IV号戦車F2型は、1941年6月22日に開始されたソ連侵攻作戦（Unternehmen Barbarossa：バルバロッサ作戦）で出会ったT-34中戦車やKV-1重戦車といった強力なソ連軍戦車に対抗するため、当時ドイツ陸軍の新型対戦車砲として生産が開始されていたデュッセルドルフのラインメタル社製の46口径7.5cm対戦車砲PaK40をベースに開発された、同社製の43口径7.5cm戦車砲KwK40をIV号戦車F型に搭載したものである。

この決定は1941年11月18日に出されたもので、当初は次のIV号戦車G型からこの新型長砲身砲を導入する予定であったが、1942年4月4日にアドルフ・ヒトラー総統はできるだけ早くIV号戦車に長砲身砲を搭載することを命じた。
こうして直後の5月から、F2型への生産切り替えが図られたのである。

IV号戦車F2型は1942年3〜7月にかけて175両生産され、さらにF型から25両が改造されている。
急ぎ生産が切り替えられたことで、F2型は主砲以外ではF型とほとんど変わる所は無い。
主砲の射程と弾道特性が変わったことで照準装置に新型が採用されたことと、弾薬長が変わったために弾薬ラックが変更された程度で、これはどちらも外形的には変わりは無い。

なおIV号戦車F2型の主砲弾薬搭載数は、弾薬が大型化したにも関わらずF型の80発から87発に増えている。
外形的に目に付くF2型の変更点は、戦闘室側面左側に砲身が延長されたことで必要になったクリーニングロッドの延長パーツが取り付けられたのと、砲塔後部の雑具箱の左右中下端にアンテナ絶縁用の木片が取り付けられるようになったことがある。

砲身下部のアンテナ除けは取り付けられたままであったが、一部ではさらに前方に絶縁木片が延長して取り付けられている。
なお生産途中から防御力向上のため、砲塔左右側面の視察口と砲塔前面右側の視察口が廃止されている。
主砲の先端には威力の増した後座長を減らすために砲口制退機が取り付けられていたが、当初の単作動式からすぐにより効果の大きい二重作動式に変更されている。

F2型以降の長砲身型のIV号戦車は、ソ連南部の資源地帯奪取を目指した1942年6月28日の「青作戦」（Unternehmen Blau）開始時点では第3、9、11、12、14、16、22、23、24機甲師団などに配備されていた。
この時ドイツ陸軍が前線に展開させたIV号戦車シリーズは、短砲身型が209両に対して長砲身型が128両であった。

まだ短砲身型が多いが、この数は急速に逆転していく。
またIV号戦車長砲身型は北アフリカにも送られたがアフリカ軍団では最強の兵器であり、連合軍からは「Mk.4スペシャル」と呼ばれて恐れられた。