IV号戦車E型
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+概要
IV号戦車E型はD型に続く生産型であり、1940年9月〜1941年4月にかけて223両が生産された。
E型は車体デザインはD型とそれほど変わっていないが、防御力向上のため各部の装甲厚の増厚が図られている。
といっても完全な設計変更の時間は無かったため、車体前面が50mmに増厚された他は各部に増加装甲板が取り付けられたに留まっている。
各部の取り付け状況はD型と同様で戦闘室前面装甲板が30mm+30mm、戦闘室側面と車体側面の戦闘室部分が20mm+20mmである。
なおこれに合わせて戦闘室前面の操縦手用クラッペが、上下開きのスライド式ヴァイザーの30型操縦手用クラッペに変わっている。
細かい所であるが、車体前面上部左右のブレーキ点検用ハッチはこれまでは装甲板より若干持ち上がっていたものが面一となり、ヒンジが小型のもの2カ所からかなりゴツイ大型のもの1カ所に変更されている。
またIV号戦車D型でアフリカ向けに追加された機関室の追加ルーヴァーは、E型では標準装備となっている。
その他の変更点はまず砲塔で、それまでは後部に車長用キューポラ基部が張り出していたのが、基部部分も包み込む1枚板に変更されて内部容積が増している。
また車長用キューポラも、視察口の装甲カバーが個々に上下して開閉される新型に変わっている。
そして砲塔上面は、これまでキューポラ直前にあった換気のための細長いハッチが廃止されて、代わりに前より右側にヴェンチレイターが新設されている。
そして、キューポラ前左側の信号筒は廃止された。
砲塔後部の雑具箱も、全部の車両ではないようだが取り付けられるようになった。
足周りについては、IV号戦車D型の後期生産車と同様に起動輪が新型のより単純なデザインのものになり、履帯もそれまでの360mm幅のものから400mm幅の新型に変更され、各転輪のペアにダンパーが取り付けられるようになった。
また、転輪のハブの形状も変更されている。
装甲増加などによってE型の戦闘重量は21tに増えているが、逆に路上最大速度は42km/hに向上している。
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+部隊配備
1940年5〜6月のフランス侵攻作戦後、ドイツ陸軍は機甲師団の再編制と大拡大を行った。
しかし、当時のドイツは戦時経済というには程遠いのんびりとした軍需生産を行っており、それまでの編制ではとても員数を合わせることはできなかった。
このため機甲師団編制はいわば水増しされ、2個連隊編制から1個連隊編制に改められ、1個師団当たりのIV号戦車の保有数は減少している。
なお1941年2月の北アフリカへの派兵では第5軽機械化師団、第15機甲師団にそれぞれ20両のIV号戦車が配属されていた。
そして同年4月のバルカン侵攻作戦では、IV号戦車は参加全ての6個機甲師団に配備されて実戦投入されている。
この時の、IV号戦車の損失は8両であった。
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<IV号戦車E型>
全長: 5.92m
全幅: 2.84m
全高: 2.68m
全備重量: 21.0t
乗員: 5名
エンジン: マイバッハHL120TRM 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 300hp/3,000rpm
最大速度: 42km/h
航続距離: 200km
武装: 24口径7.5cm戦車砲KwK37×1 (80発)
7.92mm機関銃MG34×2 (2,700発)
装甲厚: 10〜50mm
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兵器諸元
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<参考文献>
・「パンツァー2006年11月号 ドイツ陸軍のワークホース IV号戦車の構造とバリエーション(1)」 久米幸雄 著
アルゴノート社
・「パンツァー2016年11月号 IV号短砲身戦車の運用コンセプト」 加賀屋太郎 著 アルゴノート社
・「グランドパワー1999年6月号 IV号戦車の構造特徴と装備」 佐藤光一 著 デルタ出版
・「グランドパワー1999年5月号 IV号戦車 6年間の戦歴(1)」 後藤仁 著 デルタ出版
・「グランドパワー1999年5月号 IV号戦車の開発と各型」 佐藤光一 著 デルタ出版
・「グランドパワー2015年8月号 ドイツIV号戦車(2) E/F型」 寺田光男 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2003年6月号 IV号戦車E/F型」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「世界の戦車(1) 第1次〜第2次世界大戦編」 ガリレオ出版
・「戦車ものしり大百科 ドイツ戦車発達史」 斎木伸生 著 光人社
・「徹底解剖!世界の最強戦闘車両」 洋泉社
・「戦車名鑑 1939〜45」 コーエー
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