67式30型ロケット弾発射機

67式30型ロケット弾装填機

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+開発
陸上自衛隊の誘導弾に関する研究着手は意外に古く、1955年8月に防衛庁技術研究所(1958年5月に技術研究本部に改組)に、誘導弾の研究を行う特別調査室が設けられたことに端を発する。
1957年に入ると、富士精機の手により全長85cm、直径4.5インチ(114.3mm)、重量18.5kgのロケット弾が試作され、北富士演習場において実射試験を行う段階まで進んだが、結局アメリカからの無償供与を期待するということで、開発は中止されてしまった。
にも拘わらず、アメリカは日本への長射程ロケット弾供与に関しては難色を示したため、アメリカよりM31「オネスト・ジョン」(Honest John:馬鹿正直者を意味する英語のスラング)地対地ロケット・システムを購入するか、それとも国産開発を継続するかという検討が行われ、最終的に国産開発という方針が決定された。
これに従って1959年に直径50mm、220mmという2種類のロケット弾が試作され、1960年には直径を330mmと大型化することが決まり、併せてアメリカ軍を参考として部隊編制と運用に関する研究もスタートした。
1961年から技術試験が開始され、ロケット弾の自走発射機も1両が発注された。
ロケット弾と発射制御装置は日産自動車が、発射機と装填機は日本製鋼所がそれぞれ開発を担当して、その後も1965年まで6次に渡って試作が継続して行われ、1968年6月にロケット弾発射機が「67式30型ロケット弾発射機」、ロケット弾装填機が「67式30型ロケット弾装填機」として制式化された。
続く1968年10月には2種のロケット弾が、「68式30型ロケットりゅう弾」、「68式30型ロケット演習弾」として制式化された。
67式30型ロケット弾発射機は、まず1968年に富士教導団傘下の特科教導隊への配備が開始され、その後、北部方面隊直轄の第1特科団の第125、第126特科大隊に配備された。
最終的な生産数は、48両である。
第125特科大隊(東千歳駐屯地)は1969年3月25日に編制が完結し、第126特科大隊(美唄駐屯地)は1971年3月25日に編制が完結している。
67式30型ロケット弾発射機(通称:R-30)は、国土に侵攻してきた敵上陸部隊を内陸から攻撃することを目的とした装備であり、日本で第2次世界大戦後初めて実用化された大型ロケット弾であった。
制式化当時は陸上自衛隊の装備の中で最も長射程であり、かつ最も弾頭威力の大きい装備であった。
しかしR-30は、同年代に開発された他国の大型ロケット弾発射機に比べると射程、弾頭威力共に劣っており、連装2発の発射数は、無誘導ロケット弾の低い命中精度を発射弾数で補うには不足していた。
このため、陸上自衛隊はより多連装のロケット弾発射機を導入することになり、後の75式130mm自走多連装ロケット弾発射機(略称:75MSSR)の開発に繋がった。
また防衛庁は1960年代末から、沿岸に接近した敵の上陸・侵攻艦船の撃破を目的とした地対艦ミサイル・システムの研究も開始しており、これは後の88式地対艦誘導弾(略称:SSM-1)の開発に繋がっている。
第125特科大隊は1992年3月26日、第126特科大隊は1993年3月29日に廃止され、R-30は全車が退役した。
そして両大隊を母体として、SSM-1を運用する第1、第2地対艦ミサイル連隊が編制された。
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+構造
68式30型ロケット榴弾は全長4.56m、直径337mmで、前方から順に弾頭部、ロケットモーター部に分けられており、尾部には4枚の固定翼が装着され、弾体自体のスピンと併せて飛翔時の安定性を図っていた。
弾体のスピンは中央に収められたスピン用のモーターにより行われ、約600回転/分のスピンを行うことができた。
主ロケットモーターは2秒間燃焼することで、弾体の速度を790m/秒まで引き上げて最大射程28kmを実現した。
67式30型ロケット弾発射機は、日野自動車の手になるZC型4tトラックをベースとして、車台後部にレール式の連装発射機を搭載していた。
発射機は、油圧シリンダーにより俯仰と限定旋回が可能で、アメリカから供与された155mm榴弾砲M1で用いられたパノラマ式照準機を用いていた。
なおロケット弾の射撃時には、車台の左右と後部に備えられている計3基の油圧式アウトリガーを用いて車体を固定し、5度までの車体傾斜調節が可能となっていた。
一方67式30型ロケット弾装填機は、発射機と同じく日野製のZC型4tトラックが用いられ、予備のロケット弾6発を2発ずつ3段重ねに載せる架台と、発射機に装填するための油圧式クレーンを装備していた。
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<67式30型ロケット弾発射機>
全長: 8.24m
全幅: 2.44m
全高: 3.35m
全備重量: 12.0t
乗員: 4名
エンジン: 日野 ディーゼル
最大出力:
最大速度: 70km/h
航続距離:
武装: 68式30型ロケット榴弾連装発射機×1 (2発)
装甲厚:
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<68式30型ロケット榴弾>
全長: 4.50m
直径: 337mm
弾頭重量: 227kg
発射重量: 573kg
最大射程: 28km
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<参考文献>
・「パンツァー2004年7月号 陸上自衛隊の67式R30型ロケット」 高城正士 著 アルゴノート社
・「パンツァー2013年7月号 懐かしの自衛隊車輌」 前河原雄太 著 アルゴノート社
・「陸上自衛隊の戦闘車輌 1950〜2015」 アルゴノート社
・「陸上自衛隊の車輌60年」 アルゴノート社
・「陸自車輌50年史」 アルゴノート社
・「陸上自衛隊の装備車輌 Vol.1 ’60年代編」 ガリレオ出版
・「自衛隊装備完全図鑑」 矢作真弓 著 コスミック出版
・「自衛隊歴代最強兵器 BEST200」 成美堂出版
・「自衛隊装備名鑑 1954〜2006」 コーエー
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