63A式水陸両用軽戦車 |
●63G式水陸両用軽戦車 |
中国軍は1960年代半ばから、63式水陸両用軽戦車およびその改良型を機甲部隊の偵察用戦車や海軍陸戦隊の主力装備として運用してきたが、主砲として装備している62式85mm戦車砲の威力不足が指摘されるようになったため、1990年代に入って当時の中国軍MBTの標準武装となっていた83式105mm戦車砲を63式水陸両用軽戦車に装備して火力強化を図る計画がスタートした。 83式105mm戦車砲はイスラエルの技術協力により、西側第2世代MBTの標準武装となっているイギリスの王立造兵廠製の105mm戦車砲L7を国産化したものであり、装甲貫徹力と低伸弾道性に優れる強力な戦車砲であった。 しかし83式105mm戦車砲は射撃時の反動が大きいため軽戦車にそのまま搭載するのは難しく、63式水陸両用軽戦車に搭載するにあたって駐退復座機に改良が施されると共に、砲身先端に多孔式の砲口制退機が装着されることになった。 105mm戦車砲搭載型の63式水陸両用軽戦車には「63G式」の名称が与えられ、NORINCO(中国北方工業公司)の手で3両の試作車が製作されて試験が実施された。 63G式水陸両用軽戦車は、63式水陸両用軽戦車の改良型である63-II式水陸両用軽戦車の車体を流用しており、63式水陸両用軽戦車の砲塔上面を嵩上げした改修型砲塔に多孔式砲口制退機を装着した105mm低反動戦車砲を搭載していた。 副武装も新型のものに変更されており、主砲と同軸に86式7.62mm機関銃(旧ソ連製の7.62mm機関銃PKTの国産型)を1挺、装填手用ハッチ前方に85式12.7mm重機関銃(旧ソ連製の12.7mm重機関銃NSVTの国産型)を1挺装備していた。 また水上航行時の水中抵抗を軽減するため、足周りを覆うサイドスカートが追加装備された。 このように63G式水陸両用軽戦車は原型の63式に比べて大幅な改修が施されていたが、良好な機動性能を維持するため戦闘重量は19tに抑えられていた。 しかし試験において63G式水陸両用軽戦車は中国軍の要求する性能を満たすことができなかったため、結局制式採用は見送られることとなった。 |
●63A式水陸両用軽戦車 |
それでも中国軍は63式水陸両用軽戦車の後継車両を必要としていたため、NORINCOは1995年から「WZ-213」の名称で新たな水陸両用軽戦車の開発に着手した。 WZ-213の開発は1998年初めに完了し、同年3月に「63A式両棲担克」として制式化された。 63A式水陸両用軽戦車は年間50両ほどのペースで生産が行われ、主に台湾海峡付近の海軍陸戦隊に配備されている。 本車は火力の強化のみならず、装甲防御力や水上での機動性能など全体的な能力の向上が求められたため、車体やエンジンが新設計のものに改められている。 63A式水陸両用軽戦車の車体は63式水陸両用軽戦車に比べて前後が延長され、水上航行の際の抵抗を減らすと同時に、前後の延長部分は成形炸薬弾対策の空間装甲の役割も果たしている。 またエンジン出力が63式水陸両用軽戦車の400hpから520hpに強化されたため、水上航行速度が15km/hに向上している。 ただし陸上走行時のエンジン出力は400hpのままで、重量の増加に伴って63A式水陸両用軽戦車の路上最大速度は63式の64km/hから55km/hに低下している。 63A式水陸両用軽戦車では砲塔も従来の半球形の鋳造製のものに代えて、圧延防弾鋼板の溶接製の新型砲塔が採用されており、砲塔内容積が拡大されたことで乗員の作業効率が向上している。 主砲は63G式水陸両用軽戦車と同じく、砲身先端に多孔式の砲口制退機を装着した105mm低反動戦車砲を装備しているが、FCS(射撃統制システム)が大幅に近代化されたため水上航行時の命中率が大きく向上している。 使用弾種は射距離2,000mで460〜500mmのRHA(均質圧延装甲板)を貫徹するAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)、最大射程4,000mのHE(榴弾)、HEAT(対戦車榴弾)、最大射程5,000m、装甲穿孔力550〜600mmのGP-2砲腔内発射式対戦車ミサイルが用意されている。 また砲塔の左右側面前部には、各4基ずつ発煙弾発射機が標準装備されるようになった。 このように63A式水陸両用軽戦車は63式水陸両用軽戦車に比べて大幅に性能が向上していたが、本車は開発期間を短縮するために旧式な63式水陸両用軽戦車の車体設計を流用しており、性能的に中国軍が要求するレベルに達しない部分があった。 このため中国軍は、湖南江麓機械集団が2000年から開発を進めていた水陸両用の新型装軌式IFV(後の05式水陸両用戦闘車)の車体をベースに、新たな水陸両用の突撃砲を開発することを計画した。 こうして誕生した05式水陸両用突撃砲は、63A式水陸両用軽戦車に比べて水上での機動性能が大幅に向上しており、中国軍は05式水陸両用突撃砲を陸軍の水陸両用機械化部隊および海軍陸戦隊の主力装備として採用する方針を決定した。 これに伴って、63A式水陸両用軽戦車は500両程度で生産が打ち切られている。 |
<63A式水陸両用軽戦車> 全長: 10.00m 全幅: 3.30m 全高: 3.15m 全備重量: 20.0t 乗員: 4名 エンジン: 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル 最大出力: 400hp(浮航 520hp) 最大速度: 55km/h(浮航 15km/h) 航続距離: 400km 武装: 105mm低反動ライフル砲×1 (41発) 85式12.7mm重機関銃×1 86式7.62mm機関銃×1 GP-2対戦車ミサイル 装甲厚: |
<参考文献> ・「パンツァー2014年6月号 各国の海兵隊(9) 中国陸戦隊」 荒木雅也 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2018年5月号 中国の2つの水陸両用戦闘車輌」 アルゴノート社 ・「パンツァー2001年4月号 海外ニュース」 アルゴノート社 ・「パンツァー2002年10月号 海外ニュース」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2004年7月号 中国戦車開発史(2)」 古是三春 著 ガリレオ出版 ・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」 ガリレオ出版 |