III号戦車G型
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+概要
III号戦車G型は、当初から5cm砲の搭載を前提として生産された最初の型式である。
G型の生産は1940年4月に開始され、1941年2月までに600両が生産された。
とはいうものの実はG型の生産初期には5cm砲が間に合わず、3.7cm砲のまま生産された車両もあるとされる。
その数も不明だが、50〜100両といわれる。
なお3.7cm砲装備型も1940年8月以降、5cm砲搭載のための改修を受けている。
III号戦車G型の主砲以外の改良点としては、車長用キューポラが視察スリットが個々に開閉可能な新型となったことや、車体後面の装甲厚が他と同じく30mmになったこと、操縦手用ヴァイザーが装甲ブロックが回転して視察口を塞ぐ、より防御力の高い新型になったことなどがある。
その他、E型から設けられた機関室後部のクランク軸挿入口のカバーの形状が変化し、ヒンジが下から上に移ったなど細かい変更点もある。
またG型の生産中にドイツ軍が北アフリカに派遣されることになったため、灼熱のアフリカの砂漠で使用するための「Tp」(Tropisch:熱帯)型が開発され、アフリカに送られる車両はこのTp型として生産された。
Tp型ではエンジンの冷却効率を上げると共に、砂塵の侵入を防ぐために冷却ファンの強化、オイルクーラーの大型化、機関室上部のハッチに冷却口を設け装甲カバーが取り付けられる、エアフィルターの能力強化などの改良が施されている。
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+部隊配備
1940年5月10日のフランス侵攻作戦開始時までには、III号戦車の生産はE型からF型、G型へと移行しつつあった。
この時点でのIII号戦車の登録数は381両で、E型、F型に若干のG型が含まれていた。
ただしまだ全て3.7cm砲装備型で、5cm砲装備型は1両も無かった。
フランス戦で7個の機甲師団に配備されたIII号戦車は339両で、それぞれ戦車大隊内の2個軽戦車中隊にIII号戦車が割り当てられていた。
ただし、実際の充足数は師団によって異なっていた。
各師団への配属状況は、以下のようであった。
師団名 |
配備数 |
第1機甲師団 |
48 |
第2機甲師団 |
58 |
第3機甲師団 |
42 |
第4機甲師団 |
40 |
第5機甲師団 |
52 |
第9機甲師団 |
41 |
第10機甲師団 |
58 |
この時の戦闘によるIII号戦車の損失は、1940年5月の1カ月だけで110両に上った。
III号戦車は全般的に不足していたが生産ペースはそれほど上がらず、戦後の補充も部隊の充足状況を好転させなかった。
それどころか、1941年6月のソ連侵攻作戦(Unternehmen Barbarossa:バルバロッサ作戦)を前に機甲部隊の大拡大を行ったため、III号戦車の不足はますます深刻となった。
ただしこの時、機甲師団の編制が2個連隊編制から1個連隊編制に改められたため、1個師団当たりのIII号戦車の保有数は減少している。
なお1941年2月には北アフリカへの派兵に伴って、第5軽機械化師団、第15機甲師団に配属されたIII号戦車が地中海を渡っている。
そして同年4月のユーゴスラヴィア・ギリシャ侵攻では、III号戦車は5個機甲師団に配備されて実戦投入されている。
両戦線に送られたIII号戦車はいずれも3.7cm砲装備型と5cm砲装備型が混在していたが、すでに5cm砲装備型の数量の方が多くなっていた。
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<III号戦車G型>
全長: 5.41m
全幅: 2.95m
全高: 2.44m
全備重量: 20.3t
乗員: 5名
エンジン: マイバッハHL120TRM 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン
最大出力: 300hp/3,000rpm
最大速度: 40km/h
航続距離: 165km
武装: 42口径5cm戦車砲KwK×1 (99発)
7.92mm機関銃MG34×2 (2,700発)
装甲厚: 10〜30mm
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兵器諸元
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<参考文献>
・「パンツァー2016年10月号 近代戦車の先駆となったIII号戦車の先進性」 久米幸雄 著 アルゴノート社
・「ピクトリアル III号戦車シリーズ」 アルゴノート社
・「グランドパワー2001年5月号 ドイツIII号戦車(1) III号戦車の開発と構造」 嶋田魁 著 デルタ出版
・「グランドパワー2001年6月号 ドイツIII号戦車(2)
III号戦車の変遷」 嶋田魁 著 デルタ出版 ・「グランドパワー2019年3月号 ドイツIII号戦車(2)」 寺田光男 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー2010年1月号 ドイツIII号戦車(1)」 後藤仁 著 ガリレオ出版
・「世界の戦車(1)
第1次〜第2次世界大戦編」 ガリレオ出版
・「世界の戦車イラストレイテッド21 III号中戦車
1936〜1944」 ブライアン・ペレット 著 大日本絵画
・「世界の戦車
1915〜1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「ジャーマン・タンクス」 ピーター・チェンバレン/ヒラリー・ドイル 共著 大日本絵画
・「アハトゥンク・パンツァー第2集 III号戦車編」 大日本絵画
・「戦車ものしり大百科 ドイツ戦車発達史」 斎木伸生 著 光人社
・「戦車メカニズム図鑑」 上田信 著 グランプリ出版
・「戦車名鑑 1939〜45」 コーエー
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