HOME研究室(第2次世界大戦後〜現代編)自走砲自走砲(中国)>85式122mm自走榴弾砲

85式122mm自走榴弾砲





85式122mm自走榴弾砲は、旧式化した54-1式122mm自走榴弾砲の後継としてNORINCO(中国北方工業公司)が開発した自走榴弾砲で、1985年に制式化されている。
車体はYW531装甲兵員輸送車の改良型であるYW531H装甲兵員輸送車のものが流用されており、生産コストや重量を削減するために砲塔式ではなく車体後部をオープントップ式の戦闘室とし、ここに122mm榴弾砲を限定旋回式に搭載するという54-1式自走榴弾砲と同様の手法を採っている。

85式自走榴弾砲の車体は基本的にはYW531H装甲兵員輸送車と大差無いもので、車体前部右側に機関室、前部左側に操縦手席を配し、この操縦手席の後方に車長席が設けられているのはYW531H装甲兵員輸送車と変わらないが、車体後部の兵員室の上面は大きく切り欠かれて、兵員室の左右側面および後面に乗員防御のための装甲板を新設し、内部に砲架を設けて122mm榴弾砲を搭載し戦闘室としている。

装甲板は小火器弾や榴弾の破片程度に対する防御力を有しているが、上面はオープンなのでトップアタックなどに対しては何ら防御効果は無く、NBC防護装置も備えていない。
この戦闘室には乗員4名(砲手と装填手3名)が収容され、上部には必要に応じてキャンバスを張ることが可能となっているが、戦闘時には取り払われるのはいうまでもない。
主砲には、旧ソ連から供与された牽引式の38口径122mm榴弾砲D-30をコピーした中国版を搭載している。

この122mm榴弾砲D-30は、旧ソ連が旧式化した22.7口径122mm榴弾砲M-30の後継として開発したもので1963年に制式化されており、2S1「グヴォジーカ」122mm自走榴弾砲の主砲である36口径122mm榴弾砲2A31の原型にもなっている。
砲身先端には多孔式の砲口制退機が装着されており、本車に搭載した状態で砲の旋回角は左右各22.5度ずつ、俯仰角は−5〜+70度となっている。

最大射程は重量21.8kgの通常榴弾を用いて15,300mだが、ベースブリード榴弾を用いた場合21,000mまで延長することができる。
自動装填装置は採用されていないが、装填手を3名配することで発射速度は6〜8発/分とかなり高いのが特徴である。
また移動時の砲の振動を抑えるために、車体前部には固定用のトラヴェリング・クランプが備えられている。

122mm砲弾の車内携行数は、40発となっている。
85式自走榴弾砲の特徴として、車体の左右側面に浮力を持つフロートを装着することで水上浮航性を付加できることが挙げられ、水上での航行は履帯を駆動することで6km/hの速度を得ている。
自衛用の機関銃などは装備しておらず、車内の乗員用突撃銃が唯一身を守る手段となっている。
また無線機には、889DもしくはVRC-83無線セットが搭載されている。

85式自走榴弾砲は中国軍向けの生産はすでに終了しているが、その生産数は不明で輸出車の存在も明らかにはされていない。
また本車の発展型として、90式装甲兵員輸送車の車体を用いて122mm榴弾砲D-30を搭載した自走榴弾砲も提案され各国に売り込みが図られているが、まだ生産には結び付いていないようである。


<85式122mm自走榴弾砲>

全長:    6.663m
車体長:   6.125m
全幅:    3.068m
全高:    2.85m
全備重量: 16.5t
乗員:    6名
エンジン:  ドゥーツBF8L413F 4ストロークV型8気筒空冷ディーゼル
最大出力: 320hp/2,500rpm
最大速度: 60km/h(浮航 6km/h)
航続距離: 500km
武装:    38口径122mm榴弾砲D-30×1 (40発)
装甲厚:


<参考文献>

・「世界の軍用車輌(2) 装軌式自走砲:1946〜2000」  デルタ出版
・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」  ガリレオ出版
・「世界AFV年鑑 2005〜2006」  アルゴノート社
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社


HOME研究室(第2次世界大戦後〜現代編)自走砲自走砲(中国)>85式122mm自走榴弾砲