や足周りなどはAMR33軽戦車に酷似していたが、AMCは戦闘用の車両であるため装甲や武装は若干強化されていた。
車体はAMR33軽戦車と同じく圧延防弾鋼板のリベット接合構造になっていたが、AMR33軽戦車の最大装甲厚が13mmだったのに対し、YR型の最大装甲厚は20mmに強化されていた。
また乗員数も、AMR33軽戦車の2名から1名増やされて3名となった。
試作車の砲塔は、APX社(Atelier de Construction de Puteaux:ピュトー工廠)製の21口径37mm戦車砲SA18を装備する、8角形のリベット接合構造のものが搭載されたが、これはルノーFT軽戦車の砲塔を流用したものであった。
YR型は、1934年に「AMCルノー1934年型」(AMC34)としてフランス陸軍に制式採用された。
AMC34軽戦車の生産型ではAPX社製の「APX-1」と称される鋳造砲塔が採用され、主砲も短砲身ながら47mm戦車砲が装備された。
AMC34軽戦車は1934年中に12両が生産され、1935年から部隊配備が開始されて1940年5~6月のドイツ軍のフランス侵攻まで第一線で活躍した。
同年6月22日のフランス降伏後、生き残ったAMC34軽戦車はドイツ軍に接収されたが、本車は戦力的価値が無いと判断されたのかドイツ軍で再使用されることは無く、大半はスクラップにされてしまったようである。
AMC34軽戦車を運用したフランス陸軍でも、本車は戦闘を主任務とするAMCとしてはあまりにも小さく使い勝手が悪いとして不評だったため、制式化された翌年の1935年にルノー社は「ACG1型」と呼ばれる改良型AMCを開発した。
ACG1型は、同社がAMR33軽戦車の後継モデルとして開発したAMR35軽戦車をベースにAMCとして設計し直したもので、AMR35軽戦車に比べて車体が拡大延長されていた。
車体が延長された結果、転輪と上部支持輪はAMR35軽戦車の片側4個から1個追加されて片側5個となった。
第2転輪と第3転輪、第4転輪と第5転輪はそれぞれボギーで連結して懸架され、第1転輪は独立懸架とされた。
重量の増加に対応してサスペンションも新設計のものになったが、機構的には水平ラバー・スプリングとシザーズ型ベルクランクを使用した従来のシステムを踏襲していた。
車体構成は従来と同じく、圧延防弾鋼板のリベット接合構造になっていた。
砲塔は新型のAPX-2に変更されており、主砲も32口径47mm戦車砲SA35に換装された。
ACG1型は「AMCルノー1935年型」(AMC35)としてフランス陸軍に制式採用されたが、発注されたのが遅かったため1939年3月~1940年1月にかけて50両が生産されただけに終わった。
AMC35軽戦車の生産は初期のものはルノー社が行っているが、後期にはAMX社(Atelier de Construction d'Issy-les-Moulineaux:イシー・レ・ムリノー工廠)に生産が移管された。
なお、第2次世界大戦前にはベルギー陸軍がAMC35軽戦車を28両導入しており、自国の仕様に合わせた砲塔を製作して搭載していた。
このベルギー陸軍仕様のAMC35軽戦車は、砲塔に同国のFRC社(Fonderie Royale de Canons:王立大砲鋳造所)製の33.6口径47mm対戦車砲M1931と、サン・ドニのオチキス社製の13.2mm空冷重機関銃M1929を装備していた。
AMC35軽戦車の派生型として75mm砲を搭載したACG2型も製作されているが、30両が生産されたのみで全てフランス陸軍に引き渡されている。
またAMC35軽戦車には47mm戦車砲SA35の代わりに、オチキス社製の47.2口径25mm戦車砲SA35を装備した車両も存在しており、これは初期生産車といわれている。
AMC35軽戦車はドイツ軍のフランス侵攻時にはまだ実戦部隊に配備されておらず、開戦後にごく少数が臨時編制の部隊に配属されて戦闘に投入されたに留まった。
フランス降伏後にドイツ軍に接収されたAMC35軽戦車は、一部が砲塔を取り外して海岸線の固定砲台として再利用された。
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<AMC34軽戦車>
全長: 3.98m
全幅: 2.07m
全高: 2.10m
全備重量: 9.7t
乗員: 3名
エンジン: ルノー 4ストローク直列4気筒液冷ガソリン
最大出力: 120hp
最大速度: 40km/h
航続距離: 200km
武装: 27.6口径47mm戦車砲SA34×1
7.5mm機関銃M1931×1
装甲厚: 5~20mm
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<AMC35軽戦車>
全長: 5.38m
全幅: 2.12m
全高: 2.62m
全備重量: 14.5t
乗員: 3名
エンジン: ルノー 4ストローク直列4気筒液冷ガソリン
最大出力: 180hp
最大速度: 40km/h
航続距離: 125km
武装: 32口径47mm戦車砲SA35×1
7.5mm機関銃M1931×1
装甲厚: 5~25mm
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<参考文献>
・「グランドパワー2018年6月号 世界の戦車博物館(1) ソミュール/フランス戦車編」 斎木伸生 著 ガリレオ
出版 ・「第2次大戦 フランス軍用車輌」 ガリレオ出版
・「パンツァー2000年6月号 ヨーロッパ戦跡紀行(5) ベルギーの陥落」 斎木伸生 著 アルゴノート社
・「パンツァー2016年7月号 九二式重装甲車と各国騎兵戦車」 久米幸雄 著 アルゴノート社
・「パンツァー2013年8月号 フランス ルノー軽戦車シリーズ」 平田辰 著 アルゴノート社
・「パンツァー2001年4月号 大戦初期のフランス戦車」 斎木伸生 著 アルゴノート社
・「世界の戦車 1915~1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「ビジュアルガイド WWII戦車(1)
電撃戦」 川畑英毅 著 コーエー
・「戦車名鑑 1939~45」 コーエー
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