タイプ6614装甲車は、1970年代初めにフィアット社とオート・メラーラ社が共同開発した安価な4×4型の装輪式装甲車である。 本車の開発は車体部をフィアット社、武装をオート・メラーラ社が担当している。 車内レイアウトは車体前部左側に操縦手席、前部右側に機関室、車体後部が兵員室とオーソドックスな使い易いデザインとなっている。 操縦手席には5基の視察用ブロックが設けられており、良好な視界が与えられている。 車体は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、全周に渡って7.62mm機関銃弾と榴弾の破片に耐える程度の防御力を備えている。 避弾経始を考慮して装甲ボディは全て傾斜面で構成されており、特に車体前部は鋭く成型され、その後方の兵員室からは天井が一段高くされている。 これは、兵員や貨物の搭載スペースを充分確保するデザインといえよう。 本車は4×4型でありながら車内は意外と広く、操縦手の他、後部兵員室に10名の完全武装歩兵を収容することができる。 兵員室の左右側面には前開き式のドア、後面にはランプドア、兵員室上面には観音開き式の角型のハッチが設けられており、スムーズな兵員の乗降が可能である。 兵員室の左右側面にはドアの1カ所を含めてそれぞれ4カ所ずつ、また後面のランプドアを挟むように両側に各1カ所ずつ、計10カ所に視察用ブロックとガンポートが設けられている。 パワーパックはフィアット社製のモデル8062.24 直列6気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル・エンジン(出力160hp)と、手動変速機(前進5段/後進1段)の組み合わせで、サスペンションはコイル・スプリングによる4輪独立懸架方式である。 タイアは、14.50×20のランフラット・タイアを履いている。 この足周りにより、タイプ6614装甲車は路上最大速度100km/h、路上航続距離700kmの機動性能を発揮する。 また本車は浮航能力を備えており、タイアの回転により水上を4.5km/hの速度で航行することができる。 さらにオプションとして夜間暗視装置、エアコン、NBC防護装置、発煙弾発射機、最大牽引重量4,500kgのウィンチなどが用意されている。 タイプ6614装甲車の開発は1970年に開始され、1972年に試作車が完成しており合計で1,160両が生産された。 本車はイタリア陸軍と憲兵隊に採用された他ソマリア(270両)、チュニジア(110両)、ベネズエラ(24両)、ペルー(15両)、アルゼンチン(不明)に輸出された。 また韓国では「KM900」の名称でライセンス生産が行われ、200〜275両が韓国陸軍に配備されている。 タイプ6614装甲車の使用目的は警備、偵察、自走迫撃砲、指揮、輸送、救急など様々だが、基本型はAPC(装甲兵員輸送車)ヴァージョンである。 APCヴァージョンでは、車体上面中央部にM113装甲兵員輸送車と同型の車長用キューポラが搭載され、12.7mm重機関銃M2が1挺装備される。 |
<タイプ6614装甲車> 全長: 5.86m 全幅: 2.50m 全高: 1.78m 全備重量: 8.5t 乗員: 1名 兵員: 10名 エンジン: フィアット・モデル8062.24 直列6気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル 最大出力: 160hp/3,200rpm 最大速度: 100km/h(浮航 4.5km/h) 航続距離: 700km 武装: 12.7mm重機関銃M2×1 (1,000発) 装甲厚: 最大8mm |
<参考文献> ・「パンツァー2011年5月号 フィアットOTOメララ 6614/6616装甲車」 星野誠一 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2011年4月号 ジャスミン革命におけるチュニジア軍部隊」 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年10月号 イタリア軍AFVの40年」 アルゴノート社 ・「世界の軍用車輌(4) 装輪式装甲車輌:1904〜2000」 デルタ出版 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー ・「新・世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 ・「世界の装輪装甲車カタログ」 三修社 |