第2次世界大戦後ソ連の供与と技術援助により、中国はT-54中戦車のライセンス生産型である59式戦車を国産化したが、この際に得たノウハウを活かして中国が独自に開発した軽戦車がこの62式軽戦車である。 本車の開発目的はチベット等、高地・山岳地方への配備用であるといわれている。 全体的なレイアウトは59式戦車をスケールダウンしたような感じで、このため外観も59式戦車に酷似しているが、各部の装甲厚はかなり減じられているようで、車体の大きさも全長で50cm、全幅で30cmほど減っている。 このため重量も59式戦車より15t近く軽量化されており、外観とは裏腹にその内容は軽戦車そのものである。 62式軽戦車の主砲には、中国軍軽戦車の標準武装ともいえる62式85mm戦車砲を採用している。 弾薬にはAP(徹甲弾)、APHE(徹甲榴弾)、HE(榴弾)、HEAT(対戦車榴弾)が用意されており、戦闘室内には各種弾薬合わせて47発を収容する。 副武装としては主砲の同軸機関銃として59式7.62mm機関銃が、砲塔上の装填手用ハッチの対空機関銃架に54式12.7mm重機関銃が装備されているのも59式戦車と同様である。 主砲は−4〜+20度の俯仰角を有しており、排煙機が標準装備されている。 FCS(射撃統制システム)は単純な測距目盛入りの光学式照準機のみを備えているが、1980年代には一部の車両の防盾基部にレーザー測遠機が取り付けられた。 62式軽戦車のエンジンは59式戦車の12150Lディーゼル・エンジンをスケールダウンした、出力430hpの12150L-3 V型12気筒液冷ディーゼル・エンジンが用いられており、これに手動式の変速機(前進4段/後進1段)が組み合わされる。 足周りには常識的なトーションバー(捩り棒)式サスペンションが採用されており、転輪は片側5個だが59式戦車と同様に第1転輪と第2転輪の間が広く取られた配置となっているのが目立つ。 しかし59式戦車の転輪が2枚合わせとなっているのに対して、本車は軽量であるために1枚式とされており、履帯も幅380mmと狭いゴムパッド装着型が用いられている。 スノーケル装置を用いた潜水装備は未装備でNBC防護なども考慮されていないが、これは開発時期を考えれば当然であろう。 62式軽戦車の生産数は明らかにはされていないが、中国軍向けとして1,200両が生産されたといわれており、加えてヴェトナム(200両)、スーダン(70両)、ザイール(40両)、バングラデシュ(40両)、アルバニア(35両)、北朝鮮(不明)、タンザニア(30両)、マリ(18両)、コンゴ(10両)等の各国向けの車両が生産されており、今日も使用が続けられている模様である。 |
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<62式軽戦車> 全長: 7.90m 車体長: 5.55m 全幅: 2.86m 全高: 2.25m 全備重量: 21.0t 乗員: 4名 エンジン: 12150L-3 4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル 最大出力: 430hp/1,800rpm 最大速度: 60km/h 航続距離: 450km 武装: 62式54口径85mmライフル砲×1 (47発) 54式12.7mm重機関銃×1 (1,250発) 59式7.62mm機関銃×1 (1,750発) 装甲厚: 12.6〜50mm |
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<参考文献> ・「パンツァー2018年1月号 特集 知られざる中国戦車」 宮永忠将/三鷹聡 共著 アルゴノート社 ・「パンツァー2013年8月号 第二次大戦後の軽戦車の展望」 大竹勝美 著 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021〜2022」 アルゴノート社 ・「グランドパワー2004年7月号 中国戦車開発史(2)」 古是三春 著 ガリレオ出版 ・「世界の戦闘車輌 2006〜2007」 ガリレオ出版 ・「世界の戦車(2) 第2次世界大戦後〜現代編」 デルタ出版 ・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版 ・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」 洋泉社 ・「戦車名鑑 1946〜2002 現用編」 コーエー |
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