IV号戦車H型
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+概要
IV号戦車H型は、IV号戦車の事実上の最終発展形である。
H型が登場する頃にはすでに新型主力戦車であるV号戦車「パンター」(Panther:豹)の生産が開始されており、IV号戦車は補助戦力となってしかるべきであった。
しかし戦線の拡大により戦車は常に不足しており、皮肉なことにH型はIV号戦車シリーズの中でも最大の生産数となることになった。
IV号戦車H型の生産は1943年4月から始まり、1944年7月までに3,774両が完成した。
H型は、G型の生産中に採り入れられた改良を初めから全て盛り込んで生産された型式といえる。
このため、主砲には初めからデュッセルドルフのラインメタル社製の48口径7.5cm戦車砲KwK40が搭載され、車体および戦闘室前面装甲板は80mm厚の1枚板となっていた(初期生産車の一部は基本装甲50mm+増加装甲30mm)。
それに伴い操縦手用視察口装甲クラッペが新型に変わり、クラッペの上に設けられていたペリスコープ用の開口部(2つの穴)も廃止されている。
車長用キューポラも装甲厚100mmの新型で、ハッチは片開き式の円形のものである。
車体側面および砲塔周囲を防護するシュルツェンも、最初から標準装備となっていた。
なおこのシュルツェンのうち車体のものは、IV号戦車G型ではシュルツェンに穴を開けてそれを車体側に設けられたフックに掛けるようになっていたが、H型ではシュルツェンに穴を開けるのを止めて、手摺り様のパイプを溶接してそれを車体側の三角形をした取り付け部に引っ掛けるように変わっている。
IV号戦車H型がG型と区別された最大の理由は、足周りの変更である。
まず変速機が、IV号戦車B型以降用いられていたZF社(Zahnradfabrik Friedrichshafen:フリードリヒスハーフェン歯車製作所)製のSSG76変速機から、新型のSSG77変速機(前進6段/後進1段)に変更されており、外形的にも変速機カバーの形状が変化している。
そして、起動輪がヒダ状のスポークの新型となっている。
他に各転輪のダンパーが新型となり、転輪のハブの形状も変更されている。
履帯も、表面にハの字型の滑り止めのモールドが施された新型となった。
また生産途中からの変化として、戦闘室右側面に2本のパイプ状のエアクリーナーが追加装備された。
そしてシュルツェンの装備で用を成さなくなった車体左右、砲塔左右ハッチの視察口および装甲クラッペ、砲塔後部左右のガンポートなどがまず溶接で固定されるようになり、後に完全に廃止されている。
また車長用キューポラには、副武装であるオベルンドルフ・アム・ネッカーのマウザー製作所製の7.92mm機関銃MG34を取り付けるための、パイプ状の対空機関銃架が取り付けられるようになった。
さらに後期の生産車では誘導輪が生産簡略のための鋳造製の新型となり、上部支持輪が資材節約のためゴム縁を廃止した全金属製のものになったりしている。
また車体後部下端に段が付いていたものが、これも生産簡略のため段無しになったりしている。
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+部隊配備
1942〜43年にかけての時期、ドイツ陸軍の主力戦車であったIII号戦車は性能的に完全に峠を越え、本来支援戦車であったIV号戦車が主力戦車の地位をバトンタッチされた。
次期主力戦車であるV号戦車パンターの生産は1943年1月から始められていたが、充分な数量が供給されるのはまだ先の話であった。
新しい編制では戦車連隊のうち第1大隊にパンター戦車、第2大隊にIV号戦車が配備されることになっていた(第3大隊が存在する場合は突撃砲装備)が、1943年7月5日の「城塞作戦」(Unternehmen Zitadelle)開始時点ではパンター戦車はごく一部に配属されただけで、長砲身型のIV号戦車が主力であった。
なお、この時点でもごく一部短砲身のIV号戦車も使用されていたが、やがて姿を消していくことになる。
これ以降の機甲師団の編制を見ると、パンター戦車とIV号戦車が70両前後バランス良く配備された師団もあるにはあるが、これはいわば例外のエリート師団の話で、ほとんどの師団は寄せ集めでまだIII号戦車を使っていたり、突撃砲を充当している部隊も見られるようになる。
イタリア戦線の編制を見るとパンター戦車の数量は少なく、IV号戦車は突撃砲と共に機甲戦力の主力の地位を占めていた。
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<IV号戦車H型>
全長: 7.02m
車体長: 5.89m
全幅: 2.88m
全高: 2.68m
全備重量: 25.0t
乗員: 5名
エンジン: マイバッハHL120TRM 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 300hp/3,000rpm
最大速度: 38km/h
航続距離: 210km
武装: 48口径7.5cm戦車砲KwK40×1 (87発)
7.92mm機関銃MG34×2 (3,150発)
装甲厚: 10〜80mm
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兵器諸元
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<参考文献>
・「パンツァー2006年12月号 ドイツ陸軍のワークホース IV号戦車の構造とバリエーション(2)」 久米幸雄 著
アルゴノート社
・「パンツァー2011年12月号 AFV比較論 IV号戦車H/J型 vs 巡航戦車コメット」 久米幸雄 著 アルゴノート
社
・「パンツァー1999年4月号 M4シャーマン76mm砲装備型 vs IV号戦車H/J型」 斎木伸生 著 アルゴノート社
・「グランドパワー2015年12月号 ドイツIV号戦車(4) H/J型」 寺田光男 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2010年8月号 ドイツ計画戦車」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」 ガリレオ出版
・「グランドパワー1999年6月号 IV号戦車の構造特徴と装備」 佐藤光一 著 デルタ出版
・「グランドパワー1999年6月号 IV号戦車
6年間の戦歴(2)」 後藤仁 著 デルタ出版
・「グランドパワー1999年5月号 IV号戦車の開発と各型」 佐藤光一 著 デルタ出版
・「グランドパワー2002年12月号 IV号戦車H/J型」 箙浩一 著 デルタ出版
・「戦車ものしり大百科 ドイツ戦車発達史」 斎木伸生 著 光人社
・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」 洋泉社
・「戦車名鑑
1939〜45」 コーエー
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