38cm突撃臼砲シュトゥルムティーガー
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+概要
ティーガーI重戦車をベースとする唯一の自走砲がこのシュトゥルムティーガーであり、奇抜なアイデア揃いのドイツ軍AFVの中でも38cmロケット砲を装備するという、他に例を見ないユニークな車両として知られている。
本車の開発のきっかけは沿岸に近付いてくる敵の艦艇を攻撃するために、デュッセルドルフのラインメタル・ボルジヒ社の手によって開発が進められていたロケット推進の38cm臼砲「ゲレート562」(562兵器機材)の自走化を、ドイツ海軍が要求したことに始まる。
この海軍の要求に目を付けた陸軍は自らの管理下にこの砲を置き、1943年初めに、当時苦戦していたスターリングラード戦への投入を図って、ティーガーI重戦車の車台に搭載する自走砲案をアドルフ・ヒトラー総統に提出した。
ただでさえも生産数の少ないティーガーI重戦車がベース車台として選ばれたのは、この砲を搭載可能な戦車車台が他に無かったからに過ぎない。
この案を検討したヒトラーは、1943年8月5日に「臼砲装備突撃戦車606/4」として承認し、月産10両の生産を命じたがこれには、当時機甲兵総監の座にあったハインツ・グデーリアン将軍が真っ向から反対の意を表した。
貴重なティーガーI重戦車を、このような海のものとも山のものともつかない自走砲に改造するのは、機甲戦力の減少にしか過ぎないという正論であり、これにはヒトラーも同意し、ひとまず試作車1両を製作することとした。
シュトゥルムティーガーの試作は、ベルリンのアルケット社(Altmärkische Kettenwerke:アルトマルク履帯製作所)の手で行われ、前線から引き上げてきたティーガーI重戦車の初期生産車を用いて改造作業が行われた。
改造要領は、車体上部の装甲板を外し操縦室の前面も途中から切断して、この上にブランデンブルク製鋼所で製造された完全密閉式戦闘室を搭載した。
完成した試作車は1943年10月20日に他の新型車両と共に、アライス練兵場でヒトラーに展示された。
ヒトラーは、直ちにシュトゥルムティーガーの生産を行いたかったようだが、グデーリアンの手前それもできず、1944年4月に、前線から引き上げてきたティーガーI重戦車12両を用いて改造するという形で、ようやく生産が行われることになった。
シュトゥルムティーガーの生産型第1号車は、アルケット社のシュパンダウ工場で1944年9月15日に完成し、その後は1日1両ずつのペースで9月21日までに7両が引き渡された。
生産は1944年12月まで続けられ、合計で18両が完成している。
シュトゥルムティーガーの生産型は基本的には試作車と同一だったが、戦闘室は前面150mm、側/後面80mm、上面40mmと強固な装甲板が用いられ、戦闘重量は65tに達した。
この重量増加への対処として、ティーガーI重戦車の後期生産車から改造された車両を除き、大半は鋼製転輪に換装されていたが、従来のゴム縁付き転輪を備えた車両もあった。
主砲の5.4口径38cmロケット砲StuM RW61は、弾頭重量345kgのロケット推進高性能榴弾4581(R-Spr.Gr.4581)を6km先へ飛ばす能力があった。
ロケット弾の弾底には14度傾いた32個のベンチュリー・ホールがあり、ロケットの噴射で弾体に回転を与えるようになっていた。
噴炎は、砲身先端の31個の穴から車外へ排出された。
戦闘室後部右側には人力で動かす簡易クレーンが装備されており、これを用いて38cmロケット弾を車内に搭載した。
シュトゥルムティーガーの車内には、14発の38cmロケット弾が搭載された。
戦闘室前面右側には副武装として、オベルンドルフ・アム・ネッカーのマウザー製作所製の7.92mm機関銃MG34がボールマウント式に装備されており、弾薬搭載数は3,920発となっていた。
シュトゥルムティーガーは1944年晩夏に、ポーランドの首都ワルシャワでの作戦で初めて実戦に投入され、1945年2月の時点で計16両のシュトゥルムティーガーが配備されていた。
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<38cm突撃臼砲シュトゥルムティーガー>
全長: 6.28m
全幅: 3.57m
全高: 2.85m
全備重量: 65.0t
乗員: 5名
エンジン: マイバッハHL230P45 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 700hp/3,000rpm
最大速度: 40km/h
航続距離: 120km
武装: 5.4口径38cmロケット砲StuM RW61×1 (14発)
7.92mm機関銃MG34×1 (3,920発)
装甲厚: 25~150mm
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兵器諸元
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<参考文献>
・「グランドパワー2001年9月号 38cm61式ロケット弾発射機搭載突撃臼砲
シュトルムティーガー」 箙浩一 著
デルタ出版
・「世界の軍用車輌(1) 装軌式自走砲:1917~1945」 デルタ出版 ・「グランドパワー2018年10月号 重戦車ティーガー(7)」 寺田光男 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2004年8月号 ドイツ軍ロケット兵器」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2004年7月号 シュトルムティーガー図面集(1)」 ガリレオ出版
・「グランドパワー2004年8月号 シュトルムティーガー図面集(2)」 ガリレオ出版
・「パンツァー2016年8月号 市街戦車輌 ブルムベア/シュツルムティーガー」 古是三春 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2018年7月号 戦車の内部撮影(シュトルムティーガー編)」 武宮三三 著 アルゴノート社
・「パンツァー2004年10月号 ドイツ突撃臼砲 シュトゥルムティーガー」 稲田美秋 著 アルゴノート社
・「パンツァー2015年1月号 第二次大戦時の直援用車輌列伝」 久米幸雄 著 アルゴノート社
・「ピクトリアル ティーガー戦車」 アルゴノート社
・「ジャーマン・タンクス」 ピーター・チェンバレン/ヒラリー・ドイル 共著 大日本絵画
・「ティーガー戦車」 W.J.シュピールベルガー 著 大日本絵画
・「戦車名鑑
1939~45」 コーエー
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