79式戦車は1984年10月に開催された軍事パレードで初めて公開された戦車で、一説によると「69-III式戦車」とも呼ばれるといわれる。 本車は69-II式戦車をベースに火力、射撃精度、夜間視察能力、通信機材の能力向上に主眼を置いて開発が進められ、1983年までに完成した。 1983年以降に69式戦車シリーズが海外に輸出される一方で、この79式戦車は専ら国内向けにのみ生産と配備が進められていった。 79式戦車の生産数は1988年の前半期までに500両余りを記録し、装備の優良な重点集団軍(西側の軍団にほぼ相当する最大規模の戦術単位:総兵力は8万人台)に優先的に配備されていった。 79式戦車の車体は59式/69式戦車とほぼ同一で、車内レイアウトは前部に操縦室、中央部に全周旋回式砲塔を搭載した戦闘室、後部に機関室が配置されている。 乗員は4名で車体前部右側に操縦手、砲塔内の左側前方に砲手、その後方に車長、主砲を挟んで右側に装填手が位置している。 砲塔も59式/69式戦車と基本的に同じだが、車長用キューポラの前方に新たに大型の車長用照準機が取り付けられ、これは主砲基部に装着されたレーザー測遠機と連動することもできるといわれている。 砲塔の左右側面には、ドイツのヴェクマン社製のものに酷似した76mm発煙弾発射機が各4基ずつ装着されている。 また砲塔後半部の周囲には、格子状の収納バスケットが取り付けられている。 このバスケットは個人装備等を収めるのは無論だが、成形炸薬弾防護用の空間装甲も兼ねており、以後に開発された中国製MBTにも踏襲されている。 主砲は同時期に開発された59-II式戦車と同じく、西側の戦後第2世代MBTの標準武装ともいえるイギリスの王立造兵廠製の105mm戦車砲L7と同系の83式105mm戦車砲が用いられており、砲身には排煙機とサーマル・スリーブが装着されている。 使用弾種はAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)、APDS(装弾筒付徹甲弾)、HEAT(対戦車榴弾)等で、恐らく国産化されたものと思われるが輸入された弾薬もあるようである。 主砲の左側には旧ソ連製の7.62mm機関銃SGMTを国産化した59式7.62mm機関銃が同軸装備されており、装填手用キューポラには対空用として、旧ソ連製の12.7mm重機関銃DShKMを国産化した54式12.7mm重機関銃が装備されている。 79式戦車のFCS(射撃統制システム)は、69-II式戦車で導入された「TSFCS」(Tank Simplified Fire Control System:戦車用簡易型射撃統制システム)の改良発展型であると推測されており、砲手用の赤外線暗視装置が大型化されている。 エンジンは69式戦車と同じく、出力580hpの12150L-7BW V型12気筒液冷ディーゼル・エンジンが用いられているとされているが、車体後部の形状が微妙に異なることから、ボアアップ等の改良を施して出力増加を図ったものに換装されている可能性もある。 車体の左右側面には5つに分割されたゴム製のサイドスカートが装着されているが、これは69-II式戦車から踏襲されたものである。 サスペンションは片側5個の大直径転輪をトーションバーによって独立懸架した方式で、転輪にはゴムタイアが取り付けられ軽量化のため肉抜き穴が設けられている。 履帯は当初、旧ソ連製MBTと同系の全鋼製シングルピン/シングルブロック型が用いられていたが、生産中にドイツのディール社製のものに酷似した、取り外しが可能なゴムパッド付きのダブルピン/ダブルブロック型履帯が導入され、これは以後に開発された中国製MBTにも踏襲されている。 右側のフェンダー最後部には車外電話、車体後部には円筒形の増加燃料タンクが装備されており、与圧式NBC防護装置も標準装備となっている。 これらの改良の結果、79式戦車の戦闘重量は69-II式戦車の36.7tから37.5tに増加しているが、機動性能はほとんど変わらず420kmの路上航続距離と、50km/hの路上最大速度を維持しているという。 |
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<79式戦車> 全長: 9.235m 車体長: 6.04m 全幅: 3.27m 全高: 2.218m 全備重量: 37.5t 乗員: 4名 エンジン: 12150L-7BW 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル 最大出力: 580hp/2,000rpm 最大速度: 50km/h 航続距離: 430km 武装: 83式51口径105mmライフル砲×1 (44発) 54式12.7mm重機関銃×1 (500発) 59式7.62mm機関銃×1 (3,000発) 装甲厚: |
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<参考文献> ・「パンツァー2001年3月号 近代化の歩みを進める最近の中国戦車」 宇垣大成 著 アルゴノート社 ・「世界AFV年鑑 2005〜2006」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2003年4月号 ソ連戦車T-54/55 (2)」 古是三春 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2004年6月号 中国戦車開発史(1)」 古是三春 著 ガリレオ出版 ・「世界の戦車(2) 第2次世界大戦後〜現代編」 デルタ出版 |
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