タイプ6616装甲車は、1970年代初めにフィアット社とオート・メラーラ社が共同開発したタイプ6614装甲車の車体を再設計し、車体上面に全周旋回式砲塔を搭載した偵察・火力支援用の4×4型装輪式装甲車である。 タイプ6614装甲車は装甲兵員輸送車として開発されたため、車体前部に操縦手席と機関室を配し、車体後部は10名の兵員を収容する兵員室とされていたが、タイプ6616装甲車では戦闘任務に必要な広い視界を得るために機関室は車体後部に移されており、操縦手席の後ろの車体中央部は砲塔を搭載した戦闘室とされている。 戦闘室上面に搭載されている砲塔はオート・メラーラ社が開発した2名用のT90CKL砲塔で、砲塔内左側に車長、右側に砲手が位置する。 武装はタイプ6614装甲車では、車体上面中央部の車長用キューポラに12.7mm重機関銃M2を1挺装備しているだけだったが、タイプ6616装甲車では、T90CKL砲塔の防盾にドイツのラインメタル社製の100口径20mm機関砲MK20 Rh202と、7.62mm機関銃MG42/59を上下に同軸装備している。 砲の俯仰角は、−5〜+35度となっている。 またこの砲塔にはベルギーのコッカリル社製の36口径90mm低圧ライフル砲Mk.3や、106mm無反動砲などの火器を搭載することができる。 さらにオプションとして夜間暗視装置、エアコン、NBC防護装置、発煙弾発射機、最大牽引重量4,500kgのウィンチなどが用意されている。 足周りはタイプ6614装甲車と同系で、パワーパックはフィアット社製のモデル8062.24 直列6気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル・エンジン(出力160hp)と、手動変速機(前進5段/後進1段)の組み合わせとなっている。 サスペンションはコイル・スプリングによる4輪独立懸架方式で、タイアは14.50×20のランフラット・タイアを履いている。 この足周りによってタイプ6616装甲車は路上最大速度100km/h、路上航続距離700kmの機動性能を発揮する。 また本車はタイプ6614装甲車と同様に浮航能力を有しており、タイアの回転により水上を5km/hの速度で航行することができる。 タイプ6616装甲車は1972年に試作第1号車が完成し、試験の結果イタリア憲兵隊に50両が採用されることになった。 また本車はペルー、ソマリアなど数カ国に輸出されている。 |
<タイプ6616装甲車> 全長: 5.37m 全幅: 2.50m 全高: 2.035m 全備重量: 8.0t 乗員: 3名 エンジン: フィアット・モデル8062.24 直列6気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル 最大出力: 160hp/3,200rpm 最大速度: 100km/h(浮航 5km/h) 航続距離: 700km 武装: 100口径20mm機関砲MK20 Rh202×1 (400発) 7.62mm機関銃MG42/59×1 (1,000発) 装甲厚: 最大8mm |
<参考文献> ・「パンツァー2011年5月号 フィアットOTOメララ 6614/6616装甲車」 星野誠一 著 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」 デルタ出版 ・「新・世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 |