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60式自走81mm迫撃砲





1956年に防衛庁は小松製作所と三菱重工業の2社に対して、兵員輸送用の装軌式装甲車の開発要求を出した。
この車両は「試製56式装甲車(SU)」の呼称が与えられ、コマツの試作車は「試製56式装甲車I型(SU-I)」、三菱の試作車は「試製56式装甲車II型(SU-II)」とそれぞれ呼ばれ、加えて車体を流用した自走迫撃砲の開発要求も両社に対して出された。

この車両はコマツの試作車が「試製56式自走81mm迫撃砲(SV)」、三菱の試作車が「試製56式自走4.2インチ迫撃砲(SX)」と呼ばれ、まがりなりにもファミリー化が図られていた。
その性格上、迫撃砲は野砲などよりも射程が短く歩兵に近接支援を行うため、普通科が用いる兵員輸送用の装甲車と共通の車体を用いて自走化するのは非常に合理的であり、この発想は当時としては高く評価することができる。

コマツの自走迫撃砲型の試作車SVは、同社で開発を進めていた兵員輸送型の試作車SU-Iの車体を流用し、車体後部の兵員室内に左右各40度ずつの限定旋回式の台座を設けて81mm迫撃砲を搭載し、兵員室上面に射撃用のハッチを設けて、このハッチと車体後面のランプドアを開くことで車内からの射撃を可能としていた。
基本的にはSVはSU-Iと車体は同一だが、上記の変更点に加えて車体前部の7.62mm機関銃が廃止されるなど相違点も散見できる。

また、射撃時の反動への対処として台座の下にあたる車体床板には開口部が設けられ、砲尾に装着された支柱をこの開口部から外に出し、地面に降ろすことで反動を地面に伝えて逃がすという独特の機構が採用されていた。
搭載する81mm迫撃砲は普通科が装備するアメリカ製の81mm迫撃砲M1と同じものだが、車載化により一部が変化したため「60式車載81mm迫撃砲」と呼称も改められた。

最大射程は約3,000mで、最前線の歩兵の後方に位置して支援射撃に用いることが可能だった。
なおSVの乗員は車長、操縦手、砲操作員3名の合計5名となっていた。
第1次試作車SVに続いて第2次試作車SV(改)が製作されたが、このSV(改)では先の反動吸収機構は廃止され、車体も共用性を高めるために、車体前部機関銃を備える三菱製の兵員輸送型第2次試作車SU-II(改)と同じものが用いられたが、機関銃自体は必要に応じて装着することとされた。

また81mm迫撃砲を地上に降ろして射撃可能なように、車体前面に底板と二脚が装着されたこともSV(改)での変更点となっている。
この2次に渡る試作を経て本車は1960年に「60式自走81mm迫撃砲」として制式化され、車体は「60式装甲車」として制式化された三菱製の兵員輸送型のものが用いられた。

60式自走81mm迫撃砲は一般の81mm迫撃砲と比較すると射撃精度が良好で、高い機動性と装甲防御力を備えるというメリットがあるものの、反面、高価な装軌式車体を用いて自走化したために生産・維持コストが大きく膨れ上がってしまい、簡易かつ安価な兵器という迫撃砲本来のメリットを損なうことにもなった。
結局このコスト高が原因で本車は極めて少数の生産に留まり、配備部隊も限定されてしまった。


<60式自走81mm迫撃砲>

全長:    4.85m
全幅:    2.40m
全高:    1.70m
全備重量: 12.1t
乗員:    6名
エンジン:  三菱8HA21WT 4ストロークV型8気筒空冷ターボチャージド・ディーゼル
最大出力: 220hp/2,400rpm
最大速度: 43km/h
航続距離:
武装:    60式14.3口径車載81mm迫撃砲×1 (100発)
        12.7mm重機関銃M2×1 (420発)
装甲厚:


<参考文献>

・「パンツァー2004年2月号 陸上自衛隊 60式装甲車の開発とその派生車」 高橋昇/林磐男 共著  アルゴ
 ノート社
・「パンツァー2003年5月号 陸上自衛隊 60式装甲車のファミリー車輌」 高城正士 著  アルゴノート社
・「パンツァー2016年10月号 陸自の歴代の自走迫撃砲」 奈良原裕也 著  アルゴノート社
・「グランドパワー2010年8月号 自衛隊の車輌と装備 60式装甲車」 伊吹竜太郎 著  ガリレオ出版
・「陸上自衛隊の装備車輌 Vol.1 ’60年代編」  ガリレオ出版
・「自衛隊歴代最強兵器 BEST200」  成美堂出版
・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」  コーエー
・「世界の装軌装甲車カタログ」  三修社
・「自衛隊装備年鑑」  朝雲新聞社


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