81式短距離地対空誘導弾(略称:SAM-1、通称:短SAM、愛称:ショートアロー)は、陸上自衛隊が初めて開発した戦場・拠点防空用の短距離/低空域対空ミサイル・システムで、開発は1960年代の後半頃からスタートしており約10年の研究を経て完成し、1981年度に「81式短距離地対空誘導弾」として制式化された。 SAM-1は陸上自衛隊各師団の防空力の中核となる装備として1982年度から配備が始まり、翌83年度からは航空自衛隊にも基地防空用として配備が開始された。 SAM-1の生産は東芝が担当しており、1990年度までに陸上自衛隊の全師団への配備が完了している。 システムは6輪トラックのシャシー後部に搭載されたレーダーFCS(射撃統制システム)1基と、同型シャシーに搭載された誘導弾の4連装発射機2基から成る1個小隊で構成される。 SAM-1のシャシーは3 1/2tトラックをベースに開発された専用のもので、重量の増加に対処して後2軸のタイアは複列式にされており、タイアの前後に片側2個ずつ計4個のアウトリガーを備えている。 誘導弾発射機とレーダーFCSは陣地侵入後、竹の棒で支えたバラクーダ対空擬装を展開するが、これは一瞬にして取り除けられ直ちに交戦状態に移ることができる。 誘導弾発射機とレーダーFCSはケーブルで接続して運用され、誘導弾発射機は戦闘時にはアウトリガーを下ろして車体を固定し、車体左右のステップを展開させる。 ステップの上には、予備の誘導弾を収納したコンテナが搭載される。 SAM-1の技術面の特長はレーダーにフェイズド・アレイ方式の多機能レーダーを採用し、誘導弾には発射後の空中ロックオン機能や赤外線パッシブ・ホーミング方式を採用して、世界に先駆けて2目標同時追跡と連続攻撃能力を実現していることである。 また1989年度からSAM-1の改良型の開発がスタートしており、1995年度に「81式短距離地対空誘導弾(C)」として制式化され生産が開始されている(短SAM改の通称で呼ばれることが多い)。 このC型は誘導弾に赤外線/可視光複合画像ホーミング方式の光波弾と、アクティブ・レーダー・ホーミング方式の電波弾の2種類が開発されており対妨害性と全天候性が向上しているが、併せてロケット・モーターの噴煙が希煙化されて被発見率を低下させたり、射程の延伸が図られており総合的な性能が向上している。 さらにC型では新たに誘導弾発射後に旋回を行う目標に対して、間欠的に追随することにより予想命中点を変更できるUTDC(Up-To-Date Command)誘導も可能になり、原型のシステムよりも撃墜率を大幅に向上させている。 |
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<誘導弾> 全長: 2.70m 直径: 0.16m 翼幅: 0.60m 弾頭重量: 9kg 発射重量: 100kg 誘導方式: パッシブ赤外線 最大飛翔速度: マッハ2.4 有効射程: 50〜7,000m 有効射高: 15〜3,000m |
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<C型誘導弾> 全長: 2.71m (光波弾) 2.85m (電波弾) 直径: 0.16m 翼幅: 0.60m 弾頭重量: 9kg 発射重量: 105kg 誘導方式: 赤外線/可視光複合画像 (光波弾) アクティブ・レーダー (電波弾) 最大飛翔速度: マッハ2.4 有効射程: 50〜10,000m 有効射高: 15〜3,000m |
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<参考文献> ・「パンツァー1999年3月号 第8高射特科大隊の81式短SAM実射訓練」 アルゴノート社 ・「パンツァー2012年4月号 第1師団第1高射大隊の短SAM実射訓練」 アルゴノート社 ・「パンツァー2015年12月号 陸上自衛隊 対空装備の半世紀」 アルゴノート社 ・「パンツァー2011年2月号 高射特科 近/短SAM実射訓練」 アルゴノート社 ・「パンツァー2007年2月号 81式短SAM改の実射訓練」 アルゴノート社 ・「パンツァー2009年1月号 陸上自衛隊の装備車輌」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「大図解 世界のミサイル・ロケット兵器」 坂本明 著 グリーンアロー出版社 ・「陸上自衛隊 車輌・装備ファイル」 デルタ出版 ・「世界の最強陸上兵器 BEST100」 成美堂出版 ・「自衛隊歴代最強兵器 BEST200」 成美堂出版 ・「世界の最新陸上兵器 300」 成美堂出版 ・「ミサイル事典」 小都元 著 新紀元社 ・「自衛隊装備年鑑」 朝雲新聞社 ・「自衛隊図鑑 2002」 学研 |
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