4K4FA装甲兵員輸送車 |
4K4FA-G1装甲兵員輸送車 4K4FA-G2歩兵戦闘車 |
●開発 オーストリア陸軍は第2次世界大戦後、アメリカから供与された半装軌式のM3ハーフトラックを主力APC(装甲兵員輸送車)として運用してきたが、M3ハーフトラックは装軌式車両に比べて不整地突破能力が劣っていたため戦車に随伴して行動するのが難しかった。 このためオーストリア政府は装軌式の新型APCを国内開発することを計画し、1956年に新型APCの要求仕様を発表した。 オーストリア政府が重視したのはAPCとして高コストを避け数を揃えることで、このため有事に他国からの援助が無いことを前提にして民生部品を大胆に採用し、製造コストを抑えることが求められた。 また車体の防御力は、前面装甲については重機関銃や小口径の機関砲程度に対する耐弾力を有し、併せて側面装甲も敵歩兵の機関銃程度の火力から乗員を防護可能な水準が求められた。 1957年にウィーンのオーストリア・ザウラー製作所は、オーストリア政府の要求に応えて新型APCの開発に着手した。 同社は主にトラック・バスの開発・生産を手掛ける車両メーカーであり装軌式車両の開発経験は無かったが、優れたディーゼル・エンジンの開発能力を持っていたため白羽の矢が立ったようである。 新型APCの試作型は数種類が開発され、まず1958年に3K3H装甲兵員輸送車が完成した。 時期的には各国が将来型APCの方向性を模索していた時期であり、半装軌式APCなどの生産も一部で続いていた時代であったため紆余曲折もあったようである。 3K3H装甲兵員輸送車はドイツのハノマーク社が旧ドイツ陸軍向けに開発し、第2次大戦中に合計15,000両以上が量産された半装軌式のSd.Kfz.251装甲兵員輸送車の設計と運用を基に完成された。 3K3H装甲兵員輸送車は乗車戦闘を容易とすべくオープントップ式の戦闘室を採用し、ザウラー製作所製の3H 直列6気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力200hp)を車体前部に搭載する装軌式APCとして設計された。 その基本コンセプトはSd.Kfz.251装甲兵員輸送車の装輪部分を廃止し、兵員室の一部を機関室に改め、車体前部を傾斜装甲により纏めたものといえた。 サスペンションはSd.Kfz.251装甲兵員輸送車と同じくトーションバー(捩り棒)方式が採用され、起動輪を前部、誘導輪を後部に配していた点も同様であった。 転輪は片側5個で、上部支持輪は備えていなかった。 続いて開発された4K3H装甲兵員輸送車は、3K3H装甲兵員輸送車をベースに試験中に判明した各種不具合の改良を図ったものである。 1959年に完成した4K3H装甲兵員輸送車の外観は装軌式APCとして非常に近代的なものであり、量産を前提にオーストリア陸軍による評価試験が行われている。 性能も車体前面は20mm機関砲弾への耐弾性能を有し、車体側面は傾斜した15mm厚の装甲板に守られているもので、オープントップ式戦闘室の上部にはピントルマウントを介して主武装の12.7mm重機関銃が1挺装備されていた。 ただ4K3H装甲兵員輸送車の評価試験を進めると、オープントップ式戦闘室は乗車戦闘と降車戦闘に有利だが防御力の面で問題があることが明らかになった。 このため戦闘室上部に装甲板を追加して密閉式戦闘室とすることが検討され、新たに4K2P装甲兵員輸送車が試作された。 4K2P装甲兵員輸送車は戦闘室を密閉式に改めただけでなく、機動力の改善を図るために出力を250hpに強化した2P 直列6気筒液冷ディーゼル・エンジンに換装され、片側2個の上部支持輪が追加されていた。 さらに4K2P装甲兵員輸送車をベースに、試験中に判明した各種不具合の改良を図ったものが4K4F装甲兵員輸送車である。 1961年に完成した4K4F装甲兵員輸送車は4K4FA装甲兵員輸送車シリーズの最初の生産型であり、オーストリア陸軍向けに30両が発注されて同年から生産が開始された。 4K4FA装甲兵員輸送車シリーズは、1961~69年にかけて各種派生型を含めて合計445両がオーストリア陸軍向けに生産されているが、その内訳は4K4Fが30両、4K3FAが211両、4K3FA-FSが38両、4K4FA-Fü/FIAが12両、4K4FA-Sanが15両、4K4FA-G2が76両、4K4FA-FüAが60両、4K3FA-Fülが3両となっている。 なお、初期生産型の4K4F装甲兵員輸送車は試作型の4K2P装甲兵員輸送車と同じく2P 直列6気筒液冷ディーゼル・エンジンを搭載していたが、このエンジンは信頼性に若干問題があることが判明したため、後期生産型である4K3FA装甲兵員輸送車は3FA 直列6気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力230hp)、4K4FA装甲兵員輸送車は4FA 直列6気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力250hp)に換装している。 |
●概要 4K4FA装甲兵員輸送車の車内レイアウトは車体前部右側が機関室、前部左側が操縦室、車体後部が8名の兵員を収容する兵員室となっており、操縦室内には前方に操縦手席、その後方に車長兼銃手席が配されていた。 操縦手の頭上には5角形の左右開き式のハッチと3基のペリスコープ、車長の頭上には12.7mm重機関銃搭載型の場合、4角形の左右開き式のハッチと1基のペリスコープを備えるキューポラがそれぞれ設けられており、20mm機関砲搭載型の場合は車長用キューポラの代わりに全周旋回式の1名用砲塔が搭載されていた。 兵員室内の左右には壁面に沿って4名用のベンチシートが各1基ずつ配置されており、兵員は4名ずつ向かい合って着席するようになっていた。 兵員室の上面には観音開き式の大型ハッチが設けられており、右側のハッチについてはその前部が個別の小ハッチとなっていたので、分隊指揮官が降車に先立ち外部の状況把握を行うことも可能となっていた。 4K4FA装甲兵員輸送車の車体は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、避弾経始を考慮して全周を傾斜装甲とすることで装甲防御力を強化していた。 搭乗兵員は通常、兵員室後面に設けられた観音開き式のドアから降車するが、兵員室上面の観音開き式ハッチから飛び出すことも可能で、上面ハッチ開放時には側面部分にハッチが張り出すため、車上からの射撃など乗車戦闘を展開する際に、車体側面の傾斜装甲に弾かれた敵の銃弾が上方に跳ねるのを防ぐ効果がある。 4K4FA装甲兵員輸送車の車体重量は11.0tで、戦闘重量は12.7mm重機関銃搭載型が12.5t、20mm機関砲搭載型が15.0tである。 車体サイズは全長5.40m、全幅2.50m、車体高1.65m、全高は12.7mm重機関銃搭載型が2.10m、20mm機関砲搭載型が2.221m、底面高0.42m、履帯長3.75m、履帯接地長2.90mとなっている。 4K4FA装甲兵員輸送車を他国の装軌式APCと比較すると、全長はアメリカのM113装甲兵員輸送車と比べて若干大きいのだが、反面車高が極限まで低く抑えられており小型で知られる日本の60式装甲車よりも低い。 4K4FA装甲兵員輸送車はこの低い車体に傾斜装甲が大胆に採用されていることと相まって、非常にコンパクトにまとめられた車両であるという印象を受ける。 |
●攻撃力 4K4FA装甲兵員輸送車は操縦室上面後方の車長用キューポラ前方にピントルマウントを設けて、主武装としてアメリカのブラウニング火器製作所製の12.7mm重機関銃M2を1挺標準装備している。 また一部の車両は12.7mm重機関銃の前面と左右側面を覆う防盾を備えており、このタイプは「4K4FA-G1」と呼ばれる。 なお12.7mm重機関銃は車内から遠隔操作することは考慮されておらず、車長兼銃手がキューポラ上面のハッチから身を乗り出して直接照準により射撃を行う。 一方、12.7mm重機関銃を装備する車長用キューポラに代えて、20mm機関砲を装備する1名用のGAD-AOA砲塔を搭載したIFV(歩兵戦闘車)タイプが4K4FA-G2歩兵戦闘車である。 GAD-AOA砲塔はスイスのエリコン社が開発したもので、主武装として砲塔前面に同社製の85口径20mm機関砲204GKを装備している。 砲塔は全周旋回が可能で、機関砲の俯仰角は-12~+70度となっている。 20mm機関砲204GKは全長2.975m、砲身長2.316m、本体重量61kg、砲身重量35kgとなっている。 この機関砲は20×128mm砲弾を発射し、弾種は弾薬重量322g、弾頭重量110gのAP(徹甲弾)と、弾薬重量337g、弾頭重量125gのHE(榴弾)の2種類が用意されている。 砲弾の発射速度は1,000発/分、砲口初速は1,200m/秒となっており、対地制圧射撃時に2,000m、対空射撃時に1,500mの有効射程を持つ。 機関砲の作動方式は射撃時の発射ガスを利用して射撃するガス圧作動式で、装甲貫徹力はAPを使用した場合射距離800mで傾斜角40度の15mm厚RHA(均質圧延装甲板)を貫徹でき、軽装甲車両に対しては充分な破壊力を有する。 HEを使用した場合の加害半径は2m程度あり、連続射撃により敵陣地を制圧することが可能である。 照準装置は等倍と6.5倍の照準機が搭載されており有効射程内での射撃精度を高めるが、6.5倍照準では視野角がわずか9度と狭いため、対空戦闘に際しては砲塔外部に装着される直接照準機により射撃を行う。 また砲安定化装置や電動式砲塔駆動装置は採用されておらず、精密照準の場合は停車射撃か走行間の制圧射撃に運用が限定されるものの、本車の開発時期を考えれば当然といえよう。 なお主武装の12.7mm重機関銃もしくは20mm機関砲以外に、4K4FA装甲兵員輸送車は後部兵員室上面にピントルマウントを設けて副武装の7.62mm機関銃を装備できるようになっている。 兵員室上面の観音開き式ハッチの周囲には前後左右にピントルマウントを取り付けるためのソケットが備えられているため、最大で4挺の7.62mm機関銃を装備することが可能である。 この7.62mm機関銃は当初、第2次大戦時にドイツのグロースフース社が開発した7.92mm機関銃MG42を基に、戦後に西ドイツのラインメタル社が7.62mmNATO弾用に改造したMG42/59が用いられた。 1974年以降はこの7.62mm機関銃MG42/59を基に、シュタイアー・マンリヒャー社とイタリアのピエトロ・ベレッタ火器製作所がオーストリア陸軍向けに共同開発した新型の7.62mm機関銃MG74に換装されている。 MG74は、MG42/59の後継としてラインメタル社が西ドイツ陸軍向けに開発した7.62mm機関銃MG3と基本構造がよく似ているが、MG3の発射速度が1,150発/分なのに対しMG74は850発/分に抑えているのが特徴である。 この7.62mm機関銃の射撃は、搭乗兵員が兵員室上に身を乗り出して直接操作する。 降車戦闘時の火力支援用ではあるが、同時に狭い兵員室へ機関銃を持ち込むよりも外装式とした方が車内容積を有効利用できるという配慮もあるのかも知れない。 搭乗兵員の乗車戦闘に際しては、兵員室上面の観音開き式ハッチを開放して7.62mm小銃や9mm短機関銃など携行火器の射撃を行う。 ただ4K4FA装甲兵員輸送車の車体サイズが小さいこともあり、乗車戦闘に際しては総員が射撃体勢を取ることは構造上窮屈で難しい。 |
●防御力 前述のように4K4FA装甲兵員輸送車の車体は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、避弾経始を考慮して車体全周を傾斜装甲とすることで装甲防御力を強化していた。 車体前面の装甲は前面上部が20mm厚(傾斜角60度)、前面下部が20mm厚(傾斜角45度)となっており、車体前面に限っては当時の偵察用装甲車や一部の装輪式車両に装備されていた20mmクラスの機関砲の射撃に抗堪することが可能であった。 一方車体側面の装甲は14mm厚の傾斜装甲で、車体後面の装甲厚は12mm、車体上面の装甲厚は8mmとなっていた。 これは今日的には充分とはいい難く、当時としても重装甲とはいい切れない装甲防御力であるが、4K4FA装甲兵員輸送車は山岳地帯での運用を考慮して車体サイズを小型に設計されていたため、重装甲を施すことが困難であったという事情がある。 なお前述のように車体側面は傾斜装甲を採用していたものの装甲厚が14mmと薄いため、避弾経始の効果による装甲防御力の向上はわずかであり、逆に傾斜装甲を採用したことで兵員室の内部容積の縮減という悪影響を及ぼしてしまった。 このため、4K4FA装甲兵員輸送車の改良型である4K7FA装甲兵員輸送車では車体側面の傾斜角が縮小され、機械化歩兵部隊の戦闘能力と搭載能力を重視した設計に転換されている。 また前述のように4K4FA装甲兵員輸送車は、車長用キューポラ前方のピントルマウントに主武装の12.7mm重機関銃を備えていたが、改良型の4K4FA-G1装甲兵員輸送車では車長兼銃手が安全に重機関銃の射撃を行えるよう、重機関銃の前面と左右側面を20mm厚の装甲板で構成された防盾で覆っていた。 一方4K4FA-G2歩兵戦闘車は、12.7mm重機関銃を装備する車長用キューポラの代わりに20mm機関砲を装備する1名用の全周旋回式砲塔を搭載していた。 この砲塔の装甲厚は前面が20~35mm、側面/後面/上面が15~20mmとなっており、車体よりも高い装甲防御力を備えていた。 4K4FA装甲兵員輸送車にはNBC防護装置は備えられておらず、また機関部への自動消火装置なども無く、後日搭載も行われていない。 ただし後日装備として1990年代より一部の車両に対し、車体を敵から隠蔽するための発煙弾発射機が追加装備されるようになった。 |
●機動力 4K4FA装甲兵員輸送車の操縦手は通常、頭上に設けられている操縦手用ハッチの前に3基備えられているペリスコープにより視界を得て車両の操縦を行うが、操縦手用ハッチを開放して直接視界で操縦することも可能になっている。 操縦手の座席は上下に昇降させることが可能になっており、ハッチ開放時には座席を高位置に固定することでハッチから頭を出して操縦できるようになっている。 4K4FA装甲兵員輸送車のエンジンは、オーストリア・ザウラー製作所製の4FA 4ストローク直列6気筒液冷ディーゼル・エンジン(出力250hp)が搭載されたが、派生型の中には別のエンジンを採用しているものも存在した。 一方変速・操向機は機械式で前進5段/後進1段の手動変速方式を採用しており、路上では1速11.3km/h、2速18km/h、3速28.3km/h、4速43.8km/h、5速65km/hへと加速する。 燃料搭載量は184リットルとなっており、路上での航続距離は370kmである。 4K4FA装甲兵員輸送車のサスペンションは一般的なトーションバー方式が採用されており、転輪は片側5個で上部支持輪は片側2個、起動輪は前部、誘導輪は後部に配置されていた。 5個の転輪のうち、最前部と最後部のものには油圧式のショック・アブソーバーが装着されていた。 履帯の接地圧は0.54kg/cm2となっていて、不整地を突破する上で必要な1kg/cm2よりも低く抑えられ、その分泥濘地での突破能力は大きかった。 渡渉能力は1m、超堤能力は0.8m、超壕能力は2.2m、登坂力は75%、転覆限界は50%となっていた。 なお4K4FA装甲兵員輸送車は水上浮航能力は有しておらず、また潜水渡河能力も想定されていなかった。 |
●派生型 ☆4K3F装甲兵員輸送車 4K3F装甲兵員輸送車は4K4FA装甲兵員輸送車の試作型であり、左右の前部フェンダー上に各2基ずつ設けられている前照灯の形状が生産型と異なっていた他、兵員室後面に設けられている観音開き式の乗降用ドアの付近が生産型に比べて狭くなっていた。 4K3F装甲兵員輸送車は数両が生産されており、車長用キューポラ前方に設けられている主武装の12.7mm重機関銃用のピントルマウントの形状が数種類確認できる。 4K3F装甲兵員輸送車の先行生産車の重機関銃マウントは車内からの手動操作を考慮した形状であったが、このため重機関銃の俯角を大きく取ることができず、生産型の4K4FA装甲兵員輸送車では改善されることとなった。 4K3F装甲兵員輸送車の後期生産車では12.7mm重機関銃に水平型防盾が左右に2枚追加され、加えて兵員室上面に副武装の7.62mm機関銃を装備できるようになった。 ☆4K3F-G2歩兵戦闘車 4K3F-G2歩兵戦闘車は4K3F装甲兵員輸送車のIFVヴァージョンであり、12.7mm重機関銃を装備する車長用キューポラの代わりに20mm機関砲を装備する円錐形の全周旋回式砲塔を搭載している。 ただし、4K4FA装甲兵員輸送車のIFVヴァージョンである4K4FA-G2歩兵戦闘車と比べると機関砲塔には差異が見られる。 ☆4K3F-San装甲救急車 4K3F-San装甲救急車は、4K3F装甲兵員輸送車の後部兵員室内に所要の救急装備を搭載した野戦救急車ヴァージョンである。 車体側面には赤十字が描かれており、機関銃などの武装は装備していない。 ☆4K3FA-BSPz装甲砲兵観測車 4K3FA-BSPz装甲砲兵観測車は砲兵観測火器管制要員向けの前進観測車両で、4K3F装甲兵員輸送車から主武装の12.7mm重機関銃を撤去し、車体中央部に若干高い箱型の観測席を配置している。 その中央には観測機材の設置区画が確保されており、前進着弾観測に用いられる。 ☆4K3FA装甲指揮車 4K3FA装甲指揮車は4K3F装甲兵員輸送車の指揮車ヴァージョンで、搭載無線機により数種類のサブタイプが存在する。 4K3FA-Fu-1旅団指揮車、4K3FA-Fu-2大隊指揮車、4K3FA-Fu-A1砲兵連隊指揮車、4K3FA-Fu-A2砲兵大隊指揮車などが開発されている。 ☆4K3FA-GrW1 81mm自走迫撃砲 4K3FA-GrW1自走迫撃砲は、4K3F装甲兵員輸送車の車内にアメリカ製の10.3口径81mm迫撃砲M29を搭載した火力支援車両で、射撃時の振動の影響もあり開発が完了したのは1969年である。 本車は後部兵員室内の前部に81mm迫撃砲を搭載しており、3名が操砲要員として砲側へ配置される。 81mm迫撃砲の可動範囲は俯仰角が+40~+85度、旋回角が左右各5度ずつとなっており、重量3.2kgのHEを180~3,490mの範囲で投射することが可能である。 着弾したHEは長径20m、短径15mの範囲内へ有効弾片を散布し、緊急速射時は35発/分、持続射撃時は18発/分の射撃が可能となっている。 ☆4K3FA-GrW2 120mm自走迫撃砲 4K3FA-GrW2自走迫撃砲は前述の4K3FA-GrW1自走迫撃砲と同じ要領で、4K3F装甲兵員輸送車の車内に120mm重迫撃砲を搭載する火力支援車両として計画されたものであるが、前述のように4K3F装甲兵員輸送車は生産型の4K4FA装甲兵員輸送車に比べて兵員室内の容積が狭かったため、120mm重迫撃砲の搭載は無理があったようで本車は計画のみに終わっている。 ☆4K4FA-BSPz装甲砲兵観測車 4K4FA-BSPz装甲砲兵観測車は基本的に前述の4K3FA-BSPz装甲砲兵観測車と同様の車両であり、ベース車体が4K3F装甲兵員輸送車から4K4FA装甲兵員輸送車に変更された以外には大きな変化は無い。 ☆4K4FA-San装甲救急車 4K4FA-San装甲救急車は、4K3F装甲兵員輸送車の車体に出力を25%向上させた4K4FA装甲兵員輸送車と同型のエンジンを搭載し、後部兵員室内に所要の救急装備を搭載した野戦救急車ヴァージョンである。 航空救難機と同等の救急救命設備が搭載されており、担架2床と着席可能な軽傷者4名を搬送可能である。 なお他国の装軌式APCの野戦救急車ヴァージョンでは、後部兵員室を嵩上げして内部容積を拡張している場合が多いが、本車は4K3F装甲兵員輸送車の車体をほぼそのまま流用している。 ☆81mm自走多連装ロケット・システム この車両は4K4FA装甲兵員輸送車の車体上部に9連装の81mmロケット弾発射機を搭載したもので、主として近距離の対地制圧に用いられる。 ロケット弾発射機の射角は仰角50度、俯角10度と発表されている。 ☆130mm自走多連装ロケット・システム この車両は、4K4FA装甲兵員輸送車の車体上部に32連装の130mmロケット弾発射機を搭載したものである。 オーストリア陸軍は1974年にチェコスロヴァキアからM-51 130mm自走多連装ロケット・システムを18両導入しているが、M-51はシュタイアー・ダイムラー・プフ社製の680M3 6×6トラックをベース車体として用いており、装軌式車両に比べて不整地突破能力が劣っていた。 このため、M-51に搭載されている32連装の130mmロケット弾発射機を装軌式車両に搭載した自走多連装ロケット・システムを開発することが計画され、そのベース車体として4K4FA装甲兵員輸送車が選ばれたわけであるが、結局本車は計画のみに終わったようである。 ちなみにM-51が使用する130mmロケット弾は全長8.0m、重量24.2kgの無翼ロケット弾であり、発射時初速410m/秒、最大射程8,200m、32発全弾の発射に要する時間は12.4秒となっている。 ☆A1/LWT対空ミサイル・システム A1/LWT対空ミサイル・システムは、4K4FA装甲兵員輸送車の車体上部にフランスのマトラ社(現MBDA社)製のミストラル対空ミサイルの発射機を搭載した防空車両である。 ミストラル対空ミサイルは軽量小型で短射程の撃ち放し式ミサイルで全長1.86m、直径90mm、発射重量18.7kg、弾頭重量3kg、最大飛翔速度マッハ2.5、最大有効射程6,000mとなっている。 本車はミサイル発射機と共に、複数のミサイルの運用と射撃に必要なPz1FALバッテリーを搭載している。 |
<4K4FA-G1装甲兵員輸送車> 全長: 5.40m 全幅: 2.50m 全高: 2.10m 全備重量: 12.5t 乗員: 2名 兵員: 8名 エンジン: ザウラー4FA 4ストローク直列6気筒液冷ディーゼル 最大出力: 250hp/2,400rpm 最大速度: 65km/h 航続距離: 370km 武装: 12.7mm重機関銃M2×1 7.62mm機関銃MG42/59またはMG74×1~4 装甲厚: 8~20mm |
<4K4FA-G2歩兵戦闘車> 全長: 5.40m 全幅: 2.50m 全高: 2.221m 全備重量: 15.0t 乗員: 2名 兵員: 8名 エンジン: ザウラー4FA 4ストローク直列6気筒液冷ディーゼル 最大出力: 250hp/2,400rpm 最大速度: 65km/h 航続距離: 370km 武装: 85口径20mm機関砲204GK×1 7.62mm機関銃MG42/59またはMG74×1~4 装甲厚: 8~20mm |
<参考文献> ・「パンツァー2013年6月号 オーストリアのザウラー装甲/戦闘兵車」 荒木雅也 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2009年5月号 オーストリア陸軍 SK105軽戦車」 前河原雄太 著 アルゴノート社 ・「パンツァー2010年6月号 ICV化されたAPC」 柘植優介 著 アルゴノート社 ・「ウォーマシン・レポート55 世界の戦闘車輌 2017」 アルゴノート社 ・「世界のAFV 2021~2022」 アルゴノート社 ・「戦闘車輌大百科」 アルゴノート社 ・「世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車輌:1918~2000」 デルタ出版 ・「世界の戦闘車輌 2006~2007」 ガリレオ出版 ・「世界の戦車メカニカル大図鑑」 上田信 著 大日本絵画 ・「世界の戦車パーフェクトBOOK」 コスミック出版 ・「戦車名鑑 1946~2002 現用編」 コーエー ・「世界の装軌装甲車カタログ」 三修社 |