III号突撃砲B型はA型に続く2番目の生産型であり、1940年6月からベルリンのアルケット社（Altmärkische Kettenwerke：アルトマルク履帯製作所）で生産が開始され、1941年5月までに250両が完成している。
1940年6月期の納入計画数は8両となっていたが、下請けメーカーにおけるシャシー製造の遅延により、アルケット社は納入目標を達成するためやむを得ず一時的に、III号戦車の標準シャシーを突撃砲の最終組み立てに流用することを決定し、オリジナルのIII号戦車シャシー8両が1940年6月に改修された。

III号戦車の基本装甲の厚さはこの時点でわずか30mmしかなく、20mm厚の補助装甲板を車体前面にボルト止めして補強した。
この8両の突撃砲は車体側面に設けられた非常用脱出ハッチ、車体上面前部にある点検用ハッチとステアリング・ブレーキ冷却用換気フードなど、III号戦車の特徴を随所に残していた。

また、操縦手用視察ヴァイザーの前方の跳弾ブロックは設けられておらず、履帯幅は360mmであった。
III号突撃砲B型から、シャシーについて基本的な変更が幾つか行われた。
エンジン型式は、A型に用いられたフリードリヒスハーフェンのマイバッハ発動機製作所製のHL120TR型から、量産モデルのHL120TRM型（スナッパーマグネット付きドライサンプ潤滑方式のエンジン）に変更され、カルダンシャフトは変速機と主操向機の間に接続された。

また、III号突撃砲A型に用いられたマイバッハ社製の「ヴァリオレクス」（Variorex）SRG328145変速機（前進10段/後進4段）は不具合が絶えないため、ZF社（Zahnradfabrik Friedrichshafen：フリードリヒスハーフェン歯車製作所）製のSSG77変速機（最大回転トルク77mkgの同期方式変速機、前進6段/後進1段）を搭載することとなった。

マイバッハ社製の主操向機（LA120HD型）はエンジンに直接フランジ止めされ、三重ディスククラッチ構造となっていた。
さらに戦闘室についてはこのB型より、砲手頭上の視察クラッペのレイアウトが変更となっている。
B型生産期間におけるその他の変更点は、次の通りである。

・履帯との接触衝撃を緩和して脱落を防止するため、第1上部支持輪の取り付け位置を起動輪へ接近させた。

・380mm幅の従来履帯に代わり、400mm幅の広い履帯（履帯型式Kgs 61/400/120）が採用された。
　このため、上部支持輪は片側3個となってリムのゴム部分も拡張され（寸法520×95-397）、これによりゴム部と
　履帯の走行接触面積が大きくなり、この分磨耗が少なくなった。
　また、新型と旧型の上部支持輪は互換性を有していた。

・新型鋳造起動輪が採用された。

・新型溶接構造の誘導輪が採用された。

・防火隔壁に、着脱可能な主操向機ボックスが設置された。

III号突撃砲B型は1941年4月のユーゴスラヴィア侵攻作戦に投入された後、同年6月のソ連侵攻作戦（Unternehmen Barbarossa：バルバロッサ作戦）にも参加している。