77式水陸両用兵員輸送車 |
●開発 77式水陸両用兵員輸送車は、中国が旧ソ連製の装軌式APCであるBTR-50装甲兵員輸送車を参考に、独自の改良を加えて開発した水陸両用の装軌式APCである。 本車は中国海軍陸戦隊が運用する63式水陸両用軽戦車に追随できる水陸両用APCとして、「WZ-511」の名称で1965年4月からNORINCO(中国北方工業公司)の手で開発が開始され、1970年代半ばより生産が開始された。 1977年11月には、「77-I式水陸装甲輸送車」として制式化されている。 77式水陸両用兵員輸送車の存在が西側によって初めて確認されたのが1974年だったため、アメリカ軍は本車に「M1974」の識別名称を与えていた。 本車の原型となったBTR-50装甲兵員輸送車は、旧ソ連がPT-76水陸両用軽戦車の車体をベースに開発した水陸両用の装軌式APCで、ソ連軍が多用していた装輪式のBTR-40、BTR-152装甲兵員輸送車に比べて不整地での機動力に優れ、MBTに随伴できる能力を備えていた。 しかしその反面、BTR-50装甲兵員輸送車は原型のPT-76水陸両用軽戦車と同じく機関室を車体後部に配置していたため、車体後部に兵員の乗降用ドアを設けることができず、背の高い舟型車体の側面をよじ登って車体上面のハッチから乗降を行わなければならない点が将兵たちに非常に不評であった。 このため1960年代に入ってBMP-1歩兵戦闘車が就役すると、ソ連本国ではBTR-50装甲兵員輸送車は早々に退役させられ、東欧諸国や中東などの友好国に供与された。 当時ソ連との関係が悪化していた中国が、ソ連からBTR-50装甲兵員輸送車の供与を受けられるとは思えないので、おそらく友好国に供与された車両を極秘に入手して77式水陸両用兵員輸送車の開発ベースとしたものと推測される。 1978年には77-I式水陸両用兵員輸送車の兵員輸送能力を向上させた改良型の開発がスタートし、1980年に「77-II式水陸装甲輸送車」として制式化された。 77式水陸両用兵員輸送車シリーズは、中国海軍陸戦隊や陸軍の水陸両用部隊向けに合計で300両前後が生産されたといわれており、兵員の輸送や各種野砲の牽引車両として多用されている。 また本車はその汎用性の高さから、地対空ミサイルの自走発射機や地対艦ミサイルの運搬車にも転用されており、122mm自走榴弾砲のベース車体としても用いられている。 |
●構造 77式水陸両用兵員輸送車シリーズの最初の生産型である77-I式水陸両用兵員輸送車は、基本的に旧ソ連製のBTR-50装甲兵員輸送車のコピー生産型といって良いものであり、基本的な車体構造はほぼ同様である。 ただし、BTR-50が旧ソ連製のPT-76水陸両用軽戦車(中国名:60式水陸両用軽戦車)の車体をベースに開発されたのに対して、77-I式はPT-76を中国が独自に改良した63式水陸両用軽戦車をベースに開発されたため、細部には異なる点も多い。 77-I式の車体は圧延防弾鋼板の溶接構造で、全周に渡って7.62mm弾の直撃や至近距離で炸裂した榴弾の破片に耐えられる程度の防御力を備えている。 本車は原型となった63式と同じく浮航性を備えているが、NBC防護システムは未装備である。 車内レイアウトは車体前部が操縦室、車体中央部が20名の兵員を収容する兵員室、車体後部が機関室となっており、BTR-50と同じく車体後部に兵員の乗降用ドアを設けることができないという欠点を受け継いでいる。 このため兵員は車体側面をよじ登って兵員室上面に設けられているハッチから出入りしなければならず、迅速な乗降を行うことはできない。 77-I式の足周りはトーションバー(捩り棒)式サスペンションで懸架された片側6個の大直径転輪で構成されており、上部支持輪は備えていない。 エンジンが車体後部にあるため、起動輪を後方に配置したリアドライブ方式を採用している。 77-I式のエンジンは、BTR-50よりも高出力の12150L-2 V型12気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力400hp)を搭載しているが、77-I式は重量がBTR-50より4t以上重いため、路上最大速度36km/hと陸上での機動力は大きく低下している。 ただし、77-I式は水上での航行速度は12km/hとBTR-50を上回っている。 水上航行時には車体前部の波切り板を立てて車内の排水ポンプを作動させることで、車体後部左右に装備されたウォーター・ジェットで推進するようになっている。 77-I式の固有武装は、車長用キューポラに装備された54式12.7mm重機関銃(旧ソ連製の12.7mm重機関銃DShKMの国産型)1挺で、弾薬は500発が搭載される。 また兵員室の左右側面にはそれぞれ2基ずつガンポートと視察窓が設けられており、搭乗兵員が車外に向けて射撃を行うことが可能になっている。 1980年に登場した改良型の77-II式水陸両用兵員輸送車では、搭乗兵員の居住性を改善するために兵員室の天井が若干嵩上げされ、77-I式に装備されていたウィンチや車体後部の牽引用フックが撤去された。 また車体右側面のガンポートと視察窓は廃止され、代わりに兵員や負傷者を搬入するための大型ドアが設けられた。 このドアのおかげで兵員は迅速な乗降が可能になり、敵の射撃を受ける危険性も減少した。 固有武装は車長用キューポラの54式12.7mm重機関銃に加えて、兵員室上面左側に分隊支援火器を装備可能な旋回式キューポラが設置されている。 |
<77-I式水陸両用兵員輸送車> 全長: 7.15m 全幅: 2.16m 全高: 3.20m 全備重量: 18.8t 乗員: 2名 兵員: 20名 エンジン: 12150L-2 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル 最大出力: 400hp/2,000rpm 最大速度: 36km/h(浮航 12km/h) 航続距離: 370km 武装: 54式12.7mm重機関銃×1 (500発) 装甲厚: |
<参考文献> ・「世界の戦車パーフェクトBOOK」 コスミック出版 ・「世界のAFV 2011〜2012」 アルゴノート社 ・「戦闘車輌大百科」 アルゴノート社 ・「世界の装軌装甲車カタログ」 三修社 |