38(t)戦車S型
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+概要
スウェーデン陸軍は1939年末に、チェコ・プラハのBMM社(Böhmisch-Mährische Maschinenfabrik:ボヘミア・モラヴィア機械製作所、旧ČKD社)に38(t)戦車S型を90両発注したが、すでにドイツ陸軍向けの38(t)戦車の生産が行われていたためS型の生産は遅れ、その後1940年7月にこれらの車両はドイツ陸軍に引き渡されることとされてしまったので、スウェーデン陸軍に引き渡された38(t)戦車は存在しない。
S型の生産は1941年5~10月にかけて行われ、車体製造番号は1001~1090である。
38(t)戦車S型は基本的にはA/B型と同仕様だが、スウェーデン陸軍は武装を国産のものに換装するつもりで武装を発注していなかったため、1941年2月10日付でドイツ陸軍はチェコ・プルゼニのシュコダ製作所に対して新たに武装の装着を要求した。
しかしすでに38(t)戦車の生産が戦闘室、砲塔共に50mm厚装甲板を備えるE/F型に切り替わっていたため、武装もこの装甲厚専用の砲架が用いられており、そのままでは装備することは不可能であった。
このため、38(t)戦車S型の戦闘室と砲塔前面の装甲厚をE/F型と揃えることで武装を装備できるようにしたが、それ以外は発注当時のA/B型と同一とされた。
この結果S型は、戦闘室の前面は1枚板でありながら無線手の視察クラッペはA/B型と同じという、面白い現象を生むことになった。
なお型式名が飛んでいるのは、当然「スウェーデン」(Schweden)の頭文字の”S”を採っていることは言うまでもない。
38(t)戦車S型についてはドイツ軍としては扱いを持て余したらしく、自軍では使用せず保護国となっていた独立スロヴァキアに輸出された。
独立スロヴァキアでは自軍の快速師団に本車を装備し、1941~42年の南ロシア戦線で使用している。
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<38(t)戦車S型>
全長: 4.56m
全幅: 2.15m
全高: 2.26m
全備重量:
乗員: 4名
エンジン: プラガEPA 4ストローク直列6気筒液冷ガソリン
最大出力: 125hp/2,200rpm
最大速度: 42km/h
航続距離: 210km
武装: 47.8口径3.7cm戦車砲KwK38(t)×1 (90発)
7.92mm機関銃MG37(t)×2 (2,700発)
装甲厚: 8~50mm
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<参考文献>
・「パンツァー2014年4月号 誌上対決 38(t)戦車 vs M3軽戦車」 久米幸雄 著 アルゴノート社
・「ピクトリアル ドイツ軽戦車」 アルゴノート社
・「世界の戦車 1915~1945」 ピーター・チェンバレン/クリス・エリス 共著 大日本絵画
・「ジャーマン・タンクス」 ピーター・チェンバレン/ヒラリー・ドイル 共著 大日本絵画
・「グランドパワー2013年4月号 ドイツ軽戦車
38(t)」 後藤仁 著 ガリレオ出版 ・「グランドパワー2020年12月号 38(t)軽戦車」 寺田光男 著 ガリレオ出版
・「グランドパワー1999年9月号 ドイツ38(t)軽戦車」 佐藤光一 著 デルタ出版
・「戦車ものしり大百科 ドイツ戦車発達史」 齋木伸生 著 光人社
・「戦車名鑑 1939~45」 コーエー
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